#3
#1
「カナちゃん、いつまでこっちにいるの?」
「うーん。とりあえず、お父さんが戻ってくるまでだけど、まだ完治していないだろうし、今は仕事もないから当分はいるかな。」
カナちゃんがいてくれるの嬉しいな。
「サッちゃんはタカシさんとは仲良くやってそうだね。」
「うん。タカシさん、優しいから。サッちゃんは誰かいい人いないの?」
「今のところはまだ…かな。」
カナちゃんは目線を店先に向けたので、そっちを向いたけど、店先には誰もいなかった。
「そろそろかな。」
そう言ってカナちゃんは奥の台所に向かった。
「何か手伝うよ。」
カナちゃんの後をおって台所に向かった。
「こんにちは」
後ろから声がしたので振り返るとリュウゴさんがいた。
手には袋を持っていた。
「こんにちは、リュウゴさん。」
「お、サチコさん、どうも。カナさんいます?」
「カナちゃんね。カナちゃーん。」
「はーい。待ってて、お茶持って行くね。上がってー。」
「んじゃ、お邪魔しますね。」
リュウゴさんは居間に入って畳にゆっくりと腰をおろした。
その後、袋の中から透明なパックに入った和菓子を取り出した。
「サチコさんも一緒にどうぞ。シュウゴにも言われているので。」
「いつも有難う」
シュウゴくん、いつも和菓子作ってるけど、とっても美味しいよな〜。
「二人ともお茶持ってきたよ。」
カナちゃんがお茶を3つ持ってきて、食卓の上に乗せた。
#2
カナちゃん、リュウゴさん、シュウゴくん。
みんなに何かお返しができないかな。
何か気配がしたので、ふと横を見ると、塀の上に綺麗な猫がこちらを見ていた。
すると、こちらに飛びかかってきたので、びっくりしたけど胸元にきたので受け止めた。
胸元に猫の感触とは違うものがあるので、よく見ると猫はなぜか指輪をくわえていた。
「猫ちゃん、この指輪はどうしたのかな。」
猫ちゃんの口から指輪をとると、猫ちゃんは素直に口から指輪を離した。
しばらくこちらを見てから、胸元に顔を埋めてまるまった。
かわいい。
「そこの方、すいません。」
前の方から声が聞こえて前に目を向けると、そこには顔ではなく、溝落だったので、
目線を見上げると大きな背丈のお爺さんだと分かった。
「…はい。どうかされましたか。」
「そちらの猫が咥えていた指輪があったと思うのですが、知りませんか。」
お爺さんは手を猫ちゃんに挿していた。その指には確かに猫ちゃんの咥えていた指輪と似たような指輪をしていた。
「この指輪のことですか?」
「あ〜それです。その猫はいつも悪戯をするので困っているのです。かわいいからいつも許しているのですが、面白がってまた今日も悪戯をされてしまったようですな。ほほほ。」
お爺さんの笑い声は暖かみがあり、落ち着いた雰囲気だな。
「どうぞ。」
「有難うございます。悪戯はほどほどにな。」
お爺さんが猫ちゃんの背中を撫でると猫ちゃんは喉を慣らしてた。
「ともかく、あなたのおかげで早く指輪が戻ってよかった。これがないと大変でしてね。何かお礼をさせていただきたいです。」
お爺さんは胸元から小さな紙を取り出して前に出した。
「近くで茶店をしているのですが、一杯ご馳走しましょう。」
「え、いえいえ。大したことはしていないですよ。」
「いいんですよ。生い先短い老人の好意は受け取ってください。」
お爺さんの優しさを無下にしては悪いので、紙を受け取った
「時間のある時でもいらしてください。この紙を店員に見せてください。では、野暮用があるので、これにて失礼します。」
お爺さんは会釈をして行ってしまった。
紙を見ると、そこにはお爺さんの茶店の場所とお店の名前が書かれていた。
「んにゃー」
胸元で丸くなっていた猫ちゃんがこちらを見上げていた。
「あ、ごめんね。」
猫ちゃんを塀の上に乗せて、頭を撫でた。綺麗な毛並みで気持ちいい。
「あんまり悪戯しちゃだめよ。」
猫ちゃんは分かっていなさそうに気持ちよさそうに目を閉じていた。
#3
「タカシ、ここのお店知ってる?」
「ん?んー、聞いたことがある気がする。どうしたの?」
「んーと、今日たまたまここのお店の人にあってもらったの。」
「そうなんだ。近いから行ってみたら?」
「そうだね。最近できたのかな?」
「お義母さんなら知ってるんじゃない?」
「あ、そっか。そだね。聞いてみる。」
—
いつも通り過ぎてた古民家のようなところがお店だったなんて知らなかった。
窓も曇りガラスだから全然中が見えなかった。
お店の扉を開けて中に入ってみると、中は一見暗いと思ったけど、
窓からの日差しが暖かく、落ち着いた雰囲気だった。
お店の壁や受付の奥にはいろんな種類の茶葉が瓶に入っていたり、
いろんな名前が書かれている茶棚があり、茶葉のいい香りがする。
「いらっしゃいませ」
「あ、こんにちは。この紙を見せるよう言われたのですが。」
「失礼いたします。」
店員さんは紙を受け取り、内容を確認した。
よくみると綺麗な顔立ちの人だな。
「こちらへどうぞ。足元にお気をつけください。」
店員さんの後ろについて歩くと窓際の席に案内された。
席に座って荷物をおいた。
「こちら、メニューになります。どれでも一杯サービスいたします。」
「ありがとうございます。」
店員さんは一礼して、奥に戻っていった。
美味しそうなお茶が写真付きでメニューが載っていた。
良さそうなお茶があったから店員さんはいるかな。
すると、目線を奥に向けたら、店員さんがこちらに向かって歩いていた。
「お決まりになりましたか。」
「このお茶をお願いします。」
「かしこまりました。」
店員さんはまた奥に戻っていったので、窓から外をみると、どうやら庭があるようで、
外でもお茶ができそう。
「お待たせしました。」
優しい声が聞こえたので振り返ると、先程の店員さんがお茶とお菓子を持っていた。
手際良く丁寧に卓に注文したお茶とお菓子をおいた。
「あの、お菓子は頼んでいないのですが。」
「こちらもサービスです。このお茶に合う菓子になりますので、ご一緒にどうぞ。」
「有難うございます。」
店員さんは笑顔になって奥に戻っていった。
お茶とお菓子を楽しむととっても美味しく時間を忘れるほどくつろいだ。
一応、念の為持ってきた本を鞄から出して、読み始めた。
#4
お茶を飲み終わり、本も区切りがよくなったので、帰り支度をし始めた。
「こんにちは。いかがでしたかな。」
「あ、お爺さん。こんにちは。本日はどうも有難う御座いました。とてもおいしかったです。」
「ほほ。それは良かった。」
お爺さんの手元に紙袋を持っていた。
「お嬢さん、こちら宣伝用ですが、あなたが飲んでいただいたものと同じ茶葉になります。よければもらってください。」
「ええー。もうたくさんサービスしてもらっているので悪いですよ。」
「いえいえ、それがもらっていただけると嬉しいのです。美味しそうに飲んでいることをエーコからも聞いておりますし、飲んでいただけると茶葉たちも喜びます。」
そう言うと、お爺さんは紙袋を渡してきたので、渋々受け取り中をみると、
茶箱が3つ入っていた。
「3つもいただいていいんですか?」
「ええ。できれば近くに住んでいるお友達にあげてください。」
「本当に、こんなにしていただいて有難う御座います。」
「いえいえ、これも何かの縁ですから。」
—
「うん。このお茶美味しいね。」
「ねー。本当不思議な縁があるんだね。」
「他の2つは誰にあげるの?」
「カナちゃんと、リュウゴさんにあげようと思う。」
「いいね。でも、そのお店の宣伝担当になったみたいだね。」
「だね〜。でも、あのお爺さんの口車には乗ってもいいかも。」




