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ショートショート10月〜5回目

カキフライ弁当

作者: たかさば

「お疲れさまでした!これ、お弁当の余りなんですけど、よかったら!」


 手渡されたのは、やや大きめのプラ容器の弁当。

 透明なふたの下には…梅干しの乗った白いご飯、揚げ物が五つ、キャベツの千切りに卵焼き、かまぼこ、ポテトサラダ、ひじき。普通に買ったら5~600円くらいしそうな、豪華な弁当である。


「ありがとうございますー!」


 この時期、私は毎年、地域の恒例イベントの手伝いをしている。

 朝から昼まで受付と放送の補助をし、出された弁当を食べ、午後二時くらいに片づけをして解散…というのがいつもの流れだ。手伝いもかれこれ五年目…はじめは焦るような事も多かったが、今ではすっかりハプニングにも慣れて、落ち着いたものである。


 …初めて手伝った時は、緊張しすぎて弁当なんて食べる余裕がなかったというのに。

 今では、いの一番に食べ終わり、余った分まで大喜びでもらっていくというありさまだ。人というものは成長するものなのだなあと…しみじみ思ってみたりしないでもない。


 このイベントは毎回、参加者と運営スタッフに弁当が出る。

 参加者に配られるのはごく普通の助六寿司なのだが、運営スタッフにはやたら豪勢な弁当が出るのが慣例となっている。理由はよくわからないが、おそらく…無償で働いてくれているボランティアスタッフへの労いのひとつと思われる。


「あ、よかったらもう一つどうです?三つでもいいですよ、めちゃめちゃ余っちゃってて…捨てるのももったいないので!」


 豪勢な弁当ではあるが、受け取る側にはあまり人気がない。年配のボランティアが多いという事もあり、食べ切れないという理由で参加者向けの助六を選ぶ人が多いうえに、好みの分かれがちな牡蠣フライが三つも入っているため…敬遠する人が少なくないのである。

 毎年かなりの数が余ってしまうというのに、今年も例年通り、ほぼ同じ内容の弁当が出た。主催の人が牡蠣フライ好きなのか、弁当屋で余剰になっている在庫を一掃するためなのかはわからない。


「いいんですか?もらっちゃいますよ?」


 昨年、大量に余った弁当をすべて希望者に配布し、1つも廃棄が出なかったからこそ…今年も大量に余っている現実があるのだと、思う。

 下手にもらってしまう事で、来年も無駄な経費が生まれてしまうのではないかと…懸念するのだが。


「どうぞ、どうぞ!!あ、お茶も持ってってくださいね!来年もまたよろしく!!」


 四つも弁当を渡されて、晩ごはんが浮いたと思う自分がここにいるのもまた、事実。

 ……そうだなあ、私は主催者ではないのだ。余計な事を気にすることも…あるまい。


 牡蠣フライは卵とじにしよう、これなら息子も食べられるはず。白身フライとエビフライはグリルで軽く焙ってタルタルソースをトッピングすればいいよね、ゆで卵多めで作れば娘が喜んで食べるに違いない。ご飯はひじきと刻んだかまぼこを混ぜ込んでチャーハンにするかな。ポテトサラダとキャベツはキュウリとかにかまを混ぜてサニーレタスで巻いて食べるか、それともポタージュスープにするか…。


 両手に大荷物を抱えた私は…、ホクホクしながら家路についたのだった。



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