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1話 「幼馴染」



 「ついにこの日が……来たか」


 ここ、魔導士の村『最弱』の男、アレスはベッドから飛び起きた。


 「今日も、相変わらず気持ちの良い朝だな」


 すぐ側の窓からの眩しい太陽に目を眩ませながらそう呟く。


 そう、遂に幼馴染のドロシーに告白する日が来たのだ。

 今日はドロシーの17歳の誕生日。

 誕生日パーティー中にサプライズ登場をし、いい雰囲気になった所で俺が告白。成功するというのがざっくりとした流れだ。


 「あっ、ドロシー!! おはよ!!」

 「……どうも」


 部屋から出ると、ちょうどドロシーが通り過ぎる所だった。


 「今日はドロシーの誕生日だから、俺も張り切っちゃうぞ――!!」

 「ははは……」


 やっぱりドロシーはいつ見ても美しい。


 深く被ったとんがり帽子から長く伸びる黒い髪、宝石のように緑色に輝く目に、雪のように白い肌。

 そして、横を通り過ぎた男達が思わず振り向いてしまうほどの完璧なスタイル。


 「昨日一日中どこにも居なかったけど、何処に行ってたんだ?」

 「…………討伐クエストだけど」

 「おお、やっぱすげぇな!!」


 それにかなり強い。

 俺の100倍くらい強い。


 彼女は幼い頃から成長率が周りから逸脱していた。

 俺達がいるこの孤児院では魔法において最強格の実力を持っている。中でも魔力量が桁違いで、他の同世代の何倍もあるのだ。


 魔術には、基本的に大きく分けて4つに分けることができる。

 攻撃魔法、治癒魔法、付与魔法、召喚魔法。


 この4つ。


 殆どの魔術師は魔力の消費量の関係から攻撃魔法以外使う事ができないのだが、ドロシーはなんと攻撃魔法に加えて治癒魔法を使えるのだ。


 攻撃と治癒が同時にできることからとても重宝されている。

 ちなみに俺はというと、攻撃魔法どころかこの4つ全てをまともに使うことができない。


 既にプロの冒険者ギルドから声がかかっているという噂も立っていて、俺とは正に天と地の差だ。

 俺は毎朝、そんなドロシーと日課のようにこうして話しをしている。


 「ちなみに俺は昨日やっと一人でゴブリンを倒せるようになったんだ!!」

 「……へぇ、良かったじゃん」


 こんな魔力量も5歳児以下で、魔法も初級魔法すら怪しいこの俺のことを褒めてくれるなんて、やはり俺に気があるのだろう。


 彼女とは物心がついていない頃から共にいる。

 俺もドロシーも殆ど同じ時期に親に捨てられた所を拾われ、同じ孤児院で育てられたのだ。

 だから、ドロシーのことは一緒にいた幼馴染である俺が一番知っている。


 「今日の誕生日パーティー俺も行くから楽しみに待っとけよ?」

 「そうなんだ。じゃ」


 行ってしまった。

 おそらく自分の照れた顔を俺に見せたくなかったのだろう。


 「……あぁ」


 ドロシーと共に過ごせればどれだけ幸せだろうか。

 あの、ドロシーと。


 俺は右ポケットから緑の宝石のついた宝石を取り出す。

 俺の全財産をはたいて買った指輪。

 10年以上前からずっと貯めてきた。

 俺がドロシーとの恋に落ちてからずっと。


 一目惚れだった。

 透き通った目に、俺は一瞬にして心を奪われた。

 落ちこぼれだと言われ続けていた俺の心を持たせることができたのも、ドロシーの存在が大きい。


 この想いが遂に今日、実を結ぶ。


 「さて、俺は準備でもするか」


 俺は指輪を右手に握り、パーティー会場へ向かった。





 「も、もう直ぐ始まる……」


 外はもう暗い。

 そろそろドロシーが帰ってくる時間帯。


 緊張してきた。

 足の震えが収まらない。

 もう既に部屋には20人以上の大勢の同期が集まってきている。


 5個の丸いテーブルの上には、鶏の丸焼きなどの豪華な料理と、様々なフルーツの乗った大きなケーキ。

 全て孤児院の大人達の手作りである。


 ドロシーは人望も厚いのだ。

 俺だったらこんなにも集まらないだろう。


 「もう、後戻りはできないな」


 俺は今、食料を入れる箱の中に隠れている。

 隅に置いてあり、隙間から覗けば部屋全体を見渡せる絶好の場所だ。


 額から汗が落ちる。


 もし失敗したら、どうなるのだろうか。

 ……いや、失敗なんてしない。


 なんせドロシーは俺のことが好――


 「主役のお出ましだぞ!!」


 来たッ!!


 俺は声がした方向――入り口へ目を向けた。

 ドロシーの着ている黒い服が少し汚れてはいるが、それでもなお美し……


 「え?」


 俺は反射的に箱から飛び出していた。

 本来俺が出てくるのはパーティーの終わりがけ。

 こんなに早く飛び出す予定ではなかった。


 だが――『その光景』を見た俺は、飛び出さずにはいられなかったのだ。


 「な、なんで……?」


 ドロシーが俺とは別の男と手を繋いで現れた。


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