#8
#1
たまには図書館じゃないところで勉強するのも悪くないな。
ここのお茶とお菓子は美味しいけど、こんなに人が来ないなんて珍しい。
勉強のためには静かな方がいいけれど。
「どうも」
不意に声をかけられたから振り返るとそこには声をかけた人のお腹しか見えない。
目線をあげてもまだ顔が見えないから見上げると、ようやく顔が見えた。
声からなんとなくわかったけれど、優しい顔をしたお爺さんがいた。
「こんにちは。」
「私はここの主人でね。どうですか、ここのお茶とお菓子は?」
「とても美味しいです。」
「それは良かった。急に話しかけて申し訳ない。勉強中でしたね。」
「大丈夫です。ここは静かでとても勉強ができます。」
「それは良かった。ここには若い人が来ることは珍しくてつい声をかけてしまいました。」
「このお店はあまり人が来ないようですけど、宣伝したりしないんですか?お茶もお菓子も凄く美味しいのに。」
「ほほほ。なに、この店は私の趣味みたいなものでしてね。気に入った人にしか宣伝しないのですよ。」
「そうだったんですね。」
「ここへは誰かの紹介でいらしたのですか?」
「はい。兄が知り合いと一緒に来たそうで。」
「お兄さんですか、、、それはリュウゴさんのことですかな?」
「そうです!お話しされたんですか?」
「ええ。巡り巡ったご縁のお礼をされましてな。」
#2
「おお、シュウゴさんは料理をされているのですね。」
「はい。私は兄と二人で暮らしているのですが、兄は料理が苦手で。」
「それで、シュウゴさんが料理を作るようになったと。それはそれは。」
「最近、菓子も作っているのですが、あまり知識がなくて困ってるんですよ。」
「ほうほう。学生は勉強で忙しいですからね。ふーん、若人の悩みを叶えるのもまた一興ですな。エーコ。」
店主が顔を横に向けたので、その方向をみるとさっきウェイトレスさんがいた。
呼ぶときにその場にいるのはだんだん慣れてきたな。
「シュウゴさん、息抜きがてらこちらのエーコに料理を教わってください。エーコ、台所でこの方、シュウゴさんにいくつか料理を教えてあげてくださいな。」
「はい。ではこちらへどうぞ。」
「えーと。特に準備とかないんですが・・・。」
「大丈夫ですよ。作り方は後ほどメモを渡しますし。」
「そうですか・・・では、お言葉に甘えて。有難う御座います。」
—
エーコさん、本当に手際いいな。
「シュウゴさん、これは細かく刻むと口当たりが良くなります。」
「はい。」
しっかし、この台所は結構広いのにエーコさんどうやってあんなに早く配膳できたんだろう。
「どうかしましたか?」
「いや、大丈夫です。ここのお店ってエーコさんと店主さんしかいないんですか?」
「いえ、他にもいますが、今は見えません。」
「休憩中ですかね?」
「そうですね。ふふ。」
エーコさんは笑顔になるととても可愛い。
あんまり見ると嫌な気分になられても困るし、目の前の料理に集中しよう。
—
「本当に今日は有難う御座いました。お菓子ももらっちゃって。」
「大丈夫です。また教わりにきてください。店もそこまで忙しくないのでいつでも。」
「有難う御座います。」
—
窓の外でシュウゴさんが会釈した後、帰っていった。
エーコはお店の中に入り、こちらを見ると笑顔で奥に行ってしまった。
思ったよりもいいことしたな、儂。
#3
「シュウちゃん、これ美味しいね。どこでもらってきたの?」
「兄さんに教えてもらった茶店だよ。あそこの店員さんと一緒に作ってきたんだ。」
「シュウゴ、これ美味しいな。この前カナさんといった時のお菓子もおいしかったけど、これも美味しい。」
「そうだね。」
「シュウちゃんが料理もっとたくさん作れるようになるなんて私は嬉しいよ!」
「マモ姉も料理作れるんだからたまには作りなよ。」
「へっへーん!私はこの家の味見係なので、料理は作らないのだ!」
「たく、調子いいな・・・。」




