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旧魔王国からの便り

「旧魔王国から?」


 ヤマシタ鉄道が最初のダイヤ改正を行った直後のある日の午後、俺はトセ中央駅隣接の本社社長室で、社長業務を行っていた。社長業務と言っても、基本的には雇っている事務社員たちからの書類に目を通して、決裁印を押すだけなんだけどね。もちろん、社長である俺のところに上がって来る書類の中身は、社内の最重要課題だから、よく中身を読み込んでから判を押すことにはなるけど。


 俺の現在の仕事は大きく分けて、今言った鉄道会社社長としての業務と、領主としての政務の二つに分かれる。


 基本的に午後が領主としての政務で、それが終わってアイリと昼食を摂ったら、今度は鉄道本社に言って、そっちの社長業務に携わるのが、業務のある日の日課になっている(スケジュールによっては午前が鉄道本社で、午後が屋敷という逆パターンもあるけどね)


 で、この社長業務の際の秘書を、鉄道開業直後までは領主の政務と同じく、妻のアイリにやってもらっていた。元魔王と言う肩書の彼女だが、夫である自分の目から見ても、とてもハイスペックな女性で、それこそハウスメイドの仕事から社長秘書、公爵夫人としての役目まで、なんでもござれだ。


 しかし、今は社長業務に関しては、新たに雇った若い男女の秘書官2名にやってもらっている。これは人材育成と、アイリが俺の妻になったことで、出産や子育てで長期休業を取るのを見込んでのことだった。


 そのため、今現在アイリは俺が鉄道本社にいる間は顔を見せることなく、基本的に屋敷にいる。こっちから呼ばない限り、社長室には来ない


 しかし、この日はアイリが自分から訪ねて来た。それも、俺の執務中に。


 余程急ぎのことなんだと思って執務を止めて通すと、案の定そのとおりだった。


「はい。難民の受け入れを、何とかして欲しいというものです」


 アイリの説明は、こうだ。


 我がルーレ王国との戦争に敗れた魔王国は、そのままルーレ王国が総督府を置いての保護国となった。直接併合しなかったのは、ルーレ王国の人口の8割方を占める人間族と、魔王国の人口の8割方を占める魔族との対立を考えてのことだ。


 ちなみにこの世界の魔族は、大雑把に言うと魔法を使役できる人間だ。ここで難しいのは、魔法が使える人間との線引きだが、大雑把に言うと魔族の方が遥かに魔力量が多く、使える魔法も多い(特に攻撃系)とのことだ。


 その魔法が人間より使えるという驕りが、しばしば旧魔王国とルーレ王国との国境紛争の種になり、ついには全面戦争となった。その戦争で魔王を倒す勇者として俺が召喚されて、地球側から取り入れた知識で魔王国に打ち勝ったのは、前から言っているとおりだ。


 で、ルーレ王国が保護国に置いた魔王国については、その後総督府が俺のアドバイスを受け入れて、厳しすぎず甘すぎずの統治をして、比較的安定していると聞いていた。


 それが今になって難民の受け入れを、それも今や元魔王となったアイリに打診してくるとは。どうも話が見えてこない。


「アイリ、とにかく落ち着いて。どういうことなのか、一から説明してくれ」


「はい、旦那様」


 俺に促され、ソファーに座って落ち着きを取り戻したアイリは、説明を始めた。

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