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第1話白麗の章

緑豊かな草原を1台の馬車が走っていた。

荷台には数人の乗客が乗っており、皆が同じ町に向かっていた。


その中で、一際他の乗客の目を集めている3人組がいた。


1人は20代前半の女性だった。


160cmほどの身長に色白の肌、雪のように白く美しい艶のある短い髪。


顔立ちはとても整っており、少し垂れた優しげな両目は宝石のように美しい赤と青の瞳をしていた。


羽織っているローブの下の衣服には胸と腕、足から膝にかけて部分的に鎧をつけており、腰には鞘に収められた太刀を差していた。


そんな彼女の傍で2人の少女が眠っていた。


1人は女性の膝を枕に、もう1人は肩に頭を預けて熟睡していた。


2人の姿はとてもよく似ていた。


年齢は10代前半程で、金髪の髪にとがった耳、

まだ幼いが精巧な人形のように整った顔立ちをしているのがわかる。


どうやら双子のようだ。


2人とも軽装の上に女性と同じように鎧をつけており。


腰にはやはり太刀を差していた。


女性は自身の膝枕で寝ている少女の頭を愛おしそうに微笑みながら優しく撫でている。


「可愛らしいお子さん達ですね。」


ふと、彼女の目の前にいる女性が声をかけてきた。


女性は腕に赤ん坊を抱いており、隣には夫と思われる男性もいた。


白髪の女性は笑顔で返事を返す。


「ありがとうございます。」


「急に話しかけてごめんなさい。

とても素敵な親子でしたからつい。」


「いいんですよ、よくある事ですから。

そちらはご家族でお出かけですか。」


「はい、子供も2歳になってある程度落ち着いてきたからって、夫が温泉に連れていってくれたんです。」


「そうなんですか、素敵な旦那さんですね。」


白髪の女性がそう言うと、

妻の隣で夫は照れくさそうに笑う。


「いやぁ、ははは。

自分には勿体ない妻ですから、

これぐらいの甲斐性みせないと俺が捨てられそうで。」


「も・・・もう、貴方ったら////」


夫婦の会話を、白髪の女性は微笑ましそうに聞いていた。


「それに・・・子供にも町の外を見せてあげたいですからね。

・・・子供は宝ですから。」


父親がそう言って我が子の頭を撫でると、

白髪の女性は膝の上に視線を落とす。


「はい・・・その通りですね。」


そう言って、再び少女の頭を撫でるのであった。


#####


町に着くと、白髪の女性は双子を連れて荷馬車を下りる。


すると双子の片割れが妙にソワソワしていた。


その様子を見てもう一人の少女が冷めた目で言う。


「セリカ・・・うるさい。」


「全然喋ってませんけど!?」


「動きがうるさい。

ソワソワしすぎ。」


「だ・・・だってさシーナ!

私たち冒険者デビューするんだよ!?

今日、この街で!」


「わかったから落ち着きなよ。

そう慌てることじゃないでしょうに。

私達は今までそのために特訓してきたんだから。」


セリカとシーナ、お互いの名前をそう呼んだ双子に、

女性は笑顔を向けて言う。


「そんなこと言ってるけど、

シーナも昨日セリカが寝たあとなかなか寝付けてなかったでしょ?」


「ちょっ!母さん!」


「なーんだ、シーナも私と変わんないじゃん。」


「うっさい、馬鹿セリカ!」


「なにをー!

馬鹿って言った方が馬鹿なんだぞー! 」


女性は、微笑ましそうに2人を見つめて言う。


「2人とも、あまり街中で騒いだらみっともないよ。」


「「え?」」


周りを見ると、大人たちが微笑ましそうに二人を見ていた。


2人は照れくさそうに顔を背ける。


「とりあえず2人とも、宿をとる前にギルドで冒険者登録だけ済ませちゃおうか。」


女性はそう言うと、双子を連れて歩き出す。


しばらくすると3階建ての大きな建物に着いた。


中は大きな食堂になっており、

普通の人間や頭に犬や猫の耳が生えた者、

翼が生えた者など様々な種族が、個人で食事をとっていたり仲間達と卓を囲んで談笑をしたりと、

色とりどりの様相である。


「なんかどこの町でもギルドの食堂ってこんな感じだよね。」


「酒臭い。」


そういった双子の傍で、女性も食堂の光景を見て小さく笑う。


「そうだね。

でも、今日2人が用事があるのはこっちだよ。」


そう言って女性は2階へと階段を昇っていく。


2階も様々な種族で賑わってはいるが、1回に比べると内装は質素なものだった。


壁際にはいくつもの受付カウンターが設けられ、職員が客の対応をしていた。


女性は双子を連れて空いている受付に向かうと、そこの職員に声をかける。


「すいません、冒険者の登録をしたいんですけど。」


「承りました本日登録はお一人でよろしいですか?」


「いえ、私じゃなくて・・・。」


そう言って女性は双子を前に押し出すと、

セリカがシーナの手を引いて元気に手を上げる。


「私達です!」


「セリカ・・・声でかい・・・。」


「はぁ・・・なるほど。」


職員は困ったように眉を顰める。


「失礼ですがお二人共、年齢はおいくつですか?」


「12歳です!」


「同じく。」


「12歳・・・ですか。

申し訳ありませんが、15歳以下の方が冒険者登録するにはゴールド(クラス)以上の冒険者様の推薦状と推薦者様のご同行が必要となりますが・・・。」


「あぁ、それなら・・・。」


そう言って女性は懐から手紙を取りだした。

その手紙をプラチナ製の腕輪をつけているに右手で持って、その腕輪が受付に見えるように渡す。


「これでいいですかね。」


「あ、プラチナ級の冒険者様でしたか。

それなら問題ございません。

では、推薦状を拝見致します。」


職員は手紙に書かれている差出人の名前を見る


「ソフィア・ナイトレイ様・・・って、えっ!?」


書かれていた名前をみて、職員が顔を上げると、

女性・・・ソフィアは口元に人差し指を当てていた。


「しーっ、騒ぎになったら大変ですから。」


「そ・・・そうですね、失礼しました。」


職員はコホンと咳払いをして、書類をセリカとシーナに渡す。


「それではお二人とも、この書類に必要事項の記入をお願いします。」


2人は渡された書類に、名前、年齢、種族名を書いた。


そして最後に、推薦人の欄にソフィアがサインをしてその紙を職員に提出する。


「書けました!」


「拝見致します。」


職員が書類に目を通す。


「セリカ・ナイトレイ様、シーナ・ナイトレイ様。

お二人共年齢は12歳、種族はハイエルフ。

推薦人はソフィア・ナイトレイ様。

以上でお間違いは無いですか?」


「「はい!」」


セリカとシーナが声を揃えて返事をする。


「御協力ありがとうございます。

少々お待ちください。」


職員は席を立ち、受付の奥へ行くと、しばらくし小さな台の上に腕輪を2個載せて戻ってきた。


「お待たせしました。

それでは腕輪の説明をさせていただきます。」


そう言って、職員は語り出す。


「この腕輪には使用者のクエスト遂行時の行動を記録する魔法がかけられています。

クエストの達成後、この腕輪をつけた腕で・・・。」


職員は机の下から水晶玉を取りだした。


「こちらの水晶玉に触れていただくことでクエスト達成となります。

なので、クエストを遂行する際ははこの腕輪を必ず装備するようにしてください。

腕輪を付けずにクエストを遂行しても、達成とは認められません。」


職員の説明にシーナが質問をする。

「クエスト中に壊れちゃったらどうするんですか?」


「ご安心ください、この腕輪はオリハルコンで出来ています。

そうそう壊れることはございます。

もし壊れてもギルドに持ち込んでいただければ修理させていただきます。」


そう説明して職員はさらに言葉を続ける。


「さらに、クエストを遂行していき、経験を積むことで腕輪の色が変化していきます。

腕輪の色は現在の(アイアン)から4段階、(ブロンズ)(シルバー)(ゴールド)白金(プラチナ)に変化していきます。

腕輪の色はそのまま冒険者様の等級となります。

等級によって受けられるクエストの難易度も変わってきますのでお気をつけください。

説明は以上になります。

何かご不明な点などはございますか?」


「私は大丈夫です!

シーナは?」


「私も大丈夫・・・メモってるし。」


「それでは最後に腕輪を嵌めて、その腕でこの水晶に触れていただくと登録は完了になります。」


セリカとシーナは腕輪を右腕に嵌めて2人で水晶に触れると、腕輪に刻まれている幾何学模様が数秒間淡い光を放った。


「これで登録は完了です。

お疲れ様でした。」


受付から離れたあと、セリカは腕に装着した腕輪をまじまじと見つめる。


「これで私達も冒険者・・・お母さんと同じなんだね!」


「フフ、そうだね。」


「・・・」


嬉しそうにするセリカとは対照的にシーナは無言で腕輪を見つめていた。


「どうしたの?シーナ。」


「いや・・・その・・・ちょっと緊張しちゃって。

・・・ねぇ、母さん。」


「ん?なに?」


「初めてのクエスト・・・やっぱり私達は2人だけじゃないとダメかな?」


「うーん・・・」


ソフィアは困ったように眉を下げて頬を書く。


「ついていってあげたいけど・・・私は私で旅の資金を稼がなきゃだからね・・・。」


「そっか・・・そうだよね・・・。」


不安そうにするシーナを見て、やはり一緒について行こうか考えていると。


「大丈夫だよシーナ!」


セリカかシーナに駆け寄って、彼女の手を両手で優しく握る。


「私もいるから大丈夫だよ!

2人ならなんだって怖くない!でしょ?」


セリカの言葉に、シーナは自然と笑みを浮かべていた。。


「・・・うん、そうだね、セリカ。」


シーナが返事をすると、セリカは満面の笑みを浮かべる。


その様子を見て、安心したソフィアは2人の様子を微笑んでみていた。


「それじゃあ2人とも、宿をとって荷物を置きにいこうか。」


3人は宿が決まると、荷物を置いて再びギルドハウスに戻ってきた。


「とりあえず今日のうちに明日の分のクエストを受注しようか。」


「えー!今日はクエストできないのー!?」


「もう夕方だからね。

一部の魔物が活発化する夜間のクエストはシルバー級から上のものしかないんだよ。」


「ぶーっ。」


「セリカ、わがまま言わないの。」


頬を膨らませるセリカをシーナは軽く叱りつける。


「2人とも、クエストの選び方は分かる?」


「分かる!」


「母さんの傍でいつも見てたから。」


「じゃあ別行動しても大丈夫かな。

お母さんも自分のクエスト選ばなきゃだから。」


「大丈夫だよ!」


「セリカのことはまかせて、母さん。」


「ちょっとシーナどういう意味!?」


2人は仲良くじゃれ合いながら歩いていく。


(6年か・・・あっという間だな。)


そんな2人を見て、ソフィアは思いを馳せていた。


始まりは6年前、奴隷商人に両親を殺され攫われていた2人を助け、引き取った。


その後この6年間、一緒に過ごす中で2人はソフィアを母として慕うようになり、ソフィアにとっても2人は大切な娘になっていった。


(いつの間にか大きくなっちゃって。)


2人ををしみじみとしながら見送ると、ソフィアは踵を返した。


(さて、私も自分の仕事(クエスト)探さなきゃ。)


ソフィアは壁にはられている掲示板まで歩いていく。


上位と梁に付けられた看板に書かれている掲示板には羊皮紙が数枚貼られており、シルバー級から上の様々なクエストの内容が書かれていた。


その一枚一枚を、ソフィアは顎に手を当て神妙な面持ちで見つめていた。


(初心者向けって聞いたからあの子たちのためにこの町を選んだけど・・・上位向けの依頼がほとんどないのは誤算だったなぁ・・・。

ていうかプラチナ向けの任務がひとつもない・・・。

平和なのはいいことだけどねぇ。)


諦めてプラチナより下のクラスのクエストを探していると、1枚の依頼が目に留まった。


そこには同じ内容が書かれた依頼書が束になって貼られていた。


(ギルド発注のレイドクエスト?

受注条件はシルバー級から。

報酬は1人頭金貨10枚か・・・。

内容は・・・ダンジョン攻略・・・ふむ・・・。)


ソフィアは少し悩んだあと、その依頼書を1枚剥がした。


(この小さな町でこれだけの報酬ってことは、緊急性の高いものかもしれない。

もしそうなら放っておけないからね。)


ソフィアは依頼書を受付に持っていくと先程と同じ職員が応対する。


「これ、お願いします。」


「はい、かしこまりました。」


職員が受け取った依頼書を水晶玉に翳すと、依頼書の裏に魔法陣が浮かび、光を放った。

その後にソフィアが腕輪をつけているに右手で水晶玉に触れ、腕輪が数秒光る。


「受注完了しました。

それでは明日の朝9時に3階の会議室におこしください。」


「分かりました。」


「あとその・・・。」


「?」


何か言いたげな相手に首を傾げていると、コソコソと話し出した。


「先程はお子様達の手前、恥ずかしくて言い出せなかったのですが・・・一筆サインを頂けないでしょうか。

(せがれ)がファンなんです。」


ソフィアはクスクスと笑うと、


「ええ、構いませんよ。」


そう言って差し出された色紙にサインをした後、

小躍りする職員を横目で見ながらその場を去っていった。


(さて、2人はどうしてるかな。)


「お母さーん。」


聞きなれた声に振り返ると、そこにはセリカと、

セリカに手を引かれて不機嫌そうに頬をふくらませているシーナがいた。


「・・・どうしたの?」


「シーナが拗ねちゃった。」


「拗ねちゃったかー。」


ソフィアはシーナの様子を見て困ったように頬をかくと、パンと両手を顔の前で合わせ2人に言う。


「とりあえず、ご飯にしようか。」


#####


「納得いかない。」


ギルドハウスの食堂で食事している間も、シーナは不機嫌なままだった。


「えっと・・・何があったの?」


「なんかね、アイアン級のクエストがシーナ的には気に入らないみたい。」


「あー、うん、だいたい察した。」


ソフィアの目の前で、シーナは不満は口にする。


「なにあのクエストの内容!

薬草とか食材集めとか迷子のペット探しはまだいいけどさぁ!

食堂のウェイトレスとか町のゴミ拾いって完全にバイトじゃん!

冒険者なんだから冒険させろよ!」


「あははは・・・」


そんなシーナに、ソフィアは苦笑いをうかべる。


「シーナってばワガママだなぁ。」


「ワガママにもなるっての!

せっかく冒険者になれたのに下働きみたいな以来ばっかりなんだよ!?

セリカは何も不満ないの?」


「え?なんで?

楽しそうじゃんウェイトレス。」


「あんたって奴は!!」


声を荒らげるシーナの話をセリカはのんびりと食事をとりながら聞いていた。


(姉妹でここまで性格に違いが出るとわねぇ。)


ソフィアは諭すようにシーナに話す。


「シーナの気持ちもわかるけど、

どんな冒険者でも必ず通る道だよ?」


「お母さんも?」


「もちろん。」


「でもお母さんって元々はえらい騎士なんでしょ?

それなら最初からゴールドとかじゃなかったの?」


「残念ながら、例え戦士や騎士、貴族や王様でも冒険者はみんなアイアンからだよ。」


「例外は?」


「存在しない。」


「むーっ。」


ソフィアの言葉にシーナは不機嫌そうにする。


「もう少し融通きかせてもいいと思うけどなぁ。」


「考えてもごらんよ。

金や権力を使って最初からプラチナ級の冒険者になったとして、そんなの早死にするのがオチだろう?」


「もしかして・・・それを防ぐために?」


「そのとおり。」


シーナの言葉にソフィアはうなづいえ答える。


「昔・・・とは言っても8年前だけど、まだ今のシステムが確立するまではそういう人間が多くてさ。

死者が絶えなかったんだよ。

それで革命(・・)のあと、今の腕輪のシステムが導入されたんだよ。

冒険者になりたいなら全てを捨ててゼロから始めろっていう感じでね。

危険なのは今も変わらないけど、少しでも生存率は上げないとだからね。」


「へー。」


「完全に実力がものをいうってことかぁ。」


「そういう事だね、

だからもっといいクエストを受けたいなら地道に頑張ってランクを上げなきゃだよ、シーナ。」


「うん、わかった。」


その返事に満足したのか、ソフィアはシーナに優しく微笑んだ。


#####


「ふっー、お腹いっぱい!」


「セリカ、はしたない。」


食事を終え、あとは宿に戻ろうとした時、


「待って、2人とも。」


ソフィアが2人を呼び止めた。


「どうしたの?母さん。」


「うん、ちょっと話したいことがあってね。」


そう言われて2人は席に座り直す。


「2人は明日初めてのクエストをするわけだけど、

その前に2つだけお母さんと約束して欲しい。」


「約束?」


セリカが首を傾げると、ソフィアは笑顔のまま話す。


「約束と言うより、冒険者としての心構えみたいなものかな。」


「心構え?」


「うん。」


ソフィアは頷いてから人差し指を立てる。


「まず1つ、無茶はしない。

危なくなったら逃げること。

2つ、油断しない。

自分の実力に胡座をかいて慢心しないこと。

守れる?」


「うん!任せて!」


「母さんとの約束だもん、絶対守るよ。」


2人の返事にソフィアは満足気に頷く。


「よし、じゃあ宿に戻ってお風呂に入ろうか。

明日は私も早いしね。」


「私達も明日に備えなきゃだねシーナ!」


「私達のクエスト、牧場のスライム駆除だけど。」


3人は手を繋いで宿に戻って行った。


#####


ホテル客室浴場。


「オリャオリャオリャー!」


「あははは!

くすぐったいよセリカ!」


お互いの体を洗い合う2人の姿を、ソフィアは湯船に漬かりながら見つめていた。


(本当に大きくなったなぁ。)


この6年間共に過ごしてきたソフィアにとって、2人の成長を感じられるのはとても嬉しいことだ。


(この分じゃあ大人になるまであっという間だなぁ。)


しかしそれは、避けられぬ別れに少しづつ近づいて来ていることを示していた。


ハイエルフは20歳頃までは人間と同じように成長するがそこからは老いることは無い。


それどころか、普通のエルフとは違いハイエルフには寿命がない。


それ故に彼女達は生きている限り悲しい別れを何度も経験することになる。


そしてそこに、人間である自分がいてやることは出来ない。


(2人が悲しまないために、生きてる間に私が出来ることはなんだろう。)


そんなことを考えていると、


「いやっほー!」


勢いよく湯船にセリカが飛び込んできて思いっきり水しぶきを浴びた。


「もう、セリカはしゃぎすぎ。」


その様子をシーナは呆れたように見ていた。


ソフィアは顔に着いた水滴を手で拭う。


「セリカー?

お風呂に飛び込んだら危ないでしょー?」


「えへへー、ごめんなさーい。」


「全然反省してないでしょー!」


ソフィアはセリカを捕まえて体をくすぐった。


「あはははは!くすぐったいよお母さん!」


「おりゃおりゃー!お仕置だー!」


「あはははは!」


2人のために何ができるか分からない。


ただ、今はこの限られた時間を大事にしようとソフィアは思うのだった。


#####


翌日、装備を整えた3人はギルドハウスにいた。


「それじゃあお母さん行ってくるから。」


「う・・・うん」


「・・・いってらっしゃい。」


そういった2人は緊張した面持ちで俯いていた。


やはり緊張しているのか微かに手も震えていた。


(まったく・・・しょうがないなぁ。)


ソフィアは2人の元へ歩みよると、


「セリカ、シーナ。」


「なに?母さん・・・ってうわ!」


「!!」


2人の体を優しく抱きしめた。


「いってらっしゃい。

帰ってきたらお話いっぱい聞かせてね。」


そう優しく語りかけると、2人は安心したようにソフィアの体を抱き返す。


「うん、行ってきます。」


「行ってきます、母さん。」


最後にソフィアが頭を優しく撫でると、2人は共に歩いていった。


「頑張れ、2人とも。」


小さくなって行く2つの背中に、

ソフィアは優しく呟いた。

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