開業式を祝え!
活動報告に書きましたが、5月3日にぎっくり腰をやってしまい、ようやくのこと続きを書けました。
御迷惑をお掛けし申し訳ございません。
ポーン!ポーン!とトセの街に花火が打ちあがる。
俺の領地の領都として、それなりに活気のある街なんだけど、今日は一段と盛り上がっている。
当然だ。ついに俺の念願!ヤマシタ鉄道開業の日を迎えたのだ。
そして俺は今、トセ中央駅のホームで社長専用制服に身を包み、モクロ・ルーレ国王陛下やクマラギ鉄道大臣と言った超VIPたちとともに立っている。オジリシ駅を発車した開業記念列車を出迎えるためだ。
「もうすぐだな」
懐中時計(この世界にはまだ腕時計が普及してない)を見れば、到着予定時間はもうすぐだった。
この日のために入念にリハーサルしたし、今のところ遅延の報告もない。
それを裏付けるように、汽笛と蒸気機関車独特のドラフト音が響いてきた。
「来た!」
前面にド派手な祝賀装飾を取り付けた機関車と、それに引っ張られた木造客車3両の短い列車。俺の知っている現代日本の鉄道車両に比べれば、陳腐でお粗末な列車だ。
でも、でも!この列車こそ、俺の夢を現実のものとした、偉大なる一歩なんだ!
列車が予定位置に停止すると、まずは日本式に俺や国王陛下たち来賓によるテープカットが、ブラスバンド隊の音楽と共に行われた。
このハサミでテープをカットするの、一度やりたかったんだよね。これだけでも、感無量。
続いて、モクロ陛下による祝辞、そして俺の祝辞となる。
「今日ここにヤマシタ鉄道の開業を、国王陛下隣席の下で祝えることは、喜びに堪えないところでありますが、もちろんこれで終わりではありません。この鉄道が沿線と沿線の市民、そして王国の一層の繁栄に貢献できるよう、我々は今後も努力を怠ることなく進まなくてはなりません。そしてその一歩は、日々の安全かつ安定した輸送を提供することであります」
ありきたりだけど、そもそも演説の専門家じゃないんだ。これで、勘弁してくれ。
祝辞が終わると、列車の乗降口へ敷かれたレッドカーペットを、まず国王陛下がクマラギ鉄道大臣を随員にして歩いていく。そして、お召車となった食堂車へと乗り込んだ。
俺は、隣にアイリを伴って、深々と頭を下げて列車に陛下をお迎えする。
そして、見送りの駅長に敬礼をすると、今度はアイリの手を取ってお召車に乗り込んだ。
お召列車と言えば、日本人だったら皇族の方々がお乗りになる専用列車を思い浮かべるだろうし、実際この国の国鉄やうちの鉄道でも製造予定はある。
ただ今回は間に合わなかったので、食堂車転用となった。それでも、内部に絨毯を敷いて、王専用の御座所を用意して、精一杯の準備はした。
その席に陛下がお座りになり、俺たちも着席した直後、発車の鐘と汽笛が鳴った。
ついに、夢にまで見た自分の鉄道の列車が、未来へ向けて走り始めた。
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