#5
#1
「リュウちゃん、これ美味しいね。シュウゴちゃん、本当に料理うまいんだな。」
「おやっさん、そう言ってくれるならシュウゴも喜ぶよ。」
おやっさんの後ろには、カナさんが台所でお茶の用意をしている。
「おやっさん、足の具合はどうなんですか?」
「うーん、流石にまだ動かねえな。店番ぐらいはできるが配達は難しいな。」
「そりゃ大変ですね。」
「まぁ、足を怪我しちまったけど、娘には手伝ってもらえるし、
贔屓のお客さんは変わらずきてくれるし、なんてことはないな。」
「お父さん、お茶。」
「おう、有難うな。」
おやっさんはカナさんのお茶を美味しそうに飲んでいる。
「リュウゴさんもどうぞ。」
「有難うございます。」
「そうだ、リュウちゃん。一つ頼み事を頼まれてくれないか?」
「どうしたんですか、急に?」
「いやな、いっつも配達しているところがあるんだが、これが届ける量が多くてな。流石にカナ1人だと多いんで、男手が欲しいんだよ。リュウちゃん、今度の休みでもいいんだが、どうだ?お礼は野菜サービスするからよ。」
「俺は別に構わないですよ。」
「おっし!決まりだな。カナ、リュウちゃんと一緒に行ってきてくれ。」
「うん。リュウゴさん、悪いけどお願いね。」
#2
「ここみたいだね。」
「そうですね。んじゃ、運びますね。」
カナさんが車のエンジンを止めている間に、後ろに回って野菜の入った段ボール箱を運んだ。
カナさんも後ろから段ボールを運んできて、配達先の孤児院の玄関に向かった。
「すいませーん。ハナコさーん?」
「はーい。」
孤児院の奥から中年の女性がやってきた。
「あらあら、カナさん、こんにちは。」
「ハナコさん、こんにちは。お父さんの代理で野菜持ってきました。」
「いつも有難うございます。こちらへどうぞ。」
廊下を通りながら、窓を見ると外で子供達が楽しそうに遊んでいた。
台所につき、指示された場所に野菜を置いた。
—
「お二人とも、お茶とお菓子を用意したので、どうぞ。」
「有難うございます。」
「有難うございます。」
「本当にシンゴさんにはいつも美味しい野菜を送っていただいて助かります。子供達もいっつもシンゴさんの野菜が美味しいと言っております。」
「それはよかった。父にも伝えておきますね。」
「ああ、挨拶が遅れてしまいましたね。私はサトウハナコです。」
「ミヤモトリュウゴです。ヤマシタ工業で働いています。」
「ヤマシタ工業・・・タケさんのところかしら?」
「そうです。タケさんのことご存知なのですか?」
「タケさんは度々こちらにきて色々とものを直していただいているんですよ。」
「知らなかったな〜。」
「私も知らなかった。」
「近所ですから、何かとご縁がありますね。ほほほ。」
#3
「タケさん、サトウさんの孤児院に行ってたんですね。」
「おう。リュウちゃん、あそこ行ったのかい?」
「はい。モリモトのおやっさんの手伝いで野菜運びに行ったんですよ。」
「シンゴちゃんの使いか。なるほどな。」
「タケさん、俺にも言ってくれればあそこ手伝いに行ったのに、なんで言わないんですか?」
「なーに、リュウちゃんを呼ぶほどでもないからよ。」
「そうですか?」
「そういうもんさ。若いもんがあんまり年寄りの仕事取っちまうと、俺らボケちまうよ。」
タケさんは笑いながら作業を再開し始めたので俺も仕事を再開した。
#4
「おかえり。」
「ただいま、はいこれ。」
「はーい、有難う。」
兄さんから貰った袋から食材を取り出していると、兄さんが袋から冷蔵庫にしまっていた。
「兄さん、大丈夫だよ。服着替えてきなよ。」
「お、おう。そうだな。有難う。」
気のせいか、兄さんが何かそわそわしていること気がする。
—
「兄さん、なんかあったの?」
「ん?んー。」
兄さんはご飯を口へ運んでからそのまま箸を離さないで、考え込んでいる。
「いやな、なんかタケさんが孤児院で手伝っているからさ、タケさんの手伝いにいきたいなと思ってたんだけど、タケさんに断られてな。」
「そうなんだ。どうしてタケさんは断ったの?」
「それがな、俺が手伝うと、タケさんの仕事がなくなるんだってさ。」
「あー。兄さんは人に優しくしすぎるからなぁ・・・。タケさんの気持ちわかるかも。」
「そうかな?」
「そうだよ。おかわりいる?」
「おう。有難う。」
兄さんのお椀にご飯をよそう。
「兄さんはもう少し自分の時間を作りなよ。」
「そうだな・・・」
また、お箸を口から離さないままになった。




