#7
#1
「いい匂い。何作っているの?」
「ん、うわっ。あんた、そんなところで何をしているんだ?
人ん家のベランダに上がってくるなんて何考えてるんだ?」
「固いこと言わない言わない。んで、何作っているの?」
「何って、お菓子作ってるんだよ。」
「へぇ、誰にあげるの?」
「兄ちゃんだよ。いっつも仕事してくれてるからそのお返しに」
「偉いね〜。」
じーっとお菓子を覗いてみると、すごく美味しそう。
「なんだよ、お腹空いてるのか?」
「ふふん!実はお腹が空いているのだ。」
「変わった奴だな。…一個ぐらいならあげるよ。」
「おー有難う!」
食べてみる中はふわふわしててとっても美味しい。
「うん!美味しい!!料理上手なんだね。」
「そっか。良かった。」
恥ずかしそうな顔してる。
「これからもたまに食べさせてよ。」
「ただで食べれると思ってるの?」
「ふっふっふ。では、お主の欲しいものをいってみよ!」
「…信用できるのかな…。」
#2
「サッちゃん、はい。お茶」
「有難う。」
「その子、サッちゃんに懐いているね。」
「うん。たまに会うと寄ってくるね。」
膝の上にいる猫ちゃんの背中を優しく撫でていると、静かに息をしていることがわかる。
「いらっしゃいませ。あら、ゲンさん。」
「やあ、カナちゃん。シンゴちゃんはいるかね?」
「はい。父なら今奥にいます。」
「そうかい、そうかい。では、この魚を渡してくれ。」
「うわぁ、立派な鯛ですね。」
「この前のお礼にな。いつも有難うさん。」
「いえいえ。では、父を呼んできますよ。」
「いやいや構わん。まだ足も治っとらんのだし、気を使わんで良い。」
カナちゃんは鯛を持って奥に戻っていった。
紳士的なお爺さんはこちらに会釈をしてきたので、会釈を返した。
膝の上にいた猫ちゃんがムクっと起きたら、お爺さんの横を通ってどこかにいってしまった。
「おや、あやつ。ここに来ておったか。」
「あの猫ちゃんのことをご存知なのですか?」
「小さい頃から知っておるのよ。天真爛漫な子じゃよ。」
「そうなんですね。」
「ああ、私はコンドウゲンジロウと申します。」
「初めまして、サイトウサチコです。」
「ん?もしかしてサイトウタカシさんの奥様ですか?」
「主人をご存知ですか?」
「はい。以前、命を助けていただきました。」
「あー!あなたがコンドウさんだったんですね。」
「左様。これは不思議な縁がありますね。」
「そうですね。お体に変わりはないですか?」
「おかげさまですっかり元気になりました。」
「それは良かった。」
—
「それじゃ、あの孤児院を支援されていたんですね。」
「そうなんですよ。まさか、あのお守りを渡されていたとは、驚きました。」
「お気を悪くされましたか?」
「全く。むしろ、私はなぜそれをしなかったのかと自分に問うてしまいましたよ。」
コンドウさんはカナちゃんが持ってきたお茶を飲んだ。
「サッちゃんもそうだけど、タカシさんも欲がないんだね。」
「ううん。だって、私たちもうすでに幸せだし、何かいいことが起こるなら他の人にあげたいなって。」
「本当にあなた達には関心させられますな。長く生きてきましたが、そこに気がつかないとは。年は取りたくないものですな。」
「でも、コンドウさんのやっていることも立派ではないですか。」
「そうだよ、ゲンさん。子供達もゲンさんには感謝してるよ。」
コンドウさんは口元を柔らかくしながらお茶を飲んだ。
#3
「んで、その爺さんって一体何者なんだ?」
「ん〜どうやら、昔からいる人で街の顔役だったみたい。お義母さんも知っていたみたいだし。」
「そうなのか。世間は狭いな。」
「なー。」
タカシは缶コーヒーを飲んでいた。
「んで、またその爺さんはお返しでたくさん魚やら肉やらを送ってきたわけだ。」
「そうそう。流石に食べきれないよ。シュウ、今度うちで夕飯食べない?サチコも誘ってこいっていってるからさ。」
「うまいもんなら大歓迎だ。いつだ?」
飲み終わった缶コーヒーをゴミ箱に捨てた。
タカシも飲み干したみたいで同じゴミ箱に捨てた。




