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煙を何とかしろ!

「揺れるな~」


 板バネしか有しない客車。食堂車ということで、他の客車よりも揺れ対策を特に行う様に設計させたけど、やはり現状の技術ではこれが限界らしい。


 コイルばねや空気ばね、さらには油圧を組み合わせたシステムを知っているだけに、どうにも揺れを強く意識してしまう。


 しかし、となりで飲み物に口を付けているアイリは別の意見をお持ちのようだ。


「そうでしょうか?馬車よりは遥かに乗り心地がいいと思いますよ」


 馬車しか知らない彼女からすると、充分これでも快適らしい。


 まあ、今回は建設中の路線の視察列車と言うことで、速度を遅めにしているというのも大きいけど。


 それでも、飲み物は零れないように器のかなり低い位置までしか注いでいないし、食べ物が載った皿も下に網目状のクロスを敷いて、滑らないように工夫していた。


 うちの従業員たちも、それなりにがんばってくれている。


「それよりも、時々入って来るこの煙の方が問題ですよ」


 アイリがケホケホとした。


 この列車は機関車と食堂車の2両編成。なので、機関車があげる煙が風向きにもよるけど、かなり車内に入って来る。


「う~ん。防煙器はトンネルの区間だけで使うつもりだったけど、確かにこれは一考の余地があるな」


 蒸気機関車の煙突から出る煤煙、さらには火の粉は最大の難点だ。


 日本の鉄道の幹線駅にも、昔は乗客が煤煙で汚れた顔を洗う洗面台がホームにあったくらいだし。それに火の粉は、時として沿線火災も引き起こす。


 今のところ、大きな事故は起きてないみたいだけど、これは多少高くても防煙器を全機関車に取りつけるべきかな?


 防煙器は、この剣と魔法世界様々装備の一つ。元々は軍隊が野営する際に、火と煙を敵に発見されないように、石に魔力を込めて煙を吸収するようにしたもの。


 これを改良して、煙突の筒先に設置して煙を吸収して外に吐き出さないようにしたのが、防煙器。最初はトンネルの通過時だけ、手前の駅で取り付けて、通過後の駅で取り外し予定だった。


 わざわざ、そんな面倒くさい運用にする予定だったのは、この防煙器は魔法を使うから、工場で量産するみたいなことはできない。魔術師の工房に行って、オーダーメイドで作ってもらう必要がある。しかも他所の発注分との兼ね合いもあるから、自然と高価になる。


 トンネル内の煙は厄介で、場合によっては機関士が窒息死するというから、侮れない。もちろん、俺としては高いかね掛けて養成し、雇った機関士を死なせる気はない。


 魔法大臣あたりにも、話を持っていく必要があるかもしれないな。


 と、考えている間に列車が速度を落とし始めた。


「お、着いたみたいだな」


 最初の視察予定に着いたようだ。俺は手にしていた食器を置き、降りる準備に入った。



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