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追放された村娘に《魔神の瞳》は荷が重い  作者: 佐藤悪糖
1章 才能がなければ運もないけど、何かの間違いで生きている
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1-7 突然で悪いが君にはひどい目にあってもらう

 迷宮内に罠を仕掛けて回っているのは一体何者なのだろうという疑問がある。なにせ迷宮内に闊歩する生命の多くは、動物相応の知性しか持ち合わせていないのだ。奴らがどう知恵を絞ろうと、仕掛け矢や毒ガスの罠なんてものを仕掛けるのは難しい。


 しかし、現実として迷宮内には罠が仕掛けられている。一体誰がこれをやったのだという話になった時、酒に酔った男がこう言い出した。あれは小鬼の仕業なのだと。迷宮内に棲み着く目に見えない小鬼たちが、いたずらとして迷宮に罠を仕掛けるのだと。

 誰がどう聞いても酒飲みのたわ言だったが、その話は迷信好きな探索者たちに大いに受けた。


「というわけで、迷宮に仕掛けられた罠は、またの名を小鬼のいたずらって呼ばれてるんだよね」


 探索がてら、私はアルタにそんな豆知識を教えていた。なにせこの男、罠のことをまったく知らないのだ。それでは単独(ソロ)としてやっていくのも大変だろう。


「それってよ、つまり誰が仕掛けてるのかわからないってことか?」

「まあ、そういうことだけど。迷宮ってわからないことの方が多いから」

「別名の由来だけ聞かされてもなぁ」


 …………。そうですか。そうですよね。実用的な知識の方がほしいですよね。悪かったな。


 迷宮内に仕掛けられている罠も、浅層のものはそこまで致命的なものはない。引っかかっても傷を負うくらいがせいぜいだ。しかし深くまで潜るほどに、致命的で巧妙な罠が多くなってくる。深くまで行くのなら、罠探知と索敵専門の斥候職が必要になってくるだろう。

 また、発動した罠は一定時間で再度作動するようになり、数日もすれば別の場所へと移動するという性質がある。


「だから、もし罠に引っかかったとしても、その場所を覚えておけば少なくとも数日は引っかからずに済むよ。罠を見破れなかったとしても、これくらいは覚えとくと楽になると思う」

「ああ、なるほど。道理で同じ場所で何度も引っかかるわけだ。あれって猛烈に運が悪かったわけじゃないんだな」


 おう。気づけよ。

 雑談まじりではあるが、探索に気を抜いていたわけではない。これでも迷宮には二年以上潜っていたし、罠だってそれなりに見てきた。浅層で出現する程度の罠は一通り頭に入っているし、注意していれば見落とすこともそうそうない。


 だからこそ、通路のど真ん中に見たこともない罠を見つけた時、私の感覚は全身で異常を伝えた。


「――アルタ。止まって」


 その罠は感圧板やトリップワイヤーではなかった。溶け込むような同系色で、地面に円が描かれている。円の内部には様々な文字や模様が刻み込まれていた。

 見たことはない。だけど、話には聞いたことがある。


「魔法陣の罠? こんな……浅層に?」


 迷宮の奥地にはこういった罠もあると聞いたが、浅層に出るなんて話は聞いたことがなかった。


「あー、これか。面倒なやつだ」

「見たことあるの?」

「たまにな。踏むと爆発したり、痺れたり、凍ったりする。何が起きるかは踏むまでのお楽しみだが、大体いつもひどい目に遭うぞ」


 ええ……? アルタはこの罠知ってるの……?

 私はこれまで一度たりとも出くわしたことはなかったのだが、もしかすると浅層にも稀にこういった罠があるのかもしれない。こいつは何度もこの罠を見ているようだし、現実に私の目の前に魔法陣の罠が存在していた。


「……ひょっとして、これがアルタの凶運?」

「かもな。まあ、よくあるこった」

「よくないから驚いてるんだけど……」


 こんな罠がよくあってたまるか。中々見かけないレアな罠を引き寄せたとなっては、いよいよこいつの凶運とやらも真実味を帯びてきた。


 凶運の是非は一旦置いておくとして。今はどのようにこの罠の対処をするべきかだ。言ってしまっては何だが、私の罠解除スキルはそこそこだ。初めて見る罠でもぱぱっと鮮やかに解除できる、なんて芸当は求めないでほしい。解除するならそれなりのリスクも考えなければならなかった。


「他の探索者のために目印だけ書いておいて、ここで引き返すってのもありだと思う。暗闇コウモリならこの辺でも十分狩れるし」

「ルーク。俺は奥に行きたい。俺はコウモリを狩りに来たんじゃなくて、迷宮の遺宝(アンノウン)を探しに来たんだ」


 それは無理があるんじゃないかなぁ……。

 でも、浅層の罠が解除できなくて道を引き返すというのも情けない話である。ここは後学のために、あえて触ってみるというのもアリだろう。


「俺が踏もうか。何度か引っかかってるが、一応今までなんとかなっている」

「いや、僕が解除してみるよ。魔法も罠も、多少は知ってるから」

「気をつけろよ」

「うん」


 指先から魔力を伸ばして、魔法陣の外側に触れる。魔法陣の中にはたしかに魔力が通っていた。間違いなく生きている罠だ。


 魔法陣のこと、もっと勉強しておけばよかったと今更ながらに後悔する。私の魔法知識では文字や模様の意味は読み取れない。火や氷、風や土といったよく使われる魔法の模様ならわかるが、この魔法陣に描かれているのはどれも見たことのないものだった。

 つまりこれは、単純に爆発したり痺れたり凍らされたりする罠ではないのだろう。もしそういった類なら私が知っている模様があるはずだから。


「んー……。何か、手がかりとか、あれば……あっ」


 伸ばした魔力で模様をなぞっていると、突然魔法陣が活性化する。やばいと思った時にはもう遅かった。

 発動した罠は私の魔力を逆流する。私はとっさに伸ばした魔力を引っ込めようとしたが、間に合わない。


「やっべ」


 何らかの魔法が身を貫いて、私の視界が光に包まれた。

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