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16歳の杞憂  作者: 野々原 芽鷹
1/1

ご高覧いただき有難うございます。処作です。お目をお汚ししてしまったら申し訳御座いません。

 今日は昨日の大雨が嘘のように感じられる澄み切った晴天。そんな良い天気の日私は少し憂鬱でした。

 満開に咲いている綺麗な桜並木。その並木道の端っこを今ゆったりとしたペースで私は歩いています。

 この並木道は全国でも一二を争う程の綺麗な桜が咲く場所で、今年も開花を発表されたとき、真っ先にテレビや雑誌などでも紹介されるほど有名です。

「あゝ、憂鬱だなぁ」

私は誰にも聞かれないように言いました。

私の名前は若月 夏海。今日から『私立梅雨ヶ丘学園高等学校』訳して蛙学園に通う高校一年生です。今日から花の女子校生というのになぜこんなに憂鬱かと言うと今絶賛遅刻中だからです。

(9時6分………なんて言い訳しましょう。時刻表を見間違えたなんて信じてもらえないでしょうし。はぁー)

この蛙学園は校則が異常に厳しいことで有名です。

(初日から遅刻とかで退学とかやめてくださいよ。)

 そんなことを考えていたら並木道を抜けて結構急な坂が見えてきました。この先を登っていたら学校です。私は少しでも怒られないよう坂道を走りました。

 10分程でしょうか8割くらいの力で坂道を登って、ようやく蛙学園が見えてきました。蛙学園は地方から越境してでも通いたいと言う人がいるほど人気の学園です。敷地面積は全国でもトップ50くらいに入っているらしく、校舎が私が通っていた学校の3倍位でグラウンドも広い凄い学校です。

 (さて、ここからどう上手く怒られないようにしましょうか)

 私は中々良い案が思いつかず…結局、正直に事を話そうと思い、少し重い足取りで門をくぐり、せめて堂々といようと校舎に向かいました。そうして歩いていると

「おい」

 と後ろから野太い声で声をかけられました。私はその時少しドッキとしましたが、先生なのだろうと覚悟を決め後ろを振り返りました。後ろを振り返ると私と同じ制服を着た青年が立っていました。

「遅刻か?」

と青年が私の理解が追いつかないうちに尋ねてきました。数十秒の間私が黙っていると青年は腹を立てたのか舌打ちをし、少し顔を強張らせ再度

「遅刻か」

と尋ねてきました。その後ようやく

「そうですけど…」

と答えることができました。その答えを聞いて青年は強張らせた顔を解き、ため息ををこぼしました。

「はぁー、良かった仲間がいた」

その言葉を聞いてやっと理解が追いつきました。

(この人も私と同じで遅刻した人だったのか)

青年はこちらをじろりと見、「俺、幽谷ゆうこく 山音やまね

と聞いてもないのに自己紹介をしてきました。流石に私も返さなければと思い、

「若月 夏海です」

とこちらも自己紹介をしました。

「ヘ~若月さんか…よろしく」

と何がよろしくか全く分かりませんでしたが私もよろしくお願いしますと返しました。

「いやー、遅刻仲間がいて本当に良かった~」

幽谷さんは私という遅刻仲間がいて安心したのか口が軽くなっていきました。

「いやー、眠くて二度寝くらいしたらさ~遅刻しちゃったんだよね~」

私としては汗が乾いてくるので、今すぐにでも職員室に行って遅刻をしてしまった事を言いたかったのですが幽谷さんはマシンガンの如く言葉を放ち、どうしようかと思っていました。

(面倒くさい人に絡まれましたね)

「まぁ、本当に良かったよ()()()()()()()()()()()()()()

ブチッ

(遅刻したのは事実ですが、この人に言われると少しイラッときますね)

一刻も早く職員室に向かいたかった私は

「すみません、急いでいるので」

といいその場を去ろうとしましたがちょっとまってよーと幽谷さん後を追って来ます。

「なぁ、待てよ~どこ行くんだよー」

「職員室に行って遅刻のことを謝るんです」

「じゃー俺も行くから一緒に行こうぜ~」

「いえ結構、私急いでいるんです。あなたを待つ義理なんて…」

「そんなひどいこと言うなよ~」

こんなやり取りを校舎につくまでやっていました。

「おいー、待ってくれよ」

(長いしなんなんですかね~って、憂鬱なのが悪化しますね)

もう返事をすることですら面倒くさくなり始めた頃、ようやく職員室が見えてきました。そんな頃、さっきまでずっと喋っていた幽谷が黙りました。

(なんと、そういう人でしたか)

と私は少し驚きました。

 そんなことをさておいて、私は職員室の前に立ち、一呼吸おいてからドアを3回ノックしました。しかし、反応がありませんでした。仕方ないので

「失礼します」

と言ってドアを開けました。私がドアを開けたら職員室の先生方が一斉に注目して、私は少しフリーズしてしまいましたがすぐに

「きょっ、今日、ち、遅刻、してしまいました。若月夏海です」

先生方はその言葉を聞いて私を睨みつけました。先生の一人がこちらに向かってちょっと外出ててと言われ職員室のドアを閉め失礼しますと言いました。その様子を幽谷はニヤニヤと見ていました。

「どうかしたんですか」

「いやー別にーどうもないけど」

更に顔がニヤニヤしてきて私は舌打ちしてしまいました。

「おいおい、切れるんじゃねえよ。先生に聞こえるぜ」

その次の瞬間、職員室から先生が出てきて、待たせたな、付いて来いと言って生徒指導室に私と幽谷を引っ張って行きました。

 生徒指導室につくやいなや、

「どうして遅刻したんだ」

と真剣な表情で聞いてきました。後から知りましたが嘘をついていたり、理由が酷かったりしたら停学、成績の大幅ダウンをするつもりだったそうです。その時私は正直に

「すみません、電車を乗り間違えてしました」

と答え幽谷は

「僕はおばあちゃんを助けていました」

と嘘をついていて、先生に言ってやろうと思いましたが我慢しました。そんなことをつゆ知らず、先生は怠そうにあぁそうと言っていました。

「まあ、やったもんは仕方ないから気を付けろ、んで、ええっと若月夏海だよね」

「はい」

「えっとね、お前が1年A組でええっと、幽谷(ゆうこく)?幽谷(かすや)?どっち?」

「あ、ゆうこくです」

「あゝ分かった幽谷(ゆうこく)な、お前もA組な」

「はい」

「んで、俺がお前らの担任の葉山 孝志(たかし)なよろしく」

「よろしくお願いします」

先生との一連の会話が終わり入学式に居なかったためその説明と月曜日(現在、金曜日)までに四百字詰めの原稿用紙6枚分の反省文を命じられ、一時は許された?のでしょうか。よく分かりませんでしたが、明日は気をつけろよと幽谷と一緒に返されました。

 学校から出ると幽谷がまたうるさくなり、私は電車で幽谷は自転車なのに一緒に帰ろうとか家は何処なのとか引っ切り無しに声をかけてきます。私はそれを無視して、学校を出てついさっき登ってきた坂を下っていきましたその頃にはもう静かになっていました。

 坂を下って二十数分、ようやく先程の並木道につきました。

(さっきは気づきませんでしたが今年はやけに多く咲いていますね)

来たときはどうしようかと下を向いて歩いていましたが、ふと見上げてみると春の澄んだ青空を覆い隠すほどの大量の桜がありました。

(流石はテレビでも紹介される程の花見スポットですね)

私は色というものはよくわかりませんでしたがその景色に少々感嘆してしまい、足を止めましたが、またすぐに歩き始めました。

 しかしそんな桜並木も長くは続かず、駅に近づくと終わってしまいました。

 駅までもう数百メートルというところで私の通学路唯一の信号で私は信号待ちを食らっていました。

(いい景色?でしたね)

信号が変わった?タイミングで左右を確認し車がいないことを確認してから、私は信号を渡りました。しかし、後ろから手首を掴まれ危ないぜと声をかけられ、私は後ろを振り向きました。

ブウウウウン

私が振り返ったのと同時にその音がしました。そうです。トラックが猛スピードで突進してきたのです。私はその光景に絶句してしまいました。

(あともう少し遅かったらどうなっていたでしょう)

そんな心境を知らず。

「大丈夫ー」

ゆるい声で声をかけてきました。そう幽谷(ヤツ)です。幽谷が助けてくれたのです。私はお礼を言おうとしましたが。

「大丈夫っぽいね。そんじゃまた来週」

とすぐ帰ってしまいました。トラックの運転手さんが降りて来てなにか言っていましたが私は何も聞き取れず、彼の方を気にかけていました。

 多分その時人と見ている色の違う私は少し何か感じていたんだと思います。

次回作もあるのでお楽しみにしていて下さい。また、アドバイスなどもお願いします。

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