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峠を越えろ!

 比較的順調なトセ中央駅までの工事に対して、やはり心配なのは、その向こう側のワジフラ岳までの区間。この区間は、途中のスウイ峠がネックとなる。


 トセ中央の区間までの視察を終えた1カ月後、俺は再び馬車に乗り込んでスウイ峠へと向かった。


 同峠の勾配緩和のために、アイリが建設したトンネルを見るためだ。この工事を行うために、アイリは1週間先に現場に向かっている。


「お任せください、旦那様。旦那様がお着きになる頃には、完成させて御覧に入れます」


 と、怪しい笑みを浮かべていたが大丈夫かな?


 今は俺の妻兼メイドだけど、腐っても元魔王だし。まあ、戦争に敗北して捕まった際に、俺に逆らえない呪術を掛けられているから、下手なことは出来ないだろうけど。


「御安心ください。あなたの命令を破るような、愚かなことはいたしません。そして、あなたの命令に従わないような愚か者がいましたら・・・」


 あ~、この後人に言うのも憚られる単語連発したから、とりあえず「余計なことはしないように」と、抑えておいたけど。


 いかん、トンネルのことよりもアイリの暴走の方が気になってしまう。


 と、そんなことを心配している間に、現場に到着と。


「おお!」


 馬車から降りるなり、俺は思わず声を上げた。そこには複線かつ、将来の電化まで計算に入れた幅広の立派なトンネルが、山肌に口を開けていたから。


「お待ちしておりました。旦那様」


 と、メイド服姿のアイリが、絵に描いた様な見事なカーテシーをして出迎えてくれた。


 外向きの服でも、作業着でもなくメイド服。出発する際にそのことを指摘したら「これが、今の私のユニフォームなので」と言われてしまった。まあ、そのこだわりを妨げる理由もないし。


 でも、改めて山奥の工事現場にメイド服は場違いだ。おまけに、まるで洗い立てのように綺麗だし。


 まあ、今はそんなことどうでもいいか。


「アイリ、このトンネルはもう貫通しているのか?」


「もちろんです。旦那様の命令通り、こちらの作業監督の指示に従い、寸分の狂いなく向こう側まで貫きました」


「そうか・・・念のため確認させてもらうよ」


「御意」


 俺は、アイリの掘ったトンネルを歩いていく。寸分たがわずという彼女の言葉通り、トンネルは均一の大きさで続き、しっかりと山の向こうの建設現場に続いていた。


 もちろん、さらに内側の補強や線路の敷設と言う仕事は残っているけど、トンネルは見事に掘りぬかれていた。これなら、大丈夫そうだ。


「よくやったよ、アイリ。これでこの鉄道は、完成したも同然だ」


「お褒めの言葉、ありがとうございます」


 うん、スッゴク良い笑顔している。もし、しっぽがあったら喜びでブンブン振っているんだろうな。


 それに対して、現場監督や工員たちがメチャクチャ怯えたような顔をしているよ・・・何があったかは、聞かない方が精神衛生上良さそうだ。


 まあ、彼らには後でいくらかの給金の上乗せと、嗜好品の特配を手配しておこう。



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[一言] スウイ峠、、、碓氷峠、あ!(察し)
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