電車の時代を目指して! 下
トセの郊外で稼働した発電所は、現在のところは試験運転を兼ねた火力発電所が1カ所だけだ。
何せ初物づくしであるから、稼働当初は様々な箇所に不具合が出た。もちろん、機械だけで無く操作する人間側が不慣れだったのも一因だ。
ただそうした初期不良も、半年もすると一掃されて、発電所員も円熟していく。
それから、送電網の方もだ。電気を使用する箇所が少ないので、電気を送る電線も、その電線を支える電柱の数も少なかったが、それゆえに事故も発生した。特に電気についての知識の無い人間が、故意や事故で触れて感電する事故が数件発生し、死者まで出てしまった。
電柱や電線には危険の看板を出したが、それでもダメだった。
まあ、電気自体の存在を知らない人に、その恐ろしさを説いても理解されにくいのは当然だ。地道に啓発活動と、初等学校での教育の成果が出るのを待とう。
で、第一発電所もようやく安定したので、ここで次のステップに移る。それは発電所の増設と、送電網の強化。そしてトセ市内での路面電車の運転だ。
鉄道開通から6年。その効果もあって、トセの人口は右肩上がりで、市街地も徐々に拡大している。
市街地の公共交通手段は、これまで馬車や、俺が異世界から持ち込んだ人力車が主力だった。
鉄道馬車も考えたけど、これはせっかく整理した乗合馬車網を壊すことになりかねないので、中止していた。
では、路面電車はどこに敷くかと言えば、トセ中央駅と魔王国からの移住者が中心となって作った街であるミライ市との間を結ぶ。ただしルートは並行ではなく、直線で結ぶヤマシタ鉄道に対して、大きく外側に半円を描く路線とする。
この路線が走る予定の区間は、現在何もない森林や山、いいところ零細農家があるだけだ。つまり、現状は人口希薄地帯。元から住んでいる住人目当てで商売するなら無謀極まりない。
しかし、日本の私鉄ビジネスは古くから、人口希薄地帯に線路を敷いて、鉄道会社が街や人々の集客地となる観光地を整備して乗客を想像してきた実績がある。
今回はそれに倣って、設置する停留所周辺の住宅地整備を行う。
そして、人口希薄地帯に線路を作るもう一つの理由は、沿線に発電所と変電所を設置するためだ。
現状の技術で発電を行う場合、方法は水力と火力に絞られるが、生憎と水力は我がヤマシタ公爵領内にはダムを造る適地がないため、期待できない。
だから基本的に火力一択だ。しかも、火力なら燃料となる石炭を領外と繋がるヤマシタ鉄道経由で運び込めるメリットもある。
その電気を使い、電車を走らせ、沿線に整備される住宅街の電化も進める。
もちろん、電車と言っても日本の創世記のそれと同じ、小型の木造単車だ。
それでも、この世界では画期的な存在になることは間違いない。既にムーホ男爵領にある我がヤマシタ鉄道車両製造所では、試験車両の製作と構内試運転も始まっている。
となると、次に来るのは路線の建設だ。既に測量が始まり、一部では路盤の整備も始まっている。既に我がヤマシタ鉄道では優秀な技術者や作業員が育ちつつあるので、作業は順調に進んでいる。
この新たな電車、トセ電気鉄道開通の日は近い。
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