#35
#1
「最近、腰が凝るかもな」
「タケさん、大丈夫?」
「うーん、年だからかな」
「元が丈夫だから、今まで気づかなかったのかもね」
「そうかもな」
「どう?タケさん」
「うん。だいぶ良くなった。ありがとよ」
「でも、一回ぐらい整体でも行ったらどう?」
「そうだな〜。暇もあるし、行ってみてもいいかもな」
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「なるほど。どれ」
「その辺だ」
「ふーむ、確かに凝っていそうだな。タケさんも年を取ったね」
「ナナシさんは凝ったりしないのか?」
「私は問題ないですね」
「そりゃ羨ましい。どこかいい整体は知らないかい?」
「ふーん。近くにありますよ。行ってみますか?」
「それはありがたい。場所はどこだい?」
「ナナシさん、あの店を教えるのは珍しいですね」
「そうですね。なんとなく言いたかったんですよ」
「なんとなく?」
「ええ。なんとなくです」
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ここだな。
人がいないのかな?
「いらっしゃいませ」
奥からひょろく背が長い男が来た。
「どうされましたか?」
「ああ、整体を受けたいのだが、大丈夫かね?」
「ええ。今なら大丈夫ですよ。こちらへどうぞ」
奥のマッサージベッドへ案内された。
「こちらに座ってください。調子を見てみます」
「はい」
先生は背中、肩、腕など調子を確かめた。
「なるほどなるほど。少し、背中が張っているのは長年の姿勢の問題かもしれませんね」
「昔からあまり凝ったりすることはなかったので、年かもしれません」
「まぁすぐ治りますよ。では施術しますね。うつ伏せに寝てください」
うつ伏せになり、マッサージベッドの穴に顔を入れて、目を閉じた。
背中から感触がしたが、なんだか固いものを当てている。
背中が次第にうっすら暖かくなってきた。
「深呼吸をして、楽に」
先生の言葉を聞いてから、眠くなってきた。
疲れていたのか、意識が遠のいていく。
#2
「ナナシさんの紹介してくれた整体に行ったら、もうすっかり良くなったんだ」
「それは良かった」
タケさんは腕を上げ下げして、肩をぐるぐる回してる。
逆に壊れるんじゃないか心配なほどだ。
「でも、そんなすっかり治るなんていい整体なんですね」
「そうなんだが、初めからすっかり寝ていてな。あまり覚えていないんだよな」
「よっぽど気持ち良かったんですね」
タケさんは膝を叩いて立ち上がった
「よし、これで午後も仕事頑張るか!」
「うっす」
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「この前、新しい客を紹介してくれてありがとう」
「いえいえ、お互い様ですから。相変わらず腕がいい様子。この前、紹介したお礼を言われましたよ」
「そりゃ良かった。人間の体を長く見てきた甲斐がありますよ」
「それとこれが骨粉です」
「いつもありがとうございます。今度、あなたの体も施術しましょうか」
「ははは。冗談を。我々は特別ですから、不要ですよ」
「私の患者の中でもあなたは一番歪ですからね。最初、あなたの体を見たときは驚きましたよ」
「そんな昔の話を。ほほほ」
「ははは。でも、我々が会ったときに比べて、今は本当に平和になりましたよ」
「そうですね」
「では、私はこれで。エーコさんもまたお元気で」
「はい、コモリさん。また。」




