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一路南へ!

 キエシャ辺境伯は、うちの公爵領から見てシバシン男爵領を挟んだ南側にある辺境伯領だ。ちなみにこの国での辺境伯の地位は、基本的に国の南北の国境を固めて交易と国境の守りを任された、公爵に準ずるものとなっている。


 基本的にと但し書きを付けたのは、対魔族戦争前までは魔王国と国境を接した東側にも辺境伯が置かれていから。しかし魔王国を保護領として併合したことや、戦後の貴族領の整理によって、この東の辺境伯領は廃止になっている。


 さて、そのキエシャ辺境伯の領都セイは、海岸から河で15kmほど遡上した平地に設けられている。かつては海に面した港町のバトの街が領都だったそうだが、万が一の敵襲(海上からの上陸)や台風、地震には弱いという弱点から、遷都されたという。


 今回うちの鉄道が終点として目指すのは、もちろん港町のバトだ。現在領都としての機能は喪ったが、軍港、商港、漁港を広く包括するこの街へ鉄道を延長する旨味は、言うまでもない。


 途中のシバシン男爵領の通過は、はっきり言って問題ない。


 鉄道敷設に伴う建設工事労働者の現地雇いに、開通後の固定資産税の支払い、そして株の一部を男爵に譲渡することで配当金を出すことで、決着している。そもそもシバシン男爵は中年の良く言えば堅実、悪く言うと凡庸な領主さんで、自分から新しいことをやる気はないが、さりとて公爵様に逆らう気もないという人だった。


 もっとも、だからと言ってそれで足元を見れば、後々禍根を残すかもしれない。情けは人の為ならずだ。


 という訳で、シバシン男爵さんにも相当な旨味が落ちるようにはしている。


 だけど、キエシャ辺境伯相手には、正直言って線路の敷設許可を取り付けるには、相当な苦労が見込まれた。


 ただし、それはキエシャ辺境伯が偏屈だからとか石頭だからとか、そう言うことじゃない。


 では、どういうことかと言うと・・・


「ヤマシタ公爵の鉄道敷設計画に関しましては、理解できるところです。ですが、我が領内の領民に対する配慮が必要です」


 バトの領主館で相対したキエシャ辺境伯は、こちらの説明を聞き、資料にも目を通し終えると、おもむろに口を開いた。


 俺と年齢的には二つ違い年上の女性で、前当主に男子がいなかったゆえに、辺境伯家を継いだのが彼女だ。現在別の伯爵家から入り婿として来た旦那さんとの間に子供もいるので、血筋的には安泰だ。


 だからと言ってただの血筋で選ばれた凡人でもなければ、愚者でもない。むしろ、名君と呼び声高い人だ。


 その人の口から出た自領民への配慮。これについては、事前に調査させている。もちろん、鉄道敷設による直接的な補償を行う人、すなわち立ち退きや用地の買収対象となる人に対しては、これまでと同様だ。充分な補償を出すだけだ。


 しかし、単純に金銭だけで何となるだけの人ばかりではない。彼女が言うのは、そうした人々への対応ということだ。



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