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#51
「ん?エーコが?」
ナナシさんが階段をゆっくりと降りてきた。
そのまま、厨房へと向かう。
ナナシさんは厨房の入口から中を覗いている。
「エーコ」
「ああ、ナナシさん」
「大丈夫か?」
「はい。お茶飲みますか?」
「いや、私が淹れよう」
「…そうですか」
「席に座って待っていなさい」
「はい」
「とっても美味しいです。久しぶりにナナシさんのお茶を飲めて嬉しい」
「お粗末様。どうだ?気分は晴れたか?」
「はい。気を使って頂いてありがとうございます」
「彼とは仲良く毎日のようにいたからね」
「そうですね」
「まぁ、ゆっくりしなさい」
エーコさんは飲み終わったカップを厨房の洗い場で洗っている。
布巾を持ってきて、そっと横に置いた。
「ありがとうございます」
エーコさんはカップを優しく拭いていた。
寂しいですか?
「そうですね。生徒みたいでしたから」
頁を捲ると今まで沢山教えたことが書いてありますね。
人がいなくなるのはいつも寂しいものですね。
「はい。しかし、思い出は残ります」
この料理帖は本棚にしまいますか?
「いいえ。私も後で見ますから置いておいてください」
わかりました。




