#36
#1
「リュウちゃん、5番取ってくれるか?それと、明日までのやつだが、どこまでできてる?」
「5番です。明日のやつはもう終わりました」
「ありがとう。了解。相変わらず、仕事が早いな」
「タケさんから色々教わりましたから」
タケさんの背筋はまっすぐになっている。
昔のタケさんの姿を思い出す。
最近まで、物忘れも始まってきていたのが、嘘みたいだ。
タケさんの仕事の早さは前よりもずっと早くなっているように思える。
---
「血液が循環して脳にいい刺激を与えたんじゃないかな?」
「そうかな。でも、あそこまで良くなるものかな...」
「相当いい先生だったんじゃない?」
「そうかな。」
「まぁ、タケさんが昔みたいに働いているのはいいことなんじゃないの?」
「そうだーそうだー。そして、今日の味噌汁の具は豆腐だー♪」
「マモ姉、変な歌を歌わないの。でも、タケさん、どこの整体に行ったの?」
「詳しくは知らないけど、ナナシさんに聞いたみたい」
「ふーん」
#2
「あれ?」
見覚えのある背の高い人がいる。
「ナナシさーん!こんにちは」
「おやおや、サチコさん、こんにちは」
「今日は猫ちゃんにいたずらされてないですか?」
「ほほほ。最近、あの子も忙しいのか、すっかりこなくなりましてな。寂しいですが、安心感もありますね」
「ふふふ、そうなんですね」
「おやおや?外で見るには珍しい方が来ましたね」
ナナシさんは私の後ろの方向を見ている。
振り返ると、ナナシさんよりも背の長いすらっとした人がいた。
「こんにちは、ナナシさん。お嬢さんもこんにちは」
「こら、コモリさん。女性への言葉遣いがなっていませんよ」
「おお、それは失敬。私はコモリと申します」
「サイトウです」
「サチコさん、こちらコモリさん。近くで整体をやっているんですよ」
「そうだったんですね」
「ほう。少し、腰が疲れている様子」
「へ?」
「少し失礼」
コモリさんはさっと腰に手を当てる。
なんだか腰が暖かくなった。
「軽い処置ですが、これで当分は問題ないと思います」
「ありがとうございます。なんだか不思議と腰がなくになりました。魔法ですか?ふふふ」
「魔法とは、違いますよ。でも、勘がいいですね」
「コモリさん、いきなり女性に触れるのも失礼ですよ。常識を少しは学んでください」
ナナシさんは溜息を吐いていた。
「しかし、コモリさん。なぜ急に外に?」
「用があったのは確かですが、あなたに会うとは思いませんでした。それに人に会うとも...。」
「そうでしたか」
「何か心あたりが?」
「ええ。先ほど、会ったではないですか」
「...あの方ですか?」
「私の店で話しましょう」




