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すらいむ殺人事件

作者: あぶ

スライム殺人事件

ある晩のことであるが、この日、あるこじゃれた一軒のバーに二つのあまりふさわしくない足音が近づいた。その足音の主は、そのこじゃれたバーの中に足音を立てずに入っていった。

扉は、その見た目通り年季が入っており、開けるとぎいという音がその静かな店内に響き渡った。中には4人程度の先客がいた。カウンターの席には遠く離れて二人が座っていた。

一人は毛むくじゃらの男でもう一人は、まだ二十歳もいかないような見た目をしたかわいらしい少女だった。男の方は何やらそわそわしていたが、女の方はうとうととしており、

自分たちが入ってきたことには気づいていないようだった。そして、残りの二人はというと、テーブル席の方に座っており、そちらの方を向くと、あちらもこちらのことを気に

していたようで、目が合った。一人は、まだ大人になったばかりだというような様相をした青年で、もう一人は目つきが悪い猫背な男だった。別ににらまれてはいないのだろうが

、その男の向ける視線の怖さに少し身震いしたが、隣にいた年を取った同行者が方に手をまわし、大丈夫というようにポンポンと肩を叩いた。そして、一呼吸置くと、同行者は

ゆっくりとバーの店主の方に向かって歩みだした。僕もおいて行かれまいと思い、その後ろについて行った。そして、空いていたカウンターの席に腰かけると、まるでこの店の

常連でもあるかのようにバーのマスターを呼んだ。マスターが近くに来ると、同行者はあえてこの部屋にいる人全員に聞こえるくらいの声で話し始めた。

「この近くで殺人事件があったのですが、聞き取り調査の方をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

その言葉を聞いて、一番驚きを隠せない様子を見せたのは、今、いくつか隣の席に座っていた毛むくじゃらな男だった。二人組の男たちもその話を聞いて、一瞬にして酔いもさめたようで、

二、三言葉を交わした後、静かに聞き耳を立て始めた。幼い少女はうとうとしたままだった。

同行者の男は、今度はそのバーに来ていたお客たちの方を向いて話をつづけた。

「お話、聞こえていたと思いますが、みなさん、少しお話を聞かせていただくことはできますでしょうか?」

少しの静寂ののち、二人組の男の内の目つきの悪い方が、声をあげた。

「ということは、私たちの内の誰かが、その犯人だと疑われているということなのでしょうか?」

思っていたよりも、丁寧な言葉遣いだったので、少しおかしかった。

「いいえ、ただここにいるうちの誰かが、その殺人事件に関することの詳細を知っておられるのではないかという手掛かりがありましたので、こうしてお話をさせていただいているのです。」

「手がかりとはどういう」

「はい、それでは詳しい話の方をさせていただきたいと思います。」

店内もそこまで大きいわけではないので、このまま話を続けることにしたようだ。

「まず、今回の事件の被害者についてですが、被害者はメタルスライムです。」

「メタルスライムですか?」

「はい、3年前のりゅうおう条約以降、善良なモンスターの無差別殺人が禁止になったのは皆さんもご存じの事ではあると思いますが、今回、戦いを好まないことで有名な

メタルスライムさんの死体が近くの道で発見されました。そして、その場所からこのバーまで道がぬかるんでいたため、足跡の方が残っておりました。そのため、もしかしたら

その方が、殺害の現場を見たかもしれないということで、こちらで聞き込みをさせていただこうと思ったのです。」

そして、僕自身も、りゅうおう条約によって、活躍ができるようになっていた。人間と話をすることが出来るモンスターは珍しいので、そういったモンスターは、様々な

場所で活躍していた。

そして、そういった輩を嫌う勢力があるのもよく知っていた。

そういった輩をたくさん殺して、指名手配になっているものも多くいるのだと、僕は知っていたが、そういったのは少数派なので、僕には関係ないと思っていた。

「もしかしたら、その人が犯人かもしれないということですね。」という、目つきの悪い男のセリフに、同行者の刑事は、話が早くて助かるといったように静かに頷いた。

そして刑事は、もう一度口を開いた。

「それでは、一人一人に事件に関する聞き込みの方をさせていただきたいので、そのまま席の方に座ってお待ちいただけますでしょうか。」


[バーのマスターの話]

「いや、こんなことになってしまい、申し訳ありませんね。ただ、普通に営業をしていただけでしょうに。」

「いえいえ、わたくしにできることなら協力させていただきますので、何なりとお聞きください。」

マスターの物腰は低かったが、少し、こんなものをやられたら迷惑なので、早く終わらせろというようなそんな威圧感が感じられた。

「それでは早速質問をさせていただきたいのですが、本日は、こちらは何時ごろから開けておられるのですか?」

「そうですね、基本的に当店は、夜の営業を主としておりますので、毎日開けるのは午後の7時ごろですかね。本日もそのくらいの時間に店を開けました。」

「そうでしたか、それでは、今回のお客様に関してですが、お客様の中で常連のお客様はおられますか?また、逆に本日が初めてのお客様なんかもおられましたら教えていただきたいのですが。」

「常連のお客様といえば、あの女の子一人だけですかね。結構最近は毎日のようにこの時間に来て、閉店時刻まであそこでああやって眠っておられますね。」

「そうでしたか、ということは、男性はみな新規のお客様ということですね。」

「まあ、そうなりますね。」

「ありがとうございます。それでは最後の質問ですが、本日、この店にお客さんがやってこられた順番を教えていただけますか?」

「そうですね、まず最初にやってこられたのが、あのカウンターの席に座っておられる大柄な男性だと思います。その次にやってこられたのが、あの女性で、

最期にやってこられたのが、あの二人組の方々ですかね。」

「そうでしたか、大変参考になりました。ありがとうございました。」

「いえ、あの、一つお願いがあるのですが、あまりお客様には長々と質問しないでいただきたいのです。お客様は疲れをいやしにこちらに来られているので。」

「ええ、もちろんです。必要なことだけ聞いたらすぐに帰らせていただきますよ。」

「よろしくお願いします。」

マスターは、そういうと少し安心したような表情をした。


[二人組の男たちの話]

「お時間お取りしてしまい、申し訳ありません。」

刑事は、申し訳なさそうに言った。

「いえ、全然大丈夫です。それよりも、僕たちも一刻も早く犯人を捕まえるために協力させてください。」

最初は苦手意識を感じた目つきの悪い男のここまでの言動を振り返ると、どうやら、思っていたよりも真面目な人間のようだ。

「ねえ、やっぱり幽霊の仕業だって。」

いきなり横に座っていた青年が口を開いた。

「だから言ったでしょ。ここは幽霊が出るバーなんだよ。」

その声があまりにも大きな声だったので、目つきの悪い男はこらと青年を叱った。

「失礼、その幽霊が出るというのはいったいどういうことなのでしょうか?」

刑事は、その話に少し興味を持ったようだった。

「いやあ、そんな大した話ではないんですが、ちょっとこいつがこのバーに幽霊が出るっていう噂を聞いたみたいで、それで一緒に行こうと。僕自身も最初は

信じていなかったんですが、、」

「出たんですか?」

「まあ、そんなところですかね。刑事さんが来る少し前のことだったんですけど、何もしてないのにひとりでにドアが開いたんです。この店のドアも

建付けが良くないみたいで、ぎいと不気味な音を立てて開くものなので、少し驚いたんですが、あとでマスターに聞いてみると、時々ここには

強い風が吹くので、そのせいで勝手にドアが開いたりすることがあるそうなんです。」

「でも、絶対そんなんじゃドアは開かないって。あのドアって絶対そんな風の力だけで開いたりしないって。」

「確かにそうかもしれないですね。あの時聞いたらそこまで不思議には思わなかったのですが、もしかしたら何かこのバーには何かがあるのかもしれないです。」

「そうですか、ありがとうございます。ちなみにですが、お二人は勇者様か何かでしょうか?」

「ええ、そうですが。今はもう警察の手伝いみたいなことをやってます。まあ、以前ほどは稼げてませんけど、これでモンスターも人間も幸せに暮らすことが出来るのなら、

良かったんじゃないでしょうか?」

「頑張っておられるようで、何よりです。ところで、お二人は、本日はどのように過ごしておられたのでしょうか。」

「今日はずっとトレーニングしてたよ。」

「そうですね。最近はとにかくモンスターを倒せばいいというわけでもないので、経験値的には効率は良くないですけど、二人でトレーニングをしていますね。」

「トレーニングですか、何か変わったことなどありませんでしたか。」

「変わったこと。うーん、あ、カイルの剣が欠けた。」

「剣が欠けた?」

「ああ、そんなこともありましたね。まあ、最近は仕事も少なく、お金もあんまりないので、安物の剣を買うしかないんです。だから、欠けたりするのも

仕方ないことですね。」

「そうでしたか。それは残念なことです。」

そう言いながらも、刑事は少しにやりとした。

そうしていると、目つきの悪い男がゆっくりと口を開いた。

「僕らって疑われていますよね。まあ、仕方がないんでしょうけど。メタルスライムを殺すのも経験値目的だと思われても仕方ないです。ですけと、僕らは

本当にやってないです。」

そういって、目つきの悪い男はじっと目を見つめた。

「わかっています。」

刑事は深く頷いた。


二人が元の席に戻ってきたあと、刑事が小声で言った。

「おい、スライムの死体の様子、覚えてるか。」

僕はうなづいた。

「頭に欠けた剣の先が刺さっていただろう。」

確かにその通りだった。スライムの頭には欠けた剣の先が察さっていた。そして呼吸もしておらず、まるで永遠の眠りについているようだった。

「あの二人組も犯人の可能性はある。まあ、まずは、残っている人に話を聞いてみよう。」


[毛深い男の話]

「それでは、お話の方よろしくお願いします。」

そう言いながら、刑事はその男の目を見つめた。

男は、ただ毛むくじゃらなだけではなかった。その毛の色は青く、口からは、鋭い牙が生えていた。

「いや、これは失礼、リカルドさんでしたか。人間かと勘違いしておりました。」

そういって、今度は僕の方に目配せをした。どうやら、話を聞く役を交代しろということらしい。人間は、モンスターの言葉を聞くことが出来ない。そのために、僕のように、

人間とも、モンスターとも話をすることが出来る存在が、活躍することが出来るようになったのだ。」

僕は、彼と席を変わり、そして、リカルドさんに向かって話しかけた。

リカルドさんは、何やら、あたふたしている様子だった。

「どうされたのですか?すごい落ち着かない様子ですけど。」

そういうと、リカルドさんは、口を開いた。

「あの、先ほど、メタルスライムが殺されていたという風に言っていましたが、それは、本当にメタルスライムでしたか。」

僕は、一瞬、それがどのようなことを意味するのかが分からなかったが、リカルドさんの方で、そのことを悟ったようで、先ほどの言葉をわかりやすく説明してくれた。

「いえ、大したことではないんですが、ただ私は、ここで、スライムさんと約束をしていたもので、」

「約束?」

「はい、そうです。今日はここで待ち合わせをして、仲間内だけのパーティをする予定だったんですが。」

「パーティですか」

「はい、ですが、約束の時間を過ぎても、スライムさんも現れないし、そのうえ、メタルスライムっていうスライムによく似たモンスターの死体が発見されたっていうし、

もう、何が何だかよくわからなくて。」

「なるほど、つまり言いたいことは、もしかしたら、そのメタルスライムが、もしかしたら、スライムの変装かもしれないということですか。」

「まあ、そういうことになりますね。」

「うん、どうでしょうか。死体については我々は専門外なので、詳しいことはわかりませんが、もしかしたら、そういうこともあるかもしれません。」

「そうですか、じゃあ、もう一つだけ、お伝えしておきたいことがあるのですが、よろしいでしょうか。」

「なんでしょうか。」

「実は、今日はパーティといったんですが、実は、仮装パーティなんです。なので、もしかしたら、メタルスライムに仮装しているという可能性もあるかもしれないと思って。」

「仮装パーティ!なんで、そんな大切なことを先に言ってくれないんですか。それだったらもう、仮装に決まってるじゃないですか。」

「そうですかね。」

「そうですよ。ああ、ということは、スライムさんは、この場所に向かっているときに、誰かにメタルスライムとして殺されたのかもしれませんね。」

「誰かもう目星はついているんですか。」

一瞬、先ほどの勇者たちのことを話すかどうか悩んだが、まだ捜査の段階なため、そのことを言うのはやめておいた。

「いえ、それはまだわかっていないんですが、まあ、捜査が進めば犯人もわかると思いますので、その時にはお伝えします。」

「よろしくお願いします。」


「捜査の結果はどうだった。」

刑事が聞いたので、僕は答えた。

「おそらく、あのリカントさんは犯人でないような気がします。」

「なんでそう思うんだ。」

「スライムさんのことを心配してたし。」

「バカ野郎。そんなもん、犯人だってできるんだ。それより、他に何か情報はないのか。」

「あ、スライムさんは、この場所でリカルドさんと、仮装パーティに行くための待ち合わせをしていたそうです。」

「仮装パーティ、待ち合わせ、、それを早く言えよ。でかい収穫だ。」

そういって、刑事は、何やら一人で考え事を始めた。


[おぼろげな目をした少女の話]

その少女は、なかなか目を覚まさなかった。刑事が何度も声をかけてやっと目を覚ましたといった具合だ。彼女は、いまこのバーに何が起きているのかもつゆ知らずといった

様子だった。そして、創造の通り、刑事が殺人が起きたということを伝えても、少女はただ一度目をぱちくりとさせただけで、それ以上の反応は見せなかった。

刑事は、何やら調子が狂うというような様子であったが、気持ちを切り替えて、その少女にいくつかの質問を始めた。

「眠たそうなところ悪いが、いくつか質問に答えてくれるかい?今日は何をしていたのかな?」

少女は瞼をただあげておくだけで必死だったようだが、何とか口を開いた。

「魔法の、、トレーニング、、、」

「魔法のトレーニングか、じゃあ、それは何時くらいから何時くらいまでどこでしていたか覚えているかな?」

彼女はまた眠りそうになっていたが、最後の力を振り絞って、質問に答えた。

「時間は、、わからないけど、、朝から、、さっきまで、、場所は、、この近く、、眠い。。。」

そういって、彼女の先ほどまで前後にふらふらと揺れていたからだは、まるで魔法にでもかかったように、机に向かってばたんと倒れた。

「おい、まだ質問が、、」

だが、そんな言葉は彼女にはもう届かない。もう刑事の言葉に対する返答もなくなった。

「はあ、一人でトレーニングしてたっていうんじゃ、アリバイもないよな。はあ、どうすればいいんだ。これじゃ誰が犯人かすらもわからないじゃないか。」

「そうですね、弱りましたね。」

ふっと、扉の近くを見てみると、先ほどの二人組が、そろそろ解放してほしそうな目でこちらを見ていた。

「弱りましたね。まだきちんとした証拠も手に入れられてないのに」

「そうだな、目撃者でもいればよかったんだが、こんなに人の少ない街ではそんなこともないよな。」

そういって、刑事が、仕方ないと立ちあがり、客たちに捜査協力の感謝を伝え、もう解放しようとした時だった。

ふと、何もない空間から、刑事の背後の場所から、

「見た」

という、渋い女性の声が聞こえた。

いや、聞こえた気がしただけだろう。そんなはずはない。僕は、先ほどの二人組の男の話を思い出した。ここは幽霊が出るらしい。いや、そんなはずはない。

別にこのバーが呪われたバーで、この近くを通ったモンスターや人間が死んでしまうってことじゃないんだ。そうだ、今のは空耳に違いない。

だが、僕の祈りも空しく、やはり、もう一度先ほどの声で、今度はより大きく「見た」という声が聞こえた。

刑事は最初の声を聴くことはできなかったようだが、今度の声は聞こえたようだ。僕らはゆっくりと顔を見合わせた。今にも叫びだしてしまいそうだったが、

見たという言葉に続いて、何やら言っているのが聞こえた。

「あの、私、見たんです。あのスライムさんを殺した犯人を、知っているんです。」

僕は、腰が抜けて、立つこともできなかった。

だが、刑事は頼もしかった。ゆっくりと、その声の方を向くと、大きく息を吸い込んで、言った。

「あの、あなたは幽霊ですか?」

声は裏返っており、質問内容も間抜けなものだったが、この状況で質問をすることが出来た刑事のことを尊敬した。

それに対して、声の主は言った。

「いえいえ、全然そんなんじゃなくて、いや、逆に、ただの人間、、みたいな感じで、、、」

刑事も僕も、何を言っているのかがよくわからず、黙りこくっていた。

「あの、えっと、あ、ただステルスをしているっていうだけで。」

「ステルス??」

「はい」

「てことは見えるようにもできるってこと?」

「はい」

「じゃあ、なんでわざわざそんなのしてるの?」

「いえ、ただ私恥ずかしがり屋なので。」

恥ずかしがりやなだけで自分が透明になろうとは、僕には理解できなかったのだが、まあ、世の中にはそういった人もいるのだろうということで納得した。

となると、気になるのは先ほどの話である。

刑事もそう思ったようで、そのことに関する質問をした。

「ということは、さっきの、犯人を知っているというのは本当か」

結構大きな声で話をしていたので、もうすでに、そのバー内の注目は集めていたのだが、その言葉を聞いて、その話を聞いていた人たちの中での空気がピリッとした。

「本当か、本当に犯人を知っているのか?」

それに対して、今度は自信を持った様子で答えた。

「はい、知っています。」


[透明少女の話]

「じゃあ、君が知っていることを話してもらえるかな?」

刑事は優しい口調で尋ねた。

「はい、今日はいい天気だなあと思って朝から散歩をしていたんです。」

僕は、一瞬困惑したが、すぐにこれはすでに話が始まっているのだということを理解し、話に集中し始めた。

「それで、せっかく散歩にでも来たんだから、今日はちょっと遠くまで行ってみようかなってことにしたんです。好き放題な方向に向かって歩いていたんですけど、

気づいたら、どっちに来たかもわからなくなって、迷子になっちゃってたんですね。そんな中で、大変大変って焦って、誰かに帰り道を聞かないとだめだなって思って

歩いていたんです。もうすぐ夜も深くなっていきますし、このままじゃ、どこかで野宿しなくちゃいけないなって思いながら歩いてたんです。そう思っていた時にあったのが

、そのスライムさんだったんです。私、スライムさんに道を聞いてみようと思って、話しかけてみたんです。だけど、話しかけてみて気づいたんです。

モンスターと話すことはできないっていうことに。だから、人を探そうと思ったんです。だけど、そのスライムさんが、仲間にしてほしそうな目でこちらを見ているんですね

。だけど、仲間にはできないし、逃げようと思っても、ついてくるし、どうしようもなくなったんで、ステルスを使って逃げたんですね。ステルスは、得意技でした

ので。それでスライムさんから逃げることはできたので、道を他の人に尋ねようと思ったんですが、ここにはろくな人たちがいなくて、、、剣の練習に明け暮れ

ている人や、よくわからない呪文を森に向かって打ち続けている人など、頭がおかしい人たちだらけだったんですね。それで、どうしようか悩んでいた時に、

空を見上げると、ぴゅーっと、剣の先端部分が宙を舞うのが目に入りました。それで、その方向が、森の方で、先ほどスライムさんがいたところだったんですね。

それで、少し心配になって、様子を見に行ってみたら、なんと、スライムさんの頭に先ほどの破片が刺さっていたんです。スライムさんは動きませんでした。驚いてしまった私は

、一目散に逃げてしまいました。お恥ずかしい限りです。もしも、あの時、私が勇気を出して誰かを呼びに行っていれば、助かったかもしれない命だったというのに。

ですけど、後悔しても、仕方のないものです。一度失われてしまった命は、取り戻すことが出来ませんもの。」

最期の言葉には、やけに説得力があった。

「ということは、犯人は、別におらず、スライムさんが死んだのは事故だったということでしょうか。」

刑事が言った。

「そういうことになりますかね。」

確かに、先ほど、この少女が話したことの筋は通っていた気がする。

その説明に対して、特に追及するべきところもなかったので、僕と刑事は顔を見合わせた。

こちらとしては、特に追及するべき点がないのならば、別に話を長引かせようなんていうことはない。

飛んでいった破片がスライムの頭に刺さったという多少強引な説明もあったが、まあ、そういうこともあるのだろう。

僕と刑事は、もう一度顔を見合わせ、捜査をこれで終わらせようとした。

すると、突然、先ほどからずっと沈黙を守っていた、毛むくじゃらの男が立ち上がり、威勢よく言葉を発した。

「そんなはずはない。スライムさんが、そんな風に、飛んできた剣の破片もよけられないだなんて、そんなことはあるはずがないだろ。」

それに対して、一同は黙りこくっていたが、そんなことには構わずに、話をつづけた。

「だって、おかしいじゃないか。そんなに飛んできた剣に刺さって死ぬなんてこと、あるはずがないだろ。」

それに対して、少女は反論した。

「でも、これは私が見たまぎれもない事実なんです。なので、私も確かにそんなことありえないとは思いますが、これはただ私が見たものをその通りに話しているだけなんです。

「でも、でも」

毛むくじゃらの男は、納得のいかないように、その鋭い爪を机に突き刺した。その瞬間である。

ドアがぎーっという音を立てた。そして、その奥から、先ほどから話題の中心に上がっているスライムが現れた。

「その通りですよ、リカントさん。」

それは、やはり先ほど道の途中で見た、頭に剣の折れた端が刺さったスライムだった。

「スライムさん、生きていたんですか。」

リカントが驚いたように言った。

「ああ、もちろんだとも、リカントさん。僕は、まったく死んでなんかいないよ。ただ眠らされていただけさ。」

「眠らされていた?それはどういうことですか。」

僕は聞いた。

「いや、僕自身もよくわからないんだけどね、なんだかいきなり眠くなってしまったんだ。多分これは、ラリホーをかけられたんだと思うんだけど。」

「ラリホーですか、いったい誰が、、、いや、ちょっと待てよ。もしかして、あの魔法使いの女の子が練習していた魔法っていうのは、、ラリホーなのか?」

その言葉に対して、少女の反応はなかったが、おそらくそれは正解なのだろう。

「なるほど、ということは、スライムさんは別に死んでいたというわけではなく、眠っていただけだと。」

「うん、そういうことになるね。って、それよりも。」

そういって、スライムは、先ほどから話していた姿の見えない女の方を向いた。

「あなたは、これまで、数多くの協調派を殺してきたラブリームーアさんですね。」

それに対して、透明の女は、一瞬黙った後、少し高笑いした。

「そうよ。私指名手配されているから顔で分かっちゃったかしら。まったく、まああんたらにばれても問題はないからね。残念だね、こんな風に私についてこなかったら

死なずに済んだのに。」

そういって、彼女は姿を現した。

そこには先ほど見た急進派の人間を殺して回っていると先ほど指名手配所に書いてあった女の顔が書かれてあった。

「ああ、ただ黙って、この魔族と人間をつないでる人間だけを殺そうと思ってたのになあ。」

そういって、彼女は冷たい視線を僕の方に向けた。

「ごめんね。別に恨みはないんだけど、あなたを殺さなくちゃいけないの。」

そういった時には、すでに彼女は僕の目の前に来ていた。僕は、死んだと確信した。だが、次の瞬間

「疾風づき」

その声が聞こえたかと思うと、彼女が手に持っていた短剣は遠くへと弾き飛ばされた。

「僕たちのことを忘れてもらっちゃ困るね。」

そういったのは、先ほどの、勇者一行のうちの天真爛漫な青年だった。

「一応僕らも勇者なんだから、僕らの見ている前で殺させやしないよ。」

だが、少女の方も、負けていない。懐から、もう一つの短剣を取り出すと、その剣を使って、勇者の方に走り出した。勇者は不意を突かれたようで、

何とかその攻撃を受けることはできたが、今度は勇者の剣の方が、はじかれてしまった。

そして、そのまま、また僕の方に近づき、その剣の先を僕の喉元に突き立てた。

そして、少女はもう一度高笑いをした。

「はは、はははは、はは、残念だったね。ここで、君たちの全員の命は終わりだよ。残念だったね。」

かなり大きな声で言い放った後、今度こそ、僕の方に向けて短剣を大きく振りかぶった。

だが、

「うるさい、静かにしろ。」

その声とともに、その少女は、倒れこんだ。よく見ると、眠っているようだった。先ほどの方を見てみると、先ほどから、ずっと眠っていた女の子がラリホーを

欠けたようだった。

どうやら、ラリホーのレベルも毎日の特訓で上がっていたようだった。

そして、その少女は、もう一度、眠りについた。

「助かったのか、僕ら。」

思った時には腰が抜け、地面に倒れこんだ。

それから、少女は、警察の方に連れて行かれ、間もなく、より大きな警察へと移動させられた。

他の人たちはどうかというと、勇者たちは今回の指名手配犯の退治で得た金を使って、新しい武器を買ったようだし、ラリホーの女の子も変わらず、ラリホーを極めているようだ。

そして、スライムたちも、今度はスライムベスの仮装に挑戦するといっていた。

そして僕らも、、

「いやあ、いきなりあんな事件に巻き込まれるなんて、大変でしたね。」

「まあ、そうだな。だが、これで、お前も、警察の大変さがわかっただろう。」

僕の中では、最初の警察をなめ腐った考えは跡形もなくなっていた。

「ま、これからも、警察としてよろしく頼むな。」

「よろしくお願いします。」










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