第3話〜次なる旅路〜
「確かにこれは美味しいですね。」
ソフィアが席に届いたワインを飲んでそう言うと、
レオンは自慢げに話す。
「そうだろそうだろ。
この町の酒は王都の有名店でも出されてんだぜ。」
「まぁ、本当に酒以外は特に名物ないけどね。」
「余計なこと言うなクロウ!」
クロウにヘッドロックをかけるレオンに、
ソフィアは聞く。
「お2人はこの町出身なんですか?」
「おうよ。
俺は基本的にはここで酒作って色んなところに売りながら冒険者やってんだ。」
「俺は冒険者しながら嫁探ししてるんだけど。
里帰りしたらこのオッサンに捕まっちゃって。」
「え、マジで冒険者しながら嫁探ししてんの?
冗談かと思ってた。」
呆れながら言うアリサに続いて、ルチルがクロウに聞く。
「でもお嫁さんを探すならお見合いとかすればいいのにどうしてわざわざ冒険者なんてするのです?」
「それはね、ルチルちゃん。」
ルチルの質問に、
「モテるからだよ。」
キメ顔でそう言った。
「・・・」
「わぁ、ルチルが汚い大人を見る目してる。」
ルチルからの視線をものともせずクロウは語りだす。
「元来、強い男ってのはモテるもんでしょ。
冒険者って言ったら強い男の象徴だから結構モテるって聞いたんだよ。
槍の腕には自信があったしね。
・・・なのに。」
クロウはドンと勢いよく机に突っ伏した。
「4年間必死に頑張ってゴールドにまでなったのに未だに独り身だよこんちくしょう!
俺の何がいけないんだ!」
「うわー、酔って一気に面倒くさくなったぁ。」
そう言ってクロウの様子に呆れつつもアリサは言う。
「ソフィーちゃん的にはどんな男がいいと思う。」
「私ですか?
そうですねぇ・・・。」
ソフィアは少し考えてから話す。
「強さも大事だと思いますが、
やはり女性は男性の誠実なところに惹かれるのではないでしょうか。」
「だってさクロウ君、諦めな。」
「いやいやいや、俺以上に誠実な男いないでしょ。? 」
「女性とあったらまず何見る?」
「顔と体。」
「そんなこと言うやつのどこが誠実だよ。」
アリサの指摘に図星をつかれたような顔をしてからクロウは続ける。
「いい相手見つけるためなんだからしょうがないじゃないすか!
ちゃんと付き合いだしたらその子一筋っすよ。」
「ほんとかなぁ・・・。」
クロウを怪しげに見るアリサに、ソフィアが問いかける。
「そう言う、アリサさんはどういった男性が好みなんですか?。」
「私?」
「あ、それ俺も気になる。
やっぱり年上とかっすか?」
「いや、その辺はあんま気にしないかな。
私にとっては殆どの男年下だしね。
強いて言うなら・・・。」
アリサは頬杖をついて対面に座っているレオンを見つめた。
「若いのより、レオン君ぐらい歳いってる子が好きかなぁ。」
「ん!?ゲホッ!ゲホッ!」
酒を飲んでいたレオンはまさかの指名に驚き、むせてしまった。
「・・・急になんだよ。」
「あははは、照れてる、可愛い〜。」
「照れてねぇよ!」
そう言いつつ顔を赤くしているレオンを見て笑ってからアリサは言う。
「でもしばらく色恋沙汰はいいかなぁ、
私は。」
「なんでだよ、アンタなら引く手あまただろ。」
「・・・私さぁ、今まで3回結婚してんだよねぇ。
最初はエルフで、あとの二人は人間。」
アリサは昔を懐かしむように話す。
「楽しかったなぁ、どの男も良い奴でさぁ。
子供も孫も曾孫も皆可愛い子だったよ。
・・・だからさ。」
アリサは、今まで見せることのなかった悲しい表情で話す。
「ハイエルフとして生まれた以上は覚悟してたけど、
どうしても『別れ』が辛くてさ。
友達との別れも辛いけど、血の繋がった家族との別れは別格でね。
・・・正直死にたくなるよ。」
「アリサさん・・・。」
暗い雰囲気になっていることに気づいたアリサははっとして元気な声で話す。
「そんな暗い顔しなさんなって!
最初の旦那との末っ子はハイエルフだからさ!
完全にぼっちてわけじゃないしね。」
「あ・・・あの!」
横で話を聞いていたルチルがアリサを励ますように言う。
「アリサさん!ルチルとフレンド登録して欲しいのです!」
フレンド登録とは腕輪の機能の一つであり、
腕輪同士を合わせ相手の情報を登録し合うことで離れた場所にいても通信が可能になるのである。
しかし、余程信頼し合った相手でないとこの機能は使われない。
「私でいいの?」
「はい!ルチルはまだ未熟なのです!
だからハイエルフのアリサさんに魔法のこと色々教わりたいのです。」
「あ、じゃあ私もいいですか?」
ルチルに続いてソフィアも手を挙げる。
「ソフィーちゃんも?」
「子育ての先輩として、色々とご教授願えればいいと思いまして。」
「アリサさんも寂しかったらルチルを頼って欲しいのです!
だから・・・。」
ルチルは目に涙を浮かべてアリサに言う。
「死んじゃ・・・ダメなのです。」
アリサは微笑みながらルチルの頭を撫でる。
「ありがとね、ルチルちゃん、
大丈夫だよ、まだ死ぬ気は無いから。
まぁでも、友達は多いに越したことはないからね。
お言葉に甘えちゃおうかな。」
「おいおい、俺達は仲間はずれかよ。」
そう言ったレオンとクロウにアリサはケラケラと笑う。
「はいはい、混ぜたげるから腕輪だしな。」
「アリサさん!人肌の恋しくなったら俺の隣いつでも空いてますよ。」
「大丈夫、そういう時はレオン君に満たしてもらうから。」
「はぁ!?」
「なに?私じゃ不満?」
そう言って上目遣いで見つめてくるアリサにレオンはたじろぐ。
「不満・・・じゃねぇけど。」
「案外ちょろいね君。」
「このクソババァ!」
からかわれて怒るレオンを見て、アリサは楽しそうに笑う。
と、ここでふと思い出したようにソフィアが思い出したようにルチルに話す。
「そう言えばルチル、ユーリの・・・賢者の話が聞きたいって言ってたよね。」
「は・・・はい!
魔王を倒した勇者パーティーの一角である、
最強の魔法使いである賢者様のお話を是非!」
ソフィアの言葉にルチルは目を輝かせる。
「うーん、そうだな。
ユーリは基本的には善人だよ。
まぁ、多少サディストでマッドサイエンティストなところを除けば。」
「例えばですけど、弟子入りを志願したら迎え入れてくれるでしょうか!」
「ルチルはユーリに弟子入りしたいのかい?
既に師匠が居ると言っていたけど。」
「それは前の師匠なのです。
でも、更に精進したいなら別の魔法使いに師事するようにとルチルを送り出してくれたのです。」
「なるほど、それでユーリか。」
「ルチルは、強い魔法使いになりたいのです!
その為に、賢者様にご指導を願いたいのです!」
「それはいいと思うけど、
あの子人付き合い得意じゃないからなぁ。
受け入れてくれるかなぁ。」
「そう・・・なのですか。」
落ち込むルチルをみて、ソフィアは少し考えてから話す。
「ルチル、君はどうして強い魔法使いになりたいの?」
「どうしたのですか?急に。」
「いいから答えて?」
「えっと・・・。」
ルチルは少し悩んでから話し出す。
「ルチルの実家は、孤児院をしてるのです。
そこでルチルは魔物の襲撃で親を亡くした子供たちを見てきたのです。
そんな悲しい思いをする子が1人でも居なくなるようにしたい。
だからルチルは、強い魔法使いになって人々を助けたいのです!」
その答えにソフィアは満足そうな笑みを浮かべる。
「ルチル、君はいつまでこの町にいるんだい?」
「明後日には出るつもりなのです。」
「私達は明日の朝出るから、ここで待ち合わせをしよう。
紹介状を書いてあげる。」
「い・・・いいのですか!?」
「もちろん、私の紹介ならユーリも無下にしないだろうからね。」
「あ・・・ありがとうございます!」
喜ぶルチルの他所に、レオンは少し不満げな顔をする。
「なんだよソフィー嬢もう町を出ちまうのか?」
「はい、この町には娘達のデビューのために来たので。」
「行先は決まってるんですか?」
「はい、温泉郷へ行こうかと思っています。」
「え?マジで?」
ソフィアの言葉に、アリサは嬉しそうに身を乗り出す。
「私も行くんだよ、温泉郷。」
「それは奇遇ですね。」
「この際だから一緒に行っちゃう?
私も明日出るし。」
「一緒に・・・ですか。」
ソフィアは働いている二人を見て考える。
今から遠い未来、自分が居なくなった世界で娘達が少しでも寂しくないように、
同じハイエルフであるアリサと関わらせるのはアリかもしれないと思った。
「そうですね、ぜひお願いします。」
「うん、短い間だけどよろしくね、ソフィーちゃん。」
アリサはソフィアに笑顔を向ける。
(温泉郷まで四人旅か・・・楽しくなりそうだ。)
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しばらく食事を楽しんだあと、ソフィアは2人のクエストが終わるのを待って一緒に宿に戻ってきた。
いつものように3人で風呂に入ったあと、話があるからと二人を読んで椅子替わりにベッドの上に座らせる。
「予定どうり明日から温泉郷に向かうんだけど、
成り行きでアリサさんっていう冒険者の人が同行することになったから。」
「アリサさん?」
「うん、二人と同じハイエルフの女性だよ。」
「あー、あの飲み比べて男の人2人を潰してた。」
「そう、あの人。」
「四人旅かー、楽しくなりそうだね!シーナ!」
「う・・・うん。」
頷きつつもセリカは少し緊張気味であった。
「あー、またシーナが人見知り発動してるー!」
「あんたが警戒し無さすぎなんだって!バカセリカ!」
過去に酷い目にあったのだ、シーナが緊張するのも当然と言えるだろう。
しかしそんなシーナにセリカは「大丈夫!」と自信ありげに言う。
「お母さんの友達が悪い人なわけないもん!
ねっ、お母さん。」
セリカの言葉に、ソフィアはクスリと笑う。
「うん、そうだね。」
ソフィアは続いてシーナに歩み寄る。
「シーナ、他人が怖いのはわかる。
だけどたまには私やセリカ意外と親交を深めるのもいいと思うんだ。」
「・・・私は。」
シーナは顔を上げてソフィアの目を見て話す。
「私は3人で・・・私とセリカと母さんの3人でずっと一緒に居られればそれでいい・・・。」
「それは・・・。」
ソフィアは口から出かけた言葉をグッとこらえる。
言わなければいけない、『人間』と『ハイエルフ』が共に暮らす上で避けては通れない寿命の差を。
しかし、この2人は受け止められるだろうか。
私の言葉でこの2人を傷つけてしまわないだろうか。
そう悩んだ結果ソフィアは、
「当たり前じゃないか。
これからも私達はずっと一緒だよ。」
嘘をついてしまった。
その嘘が、余計2人を傷つけてしまうと知っているのに。
「でもね、シーナ。
君達はこれからきっと初対面の人とパーティーを組むこともあるだろう。
その時の為に、ちゃんと人との関わり方を学んでおかないとね。」
「・・・うん・・・分かった。
頑張る。」
そう言ったシーナの頭をソフィアは優しく撫でる。
「温泉楽しみだね!シーナ!」
「・・・うん。」
ソフィアは仲睦まじい二人を見て、
嘘をついてしまった自分に嫌悪感を抱いていた。
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2人が眠るのを見届けたあと、ソフィアはルチルのために同じ勇者パーティーの仲間であり、友人のユーリ宛に紹介状を書いていた。
「ふぅ、これでよし。」
手紙を書き終わると、それを便箋に入れてナイトレイ家の家紋である竜胆の花が描かれた封蝋で蓋をする。
一仕事終えたとばかりに背伸びをしてから、手紙をしまって机のランプを消した。
そして自らも眠りにつくためにベッドに向かう。
そこでふと、隣のベッドで寝ている2人を見る。
2人はベッドの上で身を寄せ合い、手を繋いで眠っていた。
2人が寝ているベッドに腰掛けた。
(いつか私はこの子達を置いていくことになる。
きっと2人は悲しんで、塞ぎ込んでしまうだろう。)
年老いて、病気で、もしくは戦いの中で、
それが何時になるかは分からない。
だがしかし、それは決して避けられない未来なのだ。
(それでもこの子達ならいずれ立ち上がり、
2人で旅を続けるだろう。
その時、私との旅が2人の支えになれるようにと務めてきた。)
ソフィアは眠っているセリカの手に自らの手を重ねる。
するとセリカは眠りながらソフィアの手を握り嬉しそうに微笑む。
(私は・・・この子達になにか残せているのだろうか。)
自分にそう問いかけるが、答えは出なかった。
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翌日、ソフィアは娘二人を連れてギルドハウスに来ていた。
ルチルに手紙を渡し、アリサと落ち合うためである。
「ソフィーさーん!」
名前を呼んで手を振るルチルの傍に寄っていく。
「お待たせルチル。
アリサさんもお待たせしました。」
「ううん、私達も今来たところだから。」
ソフィアは懐から手紙を取り出すとルチルに渡す。
「はい、ルチル。
約束の紹介状。」
「ありがとうございます!」
「ユーリは王都の王立研究所にいると思うから、そこの門番に渡すといい。
ついでに言うと、彼女は甘いものが好きだからケーキを持っていけば喜ぶよ。」
「はい!ありがとうございます!」
元気に返事をするルチルだが、不安そうに顔を俯かせる。
「どうしたの?ルチル。」
「・・・賢者様の弟子になれるでしょうか。
ソフィーさんの紹介状があるとはいえ、もし追い返されたら・・・。」
「ルチル、それは、」
「大丈夫だよ。」
ルチルのそう言いきったのはソフィアではなくアリサであった。
「アリサさん?」
「あの子は確かにひねくれてるけど、
客人を話も聞かずに追い返したりするような子に育てたつもりは無いからね。」
「育てた?」
「どういうことですか?
アリサさん。」
ルチルだけではなく、ソフィアもキョトンとしてるのを見てアリサはイタズラが成功したように笑って、
「ユーリはね、私の娘なんだよ。」
そう言った。
「え・・・えええええええ!」
「アリサさんが賢者様のお母様!?」
「賢者かぁ。
あの子も偉くなったもんだねぇ。」
嬉しそうに言うアリサに対し、
ソフィアは焦りながら話す。
「どうして黙っていたんですか!?
言ってくれればちゃんとご挨拶しましたのに!」
「あんまり畏まられるのも嫌だからさぁ。
あと黙ってた方が面白そうだったし。」
「絶対ほとんど後者が理由ですよね!」
そんな風に話していると、セリカがソフィアに問いかける。
「お母さん、ユーリって誰?」
「私の友達で二人と同じハイエルフの魔法使いだよ。」
「賢者って呼ばれてるすごい魔法使いなのです!」
「へぇ・・・。
ってことはおばさんもすごい魔法使いなの!?」
「残念ながら娘ほど魔法は上手く使えないんだよね〜。
それと。」
アリサはセリカの前にしゃがんで頭に手を置く。
「おばさんじゃなくて、お姉さん、ね?」
「ハ・・・ハイ、ワカリマシタ。」
なぜだか凄まじい威圧感を放つアリサの笑顔に、
セリカはカタコトで答えるしかなかった。
「てか私は苗字名乗った時気付くと思ったよ。」
「すみません、
エルフで苗字を持っている方は珍しいので・・・。
それに、ユーリに苗字があるのも今日知りました。」
「へ?なんで?」
「それがその・・・。」
ソフィアは困ったように苦笑いを浮かべて言う。
「『ミステリアスなほうが魅力的だろう?』
だそうで。」
「我が娘ながら拗らせてんなぁ、あの子。
まぁとりあえず。」
アリサはルチルの方に手を置く。
「聞いての通り結構癖の強い子だから、
弟子になれたらなれたで色々大変だよ、ルチルちゃん。」
「え?」
もう片方の肩に、ソフィアが手を置く。
「それなりに覚悟しておいた方がいいよ、ルチル。」
「不安になってきたのです!」
そんな話をしていると。
「おーい!」
聞きなれた声に振り向くと、そこにはレオンとクロウが居た。
「あれ、二人来たの?
二日酔いで来れないと思ってたよ。」
「おう、いまもめちゃくちゃ頭いてぇよ。」
「それでも、仲間の出立っすからね。
ちゃんと見送らねぇと。」
「仲間?」
クロウの言葉に首を傾げるセリカにレオンが答える。
「おうよ、冒険者の間じゃあ、1度パーティを組んで酒酌み交わしゃあ仲間ってのがならわしなんだよ。」
「仲間か・・・私達にもいつかできるかな!お母さん!」
そう言って目を輝かせるセリカに、ソフィアは優しく微笑む。
「うん、セリカとシーナなら素敵な仲間を見つけられるよ。」
ソフィアの言葉にセリカは嬉しそうに笑った。
と、ここでクロウがソフィアの前に歩み寄った。
「ソフィアさん。」
「はい。」
ソフィアが返事をすると、クロウは真剣な面持ちで言う。
「俺、今度会った時はソフィアさんを守れるような男になりますだからその時は・・・。」
クロウは一度深呼吸をしてからソフィアの目を真っ直ぐ見て言葉を口にした。
「俺と、結婚してください!」
「謹んでお断りさせていただきます。」
「ああああああああああああああああ!!」
光の速さでフラれたクロウは膝から崩れ落ちて泣き叫ぶ。
「お兄さん泣いちゃった。」
「多分ガチで言ったんだろうなぁ、あれ。」
セリカとアリサに可哀想な目で見られているクロウの前に膝をつき、ソフィアは彼の手をよ両手で優しく握る。
「クロウさん、御気持ちに応えられずに申し訳ありません。
ですがあなたはとても勇敢で逞しく、頼りになる方です。
きっと私よりも貴方に相応しい女性が現れるはずですですから・・・。」
ソフィアは優しい笑顔をクロウに向ける。
「これからもお嫁さん探し、頑張ってくださいね。」
「・・・はい。」
アリサはソフィアの笑顔に骨抜きにされているクロウを呆れた様子でシーナとセリカと共に見ていた。
「ソフィーちゃん熟れてんなぁ。」
「旅をしてるとたまにこういうことあるからねぇ。」
「あー、モテそうだもんねぇソフィーちゃん。」
「何回か女の人にも告白されたことがある。」
「わお。」
続いてレオンもに声をかけてくる。
「ソフィア嬢、アリサ嬢。
実は2人に頼みがあってな。」
「なんでしょうか。」
「温泉郷に行く途中で小さな町があるんだが。
そこの町長が俺の知り合いでな。
今朝手紙が届いたんだが、最近その町の周囲の山で竜の群れが目撃されててな。」
「竜・・・ですか。」
竜とはいわゆるドラゴンのことで、魔物とは違い人間に敵意があるものと無いものがいるが、危険度でランク分けされている。
一部の竜は群れをなし、町屋村を襲うこともあるのだ。
「もしかしたら襲撃が起こるかもしれねぇってんで、住人も気が気じゃあねぇらしいんだ。
そこで悪いんだが、その町に寄って手を貸してやっちゃあくれねぇか。」
「私でよければ力になります。
アリサさんはどうですか? 」
「私も大丈夫だよ。」
「すまねぇなぁ、面倒かけて。」
「何言ってんの!」
アリサはソフィアの肩に腕を回す。
「私たち正義の味方の冒険者だよ。
困った人がいるなら助けなきゃ。
ね、ソフィーちゃん。」
「ふふ、そうですね。 」
#####
ソフィア達4人はレオン達と共に街のもんまで歩いていき、別れの挨拶を交わす。
「皆さんどうかお元気で、またいずれお会いしましょう。」
「ああ、ソフィー嬢達も元気でな。」
「いつでも連絡してきてください。
このクロウ!どこへでも駆けつけますから!」
「ソフィアさん!」
ルチルがソフィアに抱きついてくる。
「私、ソフィアさんのお陰で自信がつきました!
この御恩は一生忘れないのです。」
そう言って目に涙を浮かべるルチルの頭を優しく撫でる。
「ルチル、もう一度聞かせてくれるかい?
君がなぜ強い魔法使いになりたいかを。」
「ルチルは・・・。」
ルチルは涙を拭ってからソフィアの目を真っ直ぐに見て答える。
「強い魔法使いになって!人々を助けたいのです!」
その言葉にソフィアは微笑む。
「その気持ちを忘れなければ、
君は絶対いい魔法使いになれるよ。
私が保証する。」
「は・・・はい!」
そうルチルと言葉を交わしたのを最後に、ソフィア達は町を後にした。
残った3人は、ソフィア達の姿が見えなくなるまで見送っていた。
「いい子達だったね。」
「ええ、本当に。」
ソフィアとアリサはそう言って微笑みあった。
「さて。」
ソフィアは他の3人の方をむく。
「私達も行こうか、次の目的地、温泉郷へ。」
「うん、いくぞー!えいえいおー!」
「おー!」
「お・・・おー!」
元気な2人と照れながら声を挙げるシーナを連れて、
ソフィアは歩き出した。