1.
「この結婚は、じつにバカバカしい。政略結婚ならまだあゆみよりもありかもしれん。しかし、おれたちは敵だ。憎しみ合う敵どうしだ。まっ、結局はおれもおまえも犠牲者にすぎん。運命に抗えぬ臆病者。そうとでも思わねば、やってられん。とにかく、おまえのことは憎しみの対象でしかない。いままでも、そしてこれからも。それは、おまえも同じだろう? おたがい、諦めるしかないのだ。とはいえ、もしかすると将来、離縁する機会が巡ってくるやもしれん。おたがい、それを期待しようではないか」
夫であるマイケルは、そう宣言した。
夫婦になって数日が経ち、わたしの前にふらりとあらわれたときに、である。
彼は、婚儀さえすっぽかした。
自分の婚儀なのに、現れなかった。
わたしは、ひとり恥をかかされた。
いくら意に添わぬ婚儀とはいえ、マイケルは体裁さえ繕う気さえない。
しかし、いっそ清々しい。
それが、わたしたちふたりの真実なのだから。
せいせいした。
彼がその気なら、わたしもその気になる。
そう宣言するのなら、それに従うべき。
彼がそう言うのなら、わたしは従おう。
わたしたちの憎しみしかない結婚生活が始まった。