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第3話白麗の章〜出会い〜

ハイエルフ=エルフのなかで1割の確率で産まれてくるとても希少な特殊個体。

その魔力値はエルフの日ではなく、

魔法だけでなく精霊術にも精通している。

エルフはみな若々しいながらも時間を掛けながら少しづつ老いていき2000年ほどで寿命を迎えるが、

ハイエルフは老いることはなく、寿命も存在しない。

生まれた子供がハイエルフかどうかは精霊石と呼ばれる特殊な宝石をかざし、それが光るかどうかで判別している。

また、片親がハイエルフでも、産まれてくる確率は同じである。


※前話のあとがきで一度書いたものを修正し再度掲載しました。

ダンジョンから出てルチルの魔法で服も体も綺麗にしてから、一同は町への帰路へ着く。


道中、男性陣はやや興奮気味にソフィアに話しかける。


「いやぁ!まさか伝説の英雄とパーティが組めるなんて思ってもみなかったぜ!」


「本当っすよ!ソフィアさんも人が悪いなぁ!言ってくれればいいのに。」


2人の言葉に、ソフィアは苦笑いを浮かべる。


「すみません、軽率に話してしまうと騒ぎになって旅の妨げになってしまうので・・・。」


「まぁ、そりゃそうだわな。

ソフィア・ナイトレイって言ったら革命の英雄、

まさに生ける伝説だもんなぁ。」


「俺も聞いたことあるぜ!

なんでも勇者より強いらしいじゃないですか!」


「る・・・ルチルは賢者様のお話が聞きたいのです!」


「え・・・えーっと・・・。」


3人の勢いにたじろいでいると。


バァンバァン!!


突如銃声が響き渡り、驚いて音の方をむくと、アリサが銃を空に向けており銃口からは煙が出ていた。


「はいはいそこまで!

ソフィーちゃんは静かに旅がしたいんだからあんまり騒ぎ立てないの!」


「す・・・すまん。」


「すみません。」


「ごめんなさいなのです・・・。」


反省する3人に、ソフィアは優しく話す。


「お気になさらないでください。

クエストの達成報告が終わってからなら食堂でお話ししませんか?」


「あ・・・あぁ!ぜひ頼む!」


「あんまり騒がないようにします!」


「なのです!」


3人の言葉に、ソフィアはクスクスと笑う。


「お気遣い、ありがとうございます。」


#####


ソフィアは達成報告を終えた3人とアリサを待っていた。


「やぁやぁ諸君、待たせたねぇ。」


そう言って手を振って現れたアリサの方を全員がむく。


「いや、別に待ってねぇぞ・・・ってアリサ嬢!

その腕輪!」


アリサの腕輪は先程までの金色ではなく、ソフィアと同じ白金色に輝いていた。


「えへへー、

アリサ・ニルバレン!プラチナ級に昇格いたしました!」


「おお!」


「そりゃめでてぇなぁ!」


「おめでとうございますなのです!アリサさん!」


「おめでとうございます。」


アリサの報告に、ソフィア達は拍手をしながら祝いの言葉をかけると、アリサは照れくさそうに頭を搔く。


「二つ名はなんにしたんですか?」


プラチナ級の冒険者は、昇格時に好きな2つ名を名乗ることが出来るのだ。


「ぬふふ〜、いいだろう。

教えてしんぜよう。」


アリサは腰の2丁の拳銃をホルスターから抜くと、

人差し指でくるくると回してからポーズを決めると、


「我が名はアリサ・ニルバレン!

『魔弾の射手』の名を冠するものなり!」


そういって、渾身のドヤ画をお披露した。


「何やってんだ。」


「せっかくだからかっこよくポーズ決めてみた。」


「ガキかよ。」


「鼻の穴1つにしてやろうか小僧。」


レオンに銃を向けるアリサをなだめてから、

4人は1階の酒場へ向かい歩いていく。


その道中で、アリサがソフィーに話しかける。


「そう言えばソフィーちゃんの二つ名って何?

やっぱり『白麗の剣聖』?」


「色々考えたんですが・・・『白騎士』にしました。

剣聖なんて自分には分不相応ですし、

その通り名は有名すぎて・・・騒ぎになったらあの子達を危険に晒すかもしれませんしね。」


「あの子達?」


事情を知らない3人が疑問に感じたところで、居酒屋に到着すると、


「いらっしゃいませー!」


「ま・・・ませー・・・。」


ウェイトレス姿の元気な少女と、

その隣で恥ずかしそうにする少女の2人が出迎えた。


その二人を見てソフィアは驚いた様子で、


「セリカ・・・シーナ・・・なにやってるの?」


そう言った。


#####


ソフィア達4人はセリカとシーナに案内されて席に着いた。


「それにしてもびっくりしたよ。

2人がここで働いてるなんて。」


「えへへー、

ドッキリ大成功!」


「牧場のスライム退治が早く終わったから、

他にもクエストないか見てたらこの店が店員を募集してたの。」


「なるほどね。

2人ともその制服よく似合ってるよ、すごく可愛い。」


「ありがとう!お母さん!」


「////」


素直に喜ぶセリカの隣で、シーナは恥ずかしそうに顔を赤くする。


「お母さん、その人達が今日のパーティーメンバー?」


「そうだよ。

2人とも挨拶して。」


「はーい!」


セリカが元気よく手を挙げる。


「はじめまして!セリカ・ナイトレイです。」


「し・・・シーナです。」


元気なセリカの隣で、シーナは人見知りしているのか、少し緊張気味であった。


「私はアリサだよ。

よろしくねセリカちゃん、シーナちゃん。」


「ルチルはルチルなのです!」


「俺はクロウ、よろしく。」


「俺はレオンだ。

よろしくな、お二人さん。

・・・それにしても。」


レオンは酒場の一通り見渡す。


「やけに客が多いと思ったら嬢ちゃんたちが引き寄せてたんだなぁ。」


「え?私達?」


セリカが首を傾げると、レオンに代わってルチルが答える。


「こんなに可愛いウエイトレスさんが居たらルチルも毎日通っちゃうのです。」


「そ・・・そうかなぁ////」


「////」


ルチルの言葉に照れる双子を見てクスクスと笑ってから言う。


「それじゃあ店員さん、注文を取って貰えるかな。」


「はい!何にしましょう!」


セリカがノリノリで返事をすると、我先にとアリサが手を挙げた。


「私は生エールと鶏の唐揚げ!」


「ルチルはリンゴジュースとカレーが食べたいのです。」


2人に続いてソフィアも注文しようとメニューに目を通す。


「私は・・・何にしようかなぁ・・・。」


悩んでいるソフィアにレオンが言う。


「ソフィー嬢、あんた酒はいける口か?」


「ええ、それなりにですが。」


「だったらワインがおすすめだぜ。

ここは何もねぇ田舎町だが、昔から酒は美味くてなぁ。

特にワインは絶品なんだ。」


「出たよ、レオンの旦那の我が町自慢。」


「んだとぉ、クロウ!」


ソフィアは二人の会話に小さく笑ってからもう一度メニューを見る。


「じゃあ私はワインと・・・サーロインステーキとサラダを貰おうかな。」


「んじゃあ俺もソフィー嬢と同じメニューで頼む。」


「俺もそれでいいよ。」


全員の注文を受けてからセリカが笑顔で返事をする。


「かしこまりました!少々お待ちください!」


そう言ってセリカはシーナを連れて厨房に歩いていった。


「それにしても、双子のハイエルフたぁ珍しいな。」


「おやおやレオンくん、私もハイエルフだけど?」


「確かにハイエルフは希少な存在だが、双子でハイエルフなんてそうそうねぇだろう。

ただでさえ確率低いのに双子だぜ?」


「確かに私も長く生きてるけど双子は聞いたことないなぁ。」


アリサとレオンの会話に「あの・・・」とルチルが申し訳なさそうに手を挙げて割りこむ。


「どうしてその貴重な双子ちゃんの母親替わりをソフィーさんがしてるのです?」


ルチルの言葉に、沈黙が流れた。


みんな心当たりはあるのだろうが、誰も口にしようとはしない。


「あの・・・皆さん?」


戸惑っているルチルを見て、レオンが口を開く。


「ルチル・・・それはなぁ。」


「レオンの旦那、ルチルちゃんはまだ子供だよ?」


「子供でも冒険者なんだ、知っておいた方がいいだろ。」


「でも・・・。」


「私が話します。」


ソフィアはそう言うと、ルチルに静かに話す。


「ルチル、私とあの子達が旅をしているのは、

所謂『エルフ狩り』のせいなんだよ。」


ソフィアは静かに話し出した。

2人の愛娘との出会いの物語を。


#####


6年前


石造りの建物が奴隷商人達のアジトだった。


そこにある牢屋の中には沢山のエルフ達が閉じ込められていた。


しかしそこに大人のエルフはおらず、幼い子供だけだった。


その中に部屋の隅で身を寄せ合う2人の姉妹がいた。


「ねぇ・・・セリカ。」


「どうしたの、シーナ。」


膝を抱えて怯えるシーナの隣でセリカは気丈に振舞っていた。


「大人達みんな連れていかれちゃったけど・・・殺されちゃったのかな。」


「・・・わかんないよ。」


「本で読んだことがあるの・・・エルフの内蔵は、麻薬の原料になるって・・・そのために殺されることがあるって・・・。」


「・・・シーナ?」


「もしかして私達も!」


「シーナ!」


怯えるシーナの体を、セリカは強く抱きしめる。


「大丈夫・・・大丈夫だから!

何があっても私が守るから・・・大丈夫・・・大丈夫・・・。」


自分に言い聞かせるようにいうセリカの震えている背中にシーナは手を回す。


「セリカ・・・。」


そうやって2人が抱き合っていると、牢屋のドアを開く音がする。


2人がビクッと脅えつつ見ると、二人の男が入ってきた。


「ったく、ボスも人使いが荒いよなぁ。

なんで俺らがこんなこと。」


「文句垂れてねぇでさっさと終わらすぞ。」


そう言うと男達は懐から宝石がついたネックレスを取り出すと、子供一人一人にあてがっていく。


そしてしばらくするとセリカのシーナの前に来る。


「こいつらで最後か。」


「ああ。」


男の一人がシーナに手を伸ばすと。


がぶっ!とセリカがその手に噛み付いた。


「いってぇ!このガキ!」


男はシーナを思い切り蹴飛ばす。


「がはっ!」


「セリカ!」


噛まれた男は倒れたセリカに近づくと、その体を何度も蹴る。


「この糞ガキが!舐めた真似しやがってゴラァ!」


「ぐっ!がはっ!」


「やめて!セリカが死んじゃう!」


もう一人の男がセリカを蹴っている男の肩を掴む。


「そこまでにしろ、本当に死んじまうぞ。

さっさと仕事を済ませるぞ。」


「チッ!」


男は舌打ちをし、セリカに唾を吐きかけて離れる。


「セリカ!」


セリカを心配して駆け寄るシーナを他所に男達はネックレス2人に向ける、するとネックレスが2つとも光りだした。


男達はニヤリと笑うとセリカとシーナの腕を掴んで牢屋の外へ連れ出す。


「オラ!こっちこい!」


「大人しくしやがれ!」


「いや!離して!」


男達は牢屋の鍵を閉めると、2人をどこかに連れていく。


「やめて!離せ!離せよばか!」


シーナは怯えているのか大人しくついてきているが、

セリカは激しく抵抗している。


「静かにしろクソガキ!」


「言っとくがお前らは運がいいんだぜ?

他のガキ共は金持ちの性奴隷よ。」


「うっさい!!大人たちをどこに連れてったんだ!」


「んなもん殺して、解体(バラ)したに決まってんだろ。」


それを聞いたセリカの顔が絶望に染まる。


「全員・・・殺したの?」


「ああ。

お前らエルフの内蔵は高く売れるからな、

奴隷売るより稼げんだよ。

そういやさっきの奴は刻まれながらずっと叫んでたなぁ。

助けてください、殺さないでくださいっって。」


「あー、ありゃあ傑作だった。」


セリカは膝から崩れ落ち涙を流す。


「おい、止まってんじゃねえよ。

手間取ると俺らがボスにドヤされんだよ。」


「・・・死んじゃえ。」


セリカは涙を流しながら男たちを睨む。


「お前ら全員!死んで地獄に落ちろ!」


「はっ!そう言うなよ。

言ったろ・・・お前らは運がいい。」


抵抗する気力をなくしたセリカ達はそのままある部屋の前まで連れていかれる。


「!!!!」


扉を開け中に入ると、床には夥しいほどの血の跡が残っており。


部屋の隅には積まれている何かの上からボロボロの布が被せられていた。


布の下からは殺されたエルフのものであろう手がはみ出ていた。


天井からは手枷のついた鎖がぶら下がっており、その傍には血塗れでナイフを握っている男がいた。


さらに周りには食事の乗ったテーブルが幾つもあり、

それを複数の男達が凶悪な笑みを浮かべながら囲んでいた。


そう、まるで見世物を楽しみに待つように。


「ガキのエルフの(はらわた)は普通なら麻薬(やく)作るのには使い物にならねぇが・・・ハイエルフなら別だ。

普通と比べてさらに高値で売れる・・・儲けもんだぜ。」


「い・・・いや・・・。」


目の前の光景にシーナの顔が絶望に染る。


「あれだけ居て二人しかいなかったのかよ・・・で、どっちから解体(バラ)す?」


「そっちのガキからだ。」


男が指名すると、シーナがナイフ男の所に連れていかれる!


「いや・・・いやあああああ!」


「やめて!殺すなら私にして!妹に手を出すな!」


シーナに駆け寄ろうとするセリカだが、地面に押さえつけられて身動きを封じられる。


「大人しくしやがれ。

さっき噛み付かれた礼だ、妹が刻まれるのを見せてから殺してやる。」


手足に枷がはめられ、シーナは宙吊りにされる。


「やめてぇ!殺さないでぇ!」


「シーナ!シーナァァ!」


泣き叫ぶシーナの首筋に、ナイフが近づいていく。


「誰か・・・神様・・・。」


そう口にした時だった。


バァン!


部屋のドアが乱暴に蹴破られ、破壊された扉はセリカを捕らえている男に飛んでいき、直撃する。


「がぁ!?」


突然の事に、その場にいる全員が扉の方を向く。


「・・・」


そこには一人の女性が立っていた。


白いマント付の軽装を身にまとい、腰には刀を差していた。


色白の肌に、雪のように白く艶のある美しいショートヘアーの髪。


赤と青の宝石のような瞳を持った美しいその人物は

周りを見渡す。


乱雑に積まれた遺体、


血塗れの部屋、


そして・・・。


「!!!!」


手足に枷を嵌められ、宙吊りにされているシーナ。


それを見た瞬間、少女──ソフィア・ナイトレイ表情が怒りに満ちたものに変わる。


「な・・・なんだおまe」


倒れていた男が立ち上がり、声を上げたその時には、

ソフィアは既に拘束されているシーナの側まで一瞬で移動していた。


そして、


ブシャア!


背後の男達は体から血を吹き出し倒れ二度と動くことは無かった。


本当に一瞬、瞬きのような速さでソフィアは男二人の体を斬り裂いたのだ。


あまりの出来事に周りの他の賊が硬直している中、

ソフィアはシーナの手枷についている鎖を切って彼女を地面に下ろすと。


手足の枷を斬って拘束を解く。


「シーナ!」


セリカがシーナに急いで駆け寄る。


「ごめん・・・シーナ・・・何も出来なくてごめん・・・ごめん・・・。」


「・・・セリカ・・・ぐすっ。」


ソフィアは抱き合う姉妹に背中を向けて、二人を守るように立つ。


「あ・・・あの!」


その背中に声をかけようとしたセリカの言葉を遮るように、

ソフィアは言う。


「少しそこで待っていなさい。

・・・すぐに終わる。」


そこからは、あまりにも一方的だった。


襲ってくる敵を次々に斬り伏せていく。


敵も負けじと刀を振るうがソフィアにかすり傷一つおわせることが出来ずに血溜まりに沈んでいく。


「すごい・・・」


気がつけば、20人近く居た商人達は残り1人になっていた。


「ひぃ!お・・・お助け。」


残った男はその光景に恐れおののき、壁を背に座り込んでしまった。


ソフィアは刀の滴っている刀を持って、男にゆっくり近づいていく。


「お前がこの隊商のリーダーだな。」


「ひぃ・・・たのむ!殺さないでくれぇ!」


「黙れ!」


男の命乞いに、ソフィアの怒号が響く。


「貴様に命乞いをする権利などない。

貴様に分かるか・・・理不尽に命を奪われる者の恐怖が!痛みが!!絶望が!お前に分かるか!」


ソフィアは刀で布に覆われた死体を指した。


「あそこに積まれている死体の一つ一つに、物語があった!歩むはずだった未来があった!叶えたい夢があった!愛する者がいた!

それを貴様らは奪い去った!己の私利私欲のために!」


ソフィアの怒号が激しさを増す。


「貴様らが捉えた子供たちは皆、今日のことを思い出し、貴様らに殺された親のことを想って恐怖と悲しみで枕を濡らすことだろう!

一生立ち直れない子もいるかもしれない!

それだけの傷を心に負わせたんだ!

そんな貴様らに・・・。」


ソフィアは顔を上げ怒りの篭った瞳を男に向ける。


「命乞いをする権利など・・・あるものか!」


その瞳からは、涙が流れていた。


ソフィアは刀を構え、男に近づいていく。


「ひぃ!」


そして間合いを詰めると、静かに刀を振るった。


だが刀は男の首をはねることはなく、両目をいっぺんに斬り裂いて、男から視力を奪う。


「ぎゃあああああああああああ!」


ソフィアは刀についた血をふるい落し、鞘に収める。


「貴様は生かして捕らえろというのが依頼主からの指示だ。

死刑が執行されるまでの間、暗闇の中で己の行いを後悔するんだな。」


そう言ってソフィアはセリカたちの方を振り返る。


(ビクッ!)


顔や服には男達の返り血がかかっており、その光景にセリカは一瞬脅えてしまう。


ソフィアの表情は怒りに満ちたものだったが、

セリカと目が合うと眉が下がり、悲しそうに目を伏せてから2人に駆け寄り。


「!!!!」


2人の小さな体を抱きしめた。


「遅くなってごめん・・・怖かったろう・・・辛かったろう・・・。」


ソフィアの瞳からは、涙がとめどなく溢れていた。


「もう大丈夫・・・大丈夫だからね・・・。」


(ああ、そうか・・・この人は・・・。)


(会って間もない私たちの為に・・・本気で泣ける人なんだ。)


その優しさと、温かさに包まれ。


「うぅ・・・ぐすっ・・・」


「うぅ・・・うわあああああああん!」


安心感から二人は大声で泣いたのであった。


#####


近隣にある町の領主の館。


そこに助けられた子供達が集められ、医者の診療を受けていた。


今回の一連の出来事は、ギルドハウスを通さずこの街の領主から直接受けたものであった。


「この度は誠にありがとうございました、ソフィア様」


領主の男性がソフィアに深々と頭を下げる。


「冒険者として・・・いえ、騎士として当然のことをしたまでです。

・・・大人のエルフは1人も助けられませんでしたしね。」


「ソフィア様のせいではございません。

情報収集に時間をかけなければ犠牲は少なかったはずですから。

・・・それにしても臓器売買とは、酷いことをしますな。」


「今回の報酬ですが、全額孤児院に寄付したいと思います。

子供達のために使ってあげてください。」


「かしこまりました。」


ふとソフィアが周りを見ると、助けた双子の姉妹、

セリカとシーナが治療を受けていた。


「あの・・・孤児院に引き取られた子供達は・・・やはり里親を探すんですか?」


「ええ、そうなりますね。」


「あの子達も?」


「ああ、あの双子ですか。

もちろん探すことになるでしょうが・・・二人が同じ人に引き取られるかは分かりませんな。

子育てはただでさえ大変ですから。」


「そう・・・ですか。」


ソフィアはしばらく遠目で見ていたが何かを決意したかのように治療が終わったのを見計らって2人の方へ歩いていく。


「あ!お姉さんだ!」


ソフィアに気づいたセリカが駆け寄って抱きついてきた。


「もう大丈夫なのかい?」


「うん!もうすっかり元気だよ!」


「あ・・・あの・・・。」


ソフィアの足元に、シーナが近づいて話しかける。


「た・・・助けてくれて、ありがとうございました。」


「・・・うん。」


ソフィアはシーナの頭を優しく撫でる。


「私も、君たちを助けられてよかった。」


「・・・えへへ。」


頭を撫でられたシーナは嬉しそうに笑う。


「それでね、実は2人と話がしたいんだ。」


「話?」


「うん。」


ソフィアは近くの椅子に腰掛け、2人と目線を合わせて話す。


「これから2人は孤児院に引き取られて、里親を探すことになるんだ。」


「里親って・・・ママとは別の・・・お母さんってこと?」


「うん、そうなるね。」


「上手くやって行けるかな・・・私達。」


不安そうに顔を伏せるシーナを安心させるように、

ソフィアは微笑む。


「里親はしっかりと審査の上で選ばれるだろうから問題ないと思う・・・でもね。

二人が同じ人に引き取られるのは・・・難しいかもしれない。」


「そんな・・・。」


「シーナと離れ離れなんて嫌だ!」


セリカはそう言ってシーナの手を握る。


「うん、私も君達二人が離れ離れになるのは悲しいことだと思う。

・・・そこでなんだけど。」


ソフィアは、2人の目を真っ直ぐに見て言う。


「私と一緒に来ないかい?」


「「え?」」


ソフィアの提案に、2人は驚いた。


「私は旅をしてるから、楽な暮らしはさせてあげられないだろう。

それでも、二人一緒にいることは出来る。

もちろん何かあれば私が全力で守る。

・・・どうかな。」


「・・・どうして。」


シーナが疑問に思ったことを口にする。


「どうして、私達にそこまでしてくれるんですか?」


その質問に、ソフィアは頬をかいて照れくさそうに言う。


「私の友達に君達と同じハイエルフがいてね、

他人事とは思えないんだよ。

それと・・・。」


ソフィアは2人に微笑んで答える。


「私が、そうしたいって思ったから・・・かな。」


ソフィアの言葉に少しの沈黙が流れてから、セリカが口を開く。


「私・・・お姉さんがいい。

シーナと離れるのも嫌だけど・・・一緒にいるならお姉さんがいい!」


「私もです。」


「うん、分かった。

君たちの親代わりのなれるように努力するよ。」


そう言ってソフィアは2人に手を伸ばす。


「私はソフィア、ソフィア・ナイトレイ。」


「私はセリカ!」


「シーナ・・・です。」


「うん、これからよろしくね。

セリカ、シーナ。」


こうして人間とハイエルフ、3人の不思議な親子が生まれたのであった。


#####


「そんなことがあったのか・・・。」


ソフィアの話を聞いてレオンはそう言って顔を伏せる。


「エルフ狩りなんて・・・そんなことがこの世にあるなんて知らなかったのです。」


「まぁ、未だにやってるのはごく稀だからね。

だからといってなくなった訳じゃない・・・だから。」


ソフィアは真剣な眼差しをルチルに向ける。


「君がこれから冒険者として活動する時に、

エルフ狩りだけじゃない、理不尽な目に合わされてる人達がいたら、助けてあげて欲しい。」


「勿論なのです!」


ルチルが即答すると、ソフィアは満足そうに微笑んだ。


「でもあの2人、そんなことがあったなんて思えねぇくらい元気だな。」


「ええ、あの二人は支え合って生きてきましたから。

その成果でしょうね。」


「それだけじゃないと思うよ。」


アリサに指摘され、ソフィアは彼女の方を向く。


「あの子達が元気になれたのはね、ソフィーちゃんが居たからだよ」


「そう・・・ですかね。」


「そうだよ。

だってほら。」


アリサに促され、ソフィアはクエスト中の2人を見る。


するとそれに気づいたセリカは元気に手を振り、

シーナも照れながら静かに手を振った。


「笑ってるでしょ。

あの子達。」


「・・・はい、そうですね。」


アリサの言葉にソフィアは嬉しそうに笑らった。

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