優等列車を設定せよ! 上
開業以来、我がヤマシタ鉄道を走る列車の種別は、特になかった。基本は全ての駅に停車する鈍行(各駅停車)で、一部に利用者の少ない駅を通過する列車はあっても、それを快速と急行みたいに区分けしていなかった。
それはパターン化されていなかったり、そもそも駅の利用者がいない時間帯に通過していたからだ。また駅の数や列車の本数自体が少なかったから、優等列車を設ける必要性がなかった。
しかし、キエシャ伯爵領に路線を延ばし、その端から我がヤマシタ公爵領を抜けて王都へ向かう列車を設定したことで、この状況は変わった。
何せこの列車、乗り通せば10時間以上掛かる。これは単純に乗り通した場合は距離があるのに加えて、国鉄とうちの鉄道との線路の幅が違うために、途中のオジリシ駅もしくは、トセ駅での乗り換えが発生するためと、国鉄線内に単線区間(我がヤマシタ鉄道は全線複線)があるため、列車の交換に時間が取られるためだ。
そして実際にどこまで需要があるのか、最初はわからなかった。と言うのも、バトの街から王都へ行く方法としては、内陸部を通るルート以外に、沿岸航路と河川航路のを伝うルートがあったからだ。
この海上と河川を伝って王都へ向かう航路は、移動効率の良い船なのだから運賃は安価で、伝統的な航路だから便数も多い。
実際に開業前に行った簡単なマーケティング調査でも、航路から鉄道へ移ると回答した人は少なかった。
だから、こっちとしては、直通列車の需要がどこまで伸びるのかわからず、貨客共にお試し的に設定したのだけど、運転を始めるとこれが連日盛況。特に旅客列車は満席。事前の調査結果に反してバトの街と、王都を往来する商人や貴族が思った以上に利用し、短期間で三等車を減らして二等、一等を増やす結果になった。
どうしてこんなことになったのか?
要因の一つは、鉄道を使うことのステータスだ。ルーレ王国で鉄道が導入されたのは、何年も前の話だけど、その路線は最初対魔王国戦争用に利用され、戦争終結後も王都から各地へ延びていく形になり、必然的に王国の外縁部は、その恩恵に預かれなかった。
この文明の利器がようやく達して使えることが出来るようになったことで、キエシャ辺境伯領の商人や下級貴族は、先に利用していた人々に追いついたという自負を持てたわけだ。
そして最初はそうしたステータスを得るための乗車だったのが、想像以上に便利とわかって、リピーター化した。
陸の交通機関としては、馬車より圧倒的に速く快適であり、そして船便と比べると便数は少ないが、速く快適かつ、時間に正確なのが受けた。
実はこの世界の船、軍艦に関しては俺が魔王国に勝つために、積極的に技術を入れた結果、今では地球の「ドレッドノート」に匹敵する艦が就役するところにまで来ている。
ところが、数が多い民間船への技術転移は遅れ気味で、外用航路の船にようやく完全蒸気機関船が行き渡ったところで、沿岸航路の船は未だに帆船か、帆と蒸気併用船であった。
このため、海象や悪天候の影響を簡単に受けてしまい、おまけに載せる船会社や船主も「荷物が貯まってから」「お客を集めてから」出港なんてことしているから、時刻表など無きに等しかった。
だから需要に関わらず、決まった時間通りに出発して、しかも季節変動を除けば運賃も一定している鉄道に、旅客と急送品などの一部の貨物が流れこんだということだ。
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