11.
バークレー公爵邸は、サンドバーグ侯爵邸よりもずっとずっと広くて大きい。
この夜のパーティーに集まっている人たちの多さに度肝を抜かされた。
上位貴族や著名人や大金持ちだけではない。下級貴族やちょっとした商人や役者や芸術家たちまで、ありとあらゆるジャンルの人たちが集っている。
パーティー開催が数日前に公表され、それでもこれだけの人々が集まっている。
マイケルの政敵であるアーノルド・バークレー公爵は、それほどまでに影響力があるということ。
というか、現国王をも操っているらしいから、相当なものである。
じつは、アーノルドにはこれまでに一度しか会っていない。というか、見たといったほうが適切かもしれない。
マイケルとふたりで王家に報告に行った際、アーノルドは当たり前のように国王の側に控えていたのだ。
当然、直接言葉を交わすことはなかった。
というか、アーノルドはわたしを一瞥さえしなかった。
政敵であるマイケルの妻だからというわけではない。
そもそも興味がなかったのだろう。
というわけで、これだけの人がいる以上、今夜もその姿を見ることができるかどうかもわからない。とくに今夜の主役は、彼の娘とその婚約者である第二王子なのだ。
とはいえ、わたしとしては会ってみたい。
会って探りを入れたい。
例のバークレー公爵領で行われている不正や不当な扱いについて。
正直、こんなパーティーには来たくはない。
それでも来たのは、マイケルの命令だからということもあるけれど、不正などについて証拠をおさえられるチャンスかも、と期待しているからである。
が、世の中はそんなに甘くはない。
今夜、ここに来ただけで「動かぬ証拠」なるものに巡りあえるわけはない。
それこそ、いま流行りの小説のストーリーのように都合のいいことなどあるわけはないのだから。
とはいえ、じつは「もしかしてあるかも」なんて期待していることはたしか。
あるわけはないと、頭ではわかってはいる。しかし、気持ちはそうはいかない。
ということで、ここにいるわけ。




