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交通安全教室

 ここは、我がヤマシタ領内の鉄道沿線にる寒村の一つ。俺は今日、妻のアイリと2人の子供たちを伴って、お忍びで訪れていた。


 その村の広場に、村人全員が集められている。領主命令で、村内にいる全員に集まってもらっていた。


 領主命令ということで、中にはビクビクしている人もいるが、別にとって食う訳じゃないよ。


「え~!それでは村人の皆様、これより交通安全教室を行います!!」


 俺がメガホンを使い、村人全員に呼びかける。ちなみに、今日の俺は領主仕えの役人と言う設定で、他にかっちりと制服で決めたヤマシタ鉄道の社員を4名ほど連れて来た。


 彼らはこれから、大型のセットを組み立てて、この後の等身大講習を行うのだ。


 それまで、前座として俺が紙芝居を村人に見せる。紙芝居の内容は、鉄道を利用する際の注意点や、鉄道施設(主に線路)近くで行動する際の注意点だ。特に、踏切を含む線路の渡り方についてだ。


 どうしてこんな教室を開くかと言うと、我がヤマシタ鉄道で発生した鉄道事故の反省からだ。


 我がヤマシタ鉄道は開業以来、鉄道の運行を起因とした大規模な死亡事故は起きていない。これは誇るべきものだ。しかしながら、そうではない人身事故は数件発生している。特に多いのが、領民が踏切や線路上で轢かれるというものだ。


 何せ、鉄道が身近にある現代でも踏切事故は後を絶たない。ましてや、鉄道なんてつい数年前まで見たこともない人たちなのだから、その危険性への認識や安全への意識は、推して図るべきということだ。


 もちろん、自動制御の踏切はまだないので、大きな踏切には踏切警手が立っている。こうした踏切での事故は、今のところない(ヒヤリは多いらしいが)


 しかし全ての踏切に警手を配置できたわけじゃないし、そもそも踏切でない場所を渡る領民が後を絶たない。それまで自由に通っていた場所に、後から線路が通ったのだから、彼らにしてみればこれまでどおりにしているだけだろう。


 列車の本数も、そんなに多いわけじゃない。しかしながら、それでも不幸な事故は発生してしまっている。渡る領民が無警戒で線路に入り込んだ場合もあれば、小さなが子供が遊んでいる間に線路内に入り込んだ時もある。


 子供の死者が出たことは、同じ子を持つ親として忸怩たる想いだ。


 という訳で、早急に領民の交通安全意識を啓発するべく、こうして沿線の村々を回って、紙芝居や寸劇を利用した交通安全教室を開いているわけだ。欲を言えば映画くらいあると良いんだけど、残念ながらこちらの世界ではまだ開発中なので、実用化を待つしかない。


 ちなみに紙芝居や寸劇の利用は二つの意味があって、一つは領民に、特に大人世代に文盲が多いこと。子供たちには義務教育制度を整備したので、文字を読めている子が増えているが、教育の機会が得られなかった大人には文盲が多い。そんな彼らには、視覚に訴えたこうした手段がわかりやすく伝わる。


 もう一つは、娯楽の普及。特に提供する側が娯楽で食って行けるようにすること。なので、彼らはヤマシタ鉄道の社員だが、鉄道業務は補助で所属も新設の娯楽部になっている。


 いずれはこの娯楽部を、あのマルーンで有名な私鉄のやっている女子歌劇団とか、或いはジェットな加速で有名な私鉄が経営する野球チームみたいに、育てていきたいものだ。


 そして、アイリや子供たちにも彼らの芸を見せることで、家族サービス。


 我ながら、一石で二鳥も三鳥も行けるアイディアだ。


 あ!さらにイイこと思いついた!そのうち、交通遊園みたいなものも作ろう!遊んで学べて交通知識も普及できるし!


 夢が広がるわ~

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