鉄道以外のビジネスを始めよ!
鉄道開業から1カ月。今のところ大きな事故はなく、悪天候や乗り入れ先の国鉄が原因で発生したものを除けば遅延も起きていない。
列車の運行面としては、とりあえず好調な出だしと言えるけど、商売としては決して順風満帆なわけじゃない。
何せ1日3往復の旅客列車と1往復の貨物列車しか走っていない。旅客列車は増えつつはあるけど、まだまだ旅客数は多いとは言えないし、貨物列車に至ってはワジフラ岳での石灰の採掘開始まで、小荷物くらいしか運ぶものがない。
これで、収益が出る方がおかしい。そもそも、鉄道自体運賃収入だけでは、それほど儲けが出る構造にはなっていない。運賃とかの旅客収入だけで全て賄おうとすれば、べらぼうに高い運賃を設定するか、現代日本あるあるの、朝のラッシュ並みの乗車率を実現しないと無理だ。
と言うわけで、副業の方も本格的に開始する。
鉄道に関連する副業は色々あるけど、手っ取り早いのは駅構内での商売だ。駅舎内で売店やレストランを開いたり、駅弁をはじめとする物を売ったりという感じだ。
今のところ本数も少なくて、利用者もそれほど多くないから駅弁や売店は時期尚早だから、手始めに駅舎内に軽食店を出そうと、俺は考えた。
トセの街に張り紙を貼って、店を出す人間を募った。すると、あれよあれよという間に応募殺到となり、予定より早く募集を打ち切った。
何でこんなに応募が?と思ったら、どうやら駅舎内での営業で、場所はこちらが用意するというのが好条件だったらしい。
確かに厨房と客席スペースに、客席の机や椅子と言った備品もこちらで容易にしたからな。
ただその分家賃は高めに設定したし、一定の売り上げがなければ退去と言う条件も付けて、難易度上げたつもりだったけど、それでも魅力的な条件らしい。
まあ、何はともあれ応募殺到な以上、この中から1組に任せなきゃいけない。
まず料理で審査。応募者全員に、店で出すつもりの料理を作って提出させた。これを俺やアイリ、それから駅員で食べ比べ。見栄えからしてダメなやつから、どう見ても軽食としては豪華すぎなやつまで。
これで半分に落として、次に人を雇って身辺調査。これでさらに半数を振るい落とした。
そして、最終的に残った者を直に面接して、一組に絞り込んだ。
ここまで来るのに10日。俺は合格組を社長室に呼んだ。
「おめでとう。新しい店を、君たちに任せることにする」
すると、俺の目の前に呼ばれた合格者、見た目はわかいエルフの兄妹は恐縮しきりの顔で聞いてきた。
「あ、あの。本当に俺たちでいいんですか?」
「私たちエルフなんですけど」
ああ、やっぱりその点か。この国では、人口の8割は人間。エルフを含めた人間以外の種族は少数派で、虐げられているとまではいかないけど、存在感は確かに薄い。
でも、はっきり言えばそんなこと関係ない。
「今回の採用条件に、人種規定はない。ただ逆に言えば、君たちがいくら長命な種でも、契約の条件は絶対に厳守だ・・・さあ、どうする?」
「「お願いします!!」」
こうして、駅舎併設のカフェ1号店開店の目処が立った。
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