#29
#1
"
サイトウ タカシ様
サチコ様
お久しぶりです。お元気でしょうか。
その節はありがとうございました。
新しい町で出会った子供達や近隣の方と毎日楽しく過ごしております。
また、巣立っていった子供達も里親様の元で健やかに成長しております。
これもあの時の不思議な縁から良い事が続き、こうして私の力を必要としている場所に行けたことを嬉しく思います。
近々、またお二人に会えることを楽しみにしております。
お体にお気をつけて、楽しい日々を過ごしてください。
それではまた。
ササキ ハナコ
"
---
閉まっている孤児院。
そこには綺麗に荷物が運び出され、かつて暖かかった雰囲気が今では何もない無機物の空間になっていた。
その空間のどこかから声が聞こえる。
その声の方向に向かうとそれは聞き覚えのない言葉だった。
声の主人を見つけると、その主人は床にしゃがみ、何やら床を触っている。
その人は立ち上がり、こちらを向いた。
「これでここは大丈夫。あんまりはしゃがないように」
その人は出口に向かって歩いた。
「もし、ここに飽きたら私の元においで。私に会いたくなったら、自然と会えるようにしておいたから」
その人は笑いながら部屋を去っていった。
確かに前よりも居心地が良い。
誰もいない場所でゆっくりと静かに寝ていよう。
久しぶりにちゃんと寝れる。
#2
「ハナちゃんがいなくなって寂しいな」
「そうだね。孤児院の子供達も巣立っていったし、嬉しいことだけど、やっぱりいないと寂しいな」
「ハナちゃんの今度の勤め先は隣町みたいだから、遠くでもないな。今度配達のついでに野菜でもあげてこよう」
「いいね。そろそろ、店に戻るよ。シンゴちゃんも店に顔を出しなよ」
「おう。じゃあな、ケイコちゃん」
ケイコちゃんは手を振って店を後にした。
神棚にあるケイコちゃんからもらったお守りに目をやる。
綺麗な巾着の中には白い貝殻が入っていた。
不思議な雰囲気のあるものだから何となく神棚に置いている。
それを見てたら何となく拝みたくなったので、拝むことにする。
...。
「こんにちはー!」
「お、いらっしゃい!」
#3
「そういえば、手紙出してきた?」
「うん、会社に行く前に出してきたよ」
「ありがとう。ハナコさん、いつ来るかな〜」
「今月中には来るんじゃないかな?」
「そうだったら嬉しいな。一緒にお茶したい」
「そうだね。また、子供達にあげようか?」
「それいいね。一緒に考えよう」
「うん」
タカシは胡瓜の漬物を箸で取って、食べた。
胡瓜の美味しそうな音が聞こえた。
「これ美味しいね」
「でしょ?カナちゃんに教えてもらったんだ〜」




