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8.

 パーティーの前日、いつものようにマイケルと朝食をとった後、厩舎で愛馬「ブラックローズ」の世話をした。


 彼女は、ダリス王国軍が購入した元軍用馬である。彼女の体格や走りっぷりには問題ない。というか、牡馬より度胸があってよく走っていたらしい。

 

 しかし、彼女は気性がやさしすぎる。


 というわけで、彼女は軍馬としてはあまり向いていないというわけ。


 軍馬失格の烙印を押された彼女は、もうすこしで仲買人に売られるところだった。


 競走馬や農耕馬など、行く先はある。


 が、いずれにせよ過酷な人生を、というか馬生を送ることになる。


 タイミングがよかった。


 ちょうどその頃、わたしはサンドバーグ侯爵領内で移動をする際の馬を探していた。


 マイケルに頼んでいたのだ。


 元将軍で名騎手でもある彼は、日頃から馬に関心をよせている。そのときも、彼は軍関係者からブラックローズのことを聞き、即座に購入してくれた。


 モーリスから聞いたところだと、マイケルはブラックローズをひとめ見、「『ブラックローズ』などと、あいつにピッタリな名じゃないか」といったらしい。


 つまり、マイケルはわたしが「ブラック」だと言いたかったのだ。


(どうせわたしは腹黒くて心臓に毛が生えていて厚顔無恥よ)


 モーリスからそのことを聞いた瞬間、心の中で苦笑してしまった。


 しかし、意外にもマイケル自身がブラックローズを領地まで届けてくれたのは意外だった。


 そのことも驚いたけど、ブラックローズの美しさや聡明さに驚愕した。


 彼女に一目惚れ?


 いいえ。運命の出会いを感じた。


 なんなら、マイケルとの初対面より運命的なものを感じたといってもいい。


 なにせ彼とは、初対面から憎しみあい、いがみあいだったから。


 ブラックローズとの馴れ初めはともかく、厩舎には、当然厩務員がいる。サンドバーグ侯爵家の厩務員は、ランス・マッケンジー。


 彼は、マイケルがまだ将軍だった際彼の馬を担当していた元軍人である。


 そして、わたしの乗馬の師匠でもある。


 彼には乗馬だけでなく、さまざまなことを学んだ。


 わたしには、料理やスイーツ作り同様厩務員としての知識もある。将来、どこかの厩舎で働くのもいいかも。


 もっとも、どこまで役に立てるかはわからないけれど。


 今朝もランスとお喋りしながら作業に勤しんだ。


 彼は、いつも「アン。馬の世話は、奥様のやることじゃない」と言う。


 だけど体を動かすのは気持ちがいい。


 馬の世話だけではない。庭仕事だってやるようにしている。


 とはいえ、花よりも作物を育てることが中心だけど。

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