#2
#1
「兄さん、お弁当もった?」
「持ったよ。シュウゴは今日叔母さんのところに手伝いに行くのか?」
「ううん。今日は行かないよ。いってらっしゃい。」
「いってきまーす。」
—
「リョウちゃん、今日のお弁当はなんだ?」
「今日は唐揚げ弁当みたいです。タケさん、はい、お箸。」
「あんがとさん。」
タケさんは箸を受け取ると、シュウゴが作った唐揚げを取り、美味しそうに食べた。
シュウゴの唐揚げは元気が出るから大好きだな。
—
タケさんと工場で弁当を食べ終えた。
「よし、リョウちゃん。午後の仕事も始めようか。」
「はい。」
タケさんは弁当を綺麗に片付けてくれた。
今日もシュウゴにおいしかったって言おう。
—
「ただいま〜。」
「おかえり。お弁当箱、頂戴。」
「ほい。」
「美味しかった?」
「うん、タケさんも美味しそうに食べてたよ。いつも有難う。」
シュウゴは笑顔になって、台所に戻っていった。
その後、作業着から部屋着に着替えて、居間に向かうと、
すでに、食卓にはシュウゴが夕飯の用意をしてくれていた。
今日は生姜焼きだ。
「いただきます。」
「はい。いただきます。」
夕飯を食べ始めた。
「しばらくは叔母さんのところ、忙しいから帰りに買い物をお願いしたいけど大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。いっそのこと、その当番は俺でいいよ。」
「だめ。それは流石に悪いから。でも、有難う」
#2
シュウゴは朝、今日の買い物一覧の紙を渡してくれた。
今日は肉屋と八百屋に行けばいいのか。
メモを仕事の鞄に入れて、信号が変わるのを待っていた。
信号の反対側には荷物を沢山抱えた女性が立っていた。
青信号に変わって歩き始めると、女性が信号の端で転んで荷物が散らばってしまった。
急いで、彼女の荷物を拾い上げて、転倒した女性の傍に向かった。
「大丈夫ですか?」
「有難うございます。大丈夫です。あ、荷物もすいません。有難うございます。」
青信号が点滅し始めていたので、歩道に戻り、彼女に怪我がないことを確認してから、
荷物を渡した。
「すいません。助かりました。」
「いえいえ。特に怪我もなくてよかった。気をつけてくださいね。」
彼女は頭を下げてくれた。そのまま、工場に向かった。
—
シュウゴに頼まれたお使いも残りは八百屋だけだ。
八百屋の親父さんのお店に向かうことにした。
「親父さん、どうも!いますか?」
八百屋の店先に親父さんの姿がないので、奥に声を飛ばしてみた。
「今行きまーす。」
親父さんの声ではなく、女性の声が奥から聞こえてきた。
奥から出てきたのはやはり女性だった。
「お待たせしました。あ!朝のお兄さん。朝は有難うございました。」
「ん?あ、あー信号の!あなただったんですか。あれ?なんでここに?」
「実はここは父のお店で。父がしばらく足の怪我で入院しているので、代わりに店番をしているんですよ。」
「あーそういえば、親父さんに娘さんがいるって聞いてたけど、あなたのことだったんですね。」
「ふふ。学校も寄宿でしたからお店に帰るのはあまり多くなかったんですよ。」
「そうなんですね。」
しばらく、立ち話をした後、シュウゴから頼まれていた野菜を買って、八百屋を後にした。
—
「へー、カナさんって言うんだ。」
「そうそう。俺も驚いたよ。」
夕飯を食べながら、シュウゴに今日の八百屋の娘さん、カナさんのことを話した。
「でも、朝助けた人がたまたま八百屋の親父さんの娘さんだったなんて、驚きだね。」
「そうだな。」
「カナさん、綺麗な人だった?」
「お、おう。綺麗な人だったよ。」
「そうなんだ。兄さんもそろそろ恋愛でもしたら?」
「ははは。それはシュウゴが独り立ちしてから考えるよ。今は特にそういったものはいらないよ。」
シュウゴは溜息を吐きながら、食べ終わった食器を台所に運んで行った。
「兄さんは真面目すぎるよ。お酒もたまには飲んだら?」
「いや、今日は大丈夫だ。この後、技術書を読むからさ。」
…
兄さんは家に帰ってもお酒も飲まないし、技術の勉強で本を読んだり、練習で物を作ったりといつも真面目すぎるからたまには息抜きでもしてほしい。
…
シュウゴはまた、ため息をした後、ベランダに出て、いつも来ている綺麗な毛並みの猫に餌をあげていた。何か猫に話しかけているけど、ここからは聞こえないな。
#3
あれ以来、兄さんには八百屋にいける回数を増やすように、それとなく野菜料理を増やしてはいるけど、報告でも進展は特にない様子。
ただ、互いに好意的には見ているみたいだけど、2人を無理にくっつけてもよくない。
「何か、きっかけはないかな・・・」
「シュ〜ウちゃん」
ベランダから声がしたので、振り返るとマモ姉がいた。
自然とため息が出る。
「マモ姉、ベランダから来ちゃダメだって行ってるのに・・・。」
「大丈夫だって、周りの人も見てないの確認してるし、問題ないない!それよりも今日も何か美味しいのないの?」
「もうすぐ兄さんも帰ってくるから、マモ姉も待っててよ。」
「はーい。」
マモ姉がくるのは、なんとなくわかってたから食材は問題ないな。
「そうだ。シュウちゃん。八百屋のカナさんだけど、和菓子が好きみたい。サイトウの奥さんと話してるところ聞いた。」
「へぇ・・・和菓子か。」
洋菓子は作ったことあるけど、和菓子はまだなかったな。
「シュウちゃんは料理もお菓子も得意だから、和菓子も大丈夫だよ!」
「・・・マモ姉、ただ食べたいだけでしょ?」
マモ姉は笑って誤魔化してる。
「ただいまっと。マモさん、来てたの?」
「おー、リュウゴ。お邪魔してるよ〜。夕飯も食べてくよ。」
「そうか。シュウゴ。ほい、今日のお使い分。」
「おかえり、兄さん。有難う。いつも助かるよ。」
兄さんが作業着を着替えに奥に向かって歩き始めた。
「あ、兄さん。和菓子苦手じゃないよね?」
「ん?和菓子か嫌いじゃないな。なんだ、作るのか?」
「うん、ちょっと考えてる。」
「んじゃ、楽しみだな。」
兄さんは笑顔で僕の頭を撫でる。ちょっと頑張ってみるか。
#4
シュウゴから八百屋の惣菜のお裾分けを持っていくように頼まれたけど、今日もカナさん店にいるのかな。
「あ、リュウゴさん、いらっしゃい。今日は何がいる?」
「カナさん、こんちは。買い物もそうだけど、今日はシュウゴからこれ。」
「シュウゴくんから?いつも有難う。お父さんもシュウゴ君の惣菜は好きだから。今日も何かサービスしてあげるね。」
「有難う。」
カナさんは袋から惣菜を取り出すと、さらにこの前お裾分けの肉じゃがが入ってた透明なパックを取り出した。
その後、カナさんは少し驚いた顔をしてから袋から紙ときな粉餅が入った透明なパックを取り出した。紙はどうやら手紙みたいでシュウゴが入れたみたいだ。
カナさんはクスクスっと笑った後、手紙を見せてきた。
「和菓子できな粉餅を作ってみたよ。2人で食べて、感想を後で聞かせるように。 シュウゴ」
「シュウゴくん、和菓子作れるんだね。」
「ああ、最近始めたみたいだ。」
「よければ上がって、今お茶入れてくるから一緒に食べよ。」
「んじゃ、お言葉に甘えるよ。お邪魔します。」
八百屋の奥の居間に上がって、畳の上に座った。
カナさんはお茶を用意してくれて、一緒にきな粉餅を食べた。
相変わらずシュウゴは料理がうまいなと関心しながら、カナさんとしばらく食べながら話をした。
ふと、道に目をやるといつもベランダに来ている猫がこっちを暖かな笑顔で見つめていた。目があったら、あっという間にどこかへ行ってしまった。
—
「ただいま。」
シュウゴはベランダの戸口に腰掛けながら、膝にさっきの猫をのせてくつろいでいた。
「おかえり。和菓子どうだった?」
「すごくおいしかったよ。カナさんも喜んでた。また食べたいってさ。」
「へへ、そっか。また作るよ。」
シュウゴは笑顔になって猫の頭を撫でた。
猫は嬉しそうに鳴いた。




