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追放された村娘に《魔神の瞳》は荷が重い  作者: 佐藤悪糖
1章 才能がなければ運もないけど、何かの間違いで生きている
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1-4 こういう奴らほどなんやかんやで仲良くなるんだろうね(なる)

 まあ、迷宮に入れば暑さ寒さなんてものはすぐに気にしなくなる。迷宮内は年中変わらぬ暖かさだ。


「で、アルタ。今日は何の依頼やるの?」

「依頼? 何言ってんだ。とにかく深く潜るんだよ」

「……あのさ。収入って、知ってる?」


 いくら探索者と言えど、好き勝手迷宮に潜って適当な代物を持ち帰るだけでは大したお金にはならない。探索者を稼業として成り立たせるには、依頼を受けて指定のアイテムを持ち帰らなければならないのだ。


 中には利益度外視でひたすら奥へと潜るような探索者もいるが、はっきり言ってそれはもう趣味の領域である。ビジネスとして探索者をやる以上は、誰かが求めている成果を出さなければならない。ロマンなんかで食っていけないのだ。


「ルーク。男には、たとえ不合理であろうとやらねばならない時があるんだよ」

「今じゃない。現実見ろ」

「そんなこと言うなよ。夢は待ってくれないぞ」

「帰るよ」


 この男、私が一度首を縦に振ったからと言って調子に乗りすぎだ。これ以上譲歩するつもりはない。ないったらない。お金にならない探索なんて、まっぴらごめんなのだ。


 掲示板に貼られた依頼を眺める。この男と組むのは初めてだし、二人パーティというのも初めてだ。あまり無理なものに手を出さず、ここは比較的安全な依頼をやるべきだろう。


「なあルーク、これなんかいいんじゃないか?」


 アルタが手にとったのはアルザテラワニ迷宮種の討伐依頼だった。

 アルザテラワニとはそのままアルザテラ大陸の河川域に生息するワニのことだが、ここで指定されているのは迷宮内の魔力を受けて変異した個体だ。


 迷宮内に充満する魔力にさらされ続けた生物は、魔力から直接エネルギーを得られるように変異する。積極的に餌を摂る必要はなくなり、それどころか生命を維持して余りあるエネルギーを存分に振るうことができるのだ。その段階まで変異した個体を、迷宮種、あるいは俗に魔物と呼ぶ。


 迷宮は深い場所ほど魔力が濃くなるため、多くの魔物はより芳醇な魔力を求めて深層を目指す。迷宮内の生存競争は地上のそれよりも遥かに過酷で、そのため魔物は魔力から得られた余剰エネルギーを戦闘力に変換する。ゆえに、深い層にいる魔物ほど強力だ。


 探索者ギルドの依頼で指定されているアルザテラワニもそういった魔物だ。通常のアルザテラワニよりも何倍も大きく、凶暴で、血に飢えている。

 前のパーティなら狩れた相手だが、私一人では難しい。アルタの戦力は未知数だ。それに、そのワニの生息域はそこそこ深いところにある。

 以上の条件を勘案すると、あまり受けたい依頼とは思えなかった。


「……こっちにしとかない?」


 私が示したのは魔鉄鉱の採取依頼。第一迷宮の浅層で比較的簡単に掘れる鉱石だ。報酬が渋いので経験を積んだ探索者はあまり受けたがらないけれど、少数ならば安全かつそこそこ旨みのある依頼である。


「そんな地味な依頼受けてどうするんだよ」

「地味とか派手とかよりも、安全確実にこなせる依頼にしたいんだけど……」

「だったらワニだろ」

「だったらの使い方おかしくない?」


 まあ、採取依頼が地味だと言う意見はわからないでもない。それに、パーティメンバーの意見が合わないと言うのも、いざと言う時に困ったことになる。ここは落とし所を探るべきだろう。


 そういうわけで、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論の末に選ばれたのは、暗闇コウモリ迷宮種の皮膜と牙をいくつか持ち帰る依頼であった。

 たかがコウモリではあるが、羽を広げたサイズは人間よりも大きい。音もなく空を飛び、鎧の隙間から血を吸う危険な魔物だ。私一人でも倒せると言えば倒せるが、できればあまり喧嘩したくない相手である。


「本当にこれにするのかよ。こんなのすぐ終わっちまうぞ」

「終わったら終わったで、ついでに採取してこうよ。魔鉄鉱なら依頼を通さなくてもそこそこ売れるから」

「いーや、ワニだ。ワニを狩ろう」

「めちゃくちゃ余裕があったらね……」


 私は本当にこの男と一緒に迷宮へ行かなければならないのだろうか。ならないのだろうな。だって、行くって言ってしまったし。

 せめて無事に帰ってこられるよう何かに祈りたくなったが、探索者たちに伝えられる格言を思い出して、祈るのをやめた。


 探索者に神はいない。

 目の前に立ちふさがる困難は、己の力で切り開かなければならないのだ。

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