表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王国一の悪妻は、憎しみあう夫との離縁を心から願う~旦那様、さっさと愛する人と結ばれて下さい。私は私のやり方で幸せになりますので~  作者: ぽんた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/74

18.

 アンソニーとのお茶会から戻ると、マイケルが帰宅していた。


「アン、今日もきれいだよ」


 モーリスは、いつものように愛想がいい。


「モーリス、あなたも可愛らしいわ。唐突だけど、あなたは良い人はいないの?」


 モーリスは、可愛らしいしやさしいし頼り甲斐がある。良いレディがいてもおかしくない。


「この外見ではね。ほら、いつもマイケルと一緒にいるだろう? 世のレディたちには、このおれはよりいっそうチビのデブに見えるらしい」

「なんですって? それは、レディたちの見る目がなさすぎるのよ。男性の見た目が良いのは、あくまでも観賞用。パートナーは、やはり中身よ、中身」


 だれかさんみたいに、とは言えない。


 とはいえ、そのだれかさんもわたしに対してのみだけど。


 そのとき、バークレー公爵家の東屋でのマイケルとアンジェラの密会が脳裏に浮かんだ。


「アン、ありがとう。そう思ってくれるのは、きみだけだよ。おっと、マイケルが帰宅しだい執務室に来るように、とのことだ」

「わかった。すぐに行くわ」

「それから、キースが『明日、アンに予定がなければ時間が欲しい』と」

「キースが?」


 乗馬服のことに違いない。


「そちらも了解。モーリス、夕食を一緒にどう?」

「今夜は遠慮しておくよ」

「そう。残念ね。じゃあ、行きましょうか」


 マイケルの執務室へ向かいかけた。


「今日は、これで失礼するよ」

「なんですって?」


 心底驚いた。


 ということは、マイケルとふたりきりになってしまう。


「さぁ、行った行った」


 モーリスにお尻を叩かれ、マイケルの執務室へと追い立てられた。




「アンです」

「入れ」


 マイケルの執務室へ入ると、彼は執務机から顔を上げることなく書類を読み続けている。


「ご用でしょうか」


 マイケルは、わたしとふたりきりになること、それからわたしに時間を費やすことを嫌っている。


 さっさと用件を聞き、ここから出ていきたい。


(だけど、もうひとつの話したいことを話すチャンスよね)


 そう。王都に出てきたもうひとつの理由。


 長年話したくても話せなかったこた。


(ふたりきりのいまこそ、話すチャンス)


「いつ領地に帰る?」

「ここ数日のうちには。明日は、キースから乗馬服を受け取るつもりですので、できれば明後日にでも」

「ならば、明後日はあけておけ。話は終わりだ。出ていけ」


 一方的に言われてしまった。


 その間、マイケルは一度も顔を上げない。


 ここまできたら、徹底しすぎていて逆に爽快である。


 話そうにも話せる状況ではない。


「わかりました。失礼します」


  諦め、執務室をあとにした。


(明後日あけておけって、どういうことなのかしら?)


 執務室の扉を閉じ、それにもたれつつ考えてしまった。



 夕食は、マイケルと一緒にできる。


 気がついたら、いつもより張り切って料理を作っていた。


 が、食べるときはいつもと同じ。


 メイドが控える中、マイケルはかわらず美しい顔の眉間にシワをよせ、気難しい表情で食べている。


(いつもなら、この席にアンジェラ・オールブライト伯爵令嬢が座っているのよね。いえ。わたしだからこそ、これだけ距離を離しているけれど、彼女なら彼の左右どちらか前か、隣どうしの席にしているわね、きっと)


 そして、おたがいに微笑み合いながら食べるのだ。


(楽しい食事でしょうね)


 ますますはやく領地に帰った方がいいような気がしてくる。


 そんなことを考えながら、味気ない食事を終えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ