貨物列車の発展
鉄道の歴史において、その運ぶものの種類は大きく二つにわかれる。旅客と貨物。つまり、人とモノだ。
我がヤマシタ鉄道も、開業以来旅客列車と貨物列車の2種類を運転しているが、貨物列車に関しては当初ワジフラ岳から産出される石灰石の輸送だけをしていた。
本来、鉄道貨物で運ぶ物品は多岐に渡る。石炭や石油、木材や砂利、小麦や米と言った食料品、或いは工場で完成した工業製品等々。変わったところでは、武器や肥料の元となる人糞なんてのものある。
そうしたものの中で、どうして石灰しか運んでいなかったかと言えば、開業時点ではそれ以外の貨物輸送が見込めず、あとは国鉄と連絡する形で行っていた小荷物輸送だけだった。ちなみに、小荷物は貨物ではなく旅客輸送の括りに入っていた。その小荷物にしても、当初は客車の一部にカーテンで仕切りをしたスペースに載せる程度だった。
でも開業から半年ほどして、鉄道の利便性が領民に知れ渡ってくると、小荷物輸送の量が徐々に増加して、開業2年目のダイヤ改正では旅客列車に小荷物輸送専用の客車を1両増結する態勢になった。
それまで荷物の輸送は、自分で運ぶかピンからキリまで存在する荷物運びを行う業者に委託するしかなかった。もちろん、その運賃や運ぶ速度、さらには荷物への扱いもピンからキリだった。高額な運賃をせびるのはまだいい方で、普通に荷抜きや荷物の窃盗が起こっていた。だから、頼む側は運任せにするしかなかった。
それに対して、我がヤマシタ鉄道の小荷物輸送は、運賃は距離と重量、それから荷物のサイズで一定の基準がまず前提としてある。さらに、駅に運び込む手間はあるけど、オプションで自宅への荷受けや駅から送り先までの配送も請け負った。もちろん、そのサービスを担保するために、従業員の給料と教育には配慮しなくちゃいけないから、運賃もオプション費用も高めの設定になった。でも、そのおかげで少なくとも従業員が原因となった輸送中の事故は、開業以来ゼロ件であった。
これが評判を呼んで、まずは富裕層や大手の商店へとサービスが広がり、輸送量の増加による運賃の値下げでさらに市井へとサービスが広がる、いい循環を作り出すことが出来た。
うちのこの手荷物輸送の体制は、国鉄や後発の各鉄道でも採用される予定だ。
話が脱線したけど、貨物輸送に関してね。最初は石灰だけの輸送だったけど、次の品目に加わったのは石炭。石炭は我が領地では産出されないから、当然国鉄経由での輸入になるのだけど、往路は輸出する石灰を、復路は輸入する石炭を運ぶ体制にして、それまでの復路空荷を解消している。石炭の主な消費地はうちの会社や発電所だけど、暖房燃料としての需要もあるから、売り上げは発生している。
ちなみに現代日本の石灰石輸送は専用の貨車を用意しているけど、この世界ではまだそんな技術はないから基本的に無蓋車に載せている。雨への対策は、今のところシートや簡易な屋根を被せる方法を採っている。
とにかく、往復ともに荷を載せることで貨物の収益性は大幅に上がった。そして、次に運ぶことになったのが木材だった。
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