#16
#1
「ナナシさん、いつも厨房を貸していただいてありがとうございます。」
「どういたまして。大したことではないよ。」
ナナシさんはお茶を飲んでいる。
「ナナシさんってお元気ですけど、おいくつなんですか?」
「ん?歳か?歳は20歳だ。ほほほ。」
「そんな分かりやすい嘘を…。」
ナナシさんは明るい笑顔で笑っている。
「ナナシさんは人生で生きていて何が大切でしたか?」
「うーん、何だろうなぁ。」
ナナシさんはぼーっと視線を上に向けている。
「例えば、お金とか友達とか。」
「お金と友達か…。お金は使ったらなくなるし、友達もみんな死んでしまったしな…。」
「あ、すいません。」
「気にするな。」
「でも、ゲンジロウさんやタケさんは友達ではないんですか?」
「彼らは若すぎる。」
「そうなんですね。」
「ほほほ。」
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「シュウゴさん、どうしたんですか?」
「いや、ナナシさんと話をしたんですけど…。」
「何か言われました?」
「ナナシさんの友達の話をしたら、少し気まずくなってしまって…。」
「そうですか。でも、ナナシさんは気にしていないと思いますよ。」
「そうですか?」
「はい。ナナシさんは長生きですから。」
「それならいいんですが。」
「ふふふ。」
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「ナナシさん、シュウゴくんと話しましたか?」
「ああ、話したよ。人生で何が大切か聞かれたな。」
「なんて答えましたか?」
「答えなかったなぁ。」
「どうして?」
「意地悪なことを言うな。」
「ふふ。お茶淹れますね。」
#2
「ねぇ、兄さん。」
「ん?どうした?」
「人に聞いてはいけないことってあるよね。」
「そうだな。どんなことを聞いたんだ?」
「えっと、人生で大切なこと。」
「なるほどな。」
「兄さんは人生で大切なものはあるの?」
「そりゃ、シュウゴだな。」
「…そ。」
「シュウゴは?」
「…秘密。」
「ははは。聞いておいて答えないのか?」
「…おやすみ。」
「あはは。おやすみ。」




