電車の時代を目指して! 中
俺の現在の爵位は、国内でも最上位の公爵だ。そんな貴族であるが故に、トセの街には俺の領主館がある。
現代日本人の俺からしてみれば、充分にデカい屋敷なのだが、この世界の貴族の基準としては小ぶりらしい。
確かに、戦争中や爵位を賜った後に訪れた貴族の屋敷は、うちより位が下の男爵家でも、それなりの大きさだった記憶がある。
しかし俺からすれば、デカすぎる屋敷もらっても持て余すだけだろうし、維持費だってバカにならない。もちろん、ステータスとして持つ必要があるのは理解過ぎるけど、それでも実利をないがしろにするようなレベルだったら、はっきり言って必要ない。
このことは爵位をもらう以前から、モクロ陛下には伝えていた。実は今の領地と領主館をもらうことになったのは、事前にそうした要望を伝えていたことが大きい。
この領地を以前治めていた伯爵が、跡継ぎが無いこともあって、この国の貴族としては慎ましい生活をしていたがゆえに、領主館も小さかった。
まあ、現代日本人である俺からすれば、それでも執事やメイドを数人は雇わないと生活が成り立たないくらいの広さがある。
なので、屋敷の部屋の一つや二つを俺の趣味のために使うのに、何も問題は無かった。
趣味の部屋のうちの一つは地下に作った書庫で、地球から取り寄せた鉄道を中心とする俺の趣味関係の本が納めてある。地下となると雨天時の進水や湿気、虫の入り込みが課題となるけど、そこは金持ちとして色目付けずできる限りの水回り対策に防虫対策、トドメに妻のアイリに防腐魔法を掛けてもらって完全防御とした。
なお、本は増え続けているので、そのうち自分専用図書館でも作りたいなとは思っている。
で、もう一つの趣味の部屋が、鉄道模型の部屋だ。
鉄道模型、読んで字の如く鉄道の形をした模型のこと。現代日本ではレール幅9mmで縮尺150分の1(新幹線車両は同160分の1)のNゲージがポピュラーだ。Nとは英語のNineの頭文字から来ている。
ちなみに、黒船のペリー提督が現代で言えばミニSLと言えるライブスチームを持ち込み、走らせたのは有名で、新橋~横浜間の鉄道開通前に日本では蒸気機関車の模型が既に運転されていた。このことから、日本初の鉄道を鉄道模型とする場合もある。
まあ、室内でライブスチームとはいかいので、ここにある模型は現代日本でも、というより現代地球でもポピュラーな方式で走っている。
鉄道模型は高価な趣味だが、その走行システムは何十年と変わっていない。レールもしくは架線から集電し、その電力を調整してモーターの回転数を増減させて走らせる。
端的に言えば、モーターに電気を流し込んで走らせているだけだ。
実際の鉄道車両のような強力な電圧もいらないし、複雑な制御器も必要ない。
なので、地球から取り寄せた本に書かれていた資料を基に、腕の良い職人たちに頼んで、車輌やレール、駅などのストラクチャーを作らせた。
当然現代地球のような工場での量産ではない。職人たちによる一品ものだ。
おかげでべらぼうな値段になったが、それについては問題ないので、こうして鉄道模型をジオラマで子供たちとともに走行させるという、模型鉄趣味を出来るようになった。
そして、その動力に欠かせない、肝心要の電力は先日稼働したばかりの火力発電所から来ていた。
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