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6.女嫌い

フィル・フォン・マイヤーという名前を聞いて、すぐに反応したのはウィルだった。


「フィル・フォン・マイヤーというと、マイヤー伯爵家の跡継ぎで財務部にいるやつか?」

「そうそう、そいつ!ウィル、お前よく分かったなー」

「まぁ、王宮にいる人の名前と顔は全て一致してるからな」

「お前ってほんとにやばいやつなんだな....」



ウィルは学問や武術において天才なだけでなく、記憶力や知識量など全てにおいて天才的であった。八歳の時にすでにセレスト王国の法律や制度を完璧に理解し、王太子だからと言い寄ってくる貴族たちをその圧倒的な頭脳をもって追い返したこともある。



「そのマイヤー伯爵家のフィルから詳しく話を聞いたら、私が父の不正の証拠を見つけるから義妹をたすけて欲しいって俺に言ってきたんだよ」

「それは罠なのでは?そもそも父親の不正を暴いて自分の家を貶めるようなことをしますかね?

誤った情報を伝え、殿下に恥をかかせるおつもりでは?」

「だよなぁ、まぁそんな自分の家のこと自分で解決しろって話だしな~。なんか悪いな、時間使っちまって。」

「いや、構わない」



その話はウィルにの心に少し引っかかったものを残したが、ウィルは気づかないふりをした。

そうして、マイヤー伯爵家の塔にいる少女の話は一旦幕を閉じた。

しかし、次のジョンの発言によって三人の会話はさらに長いものになっていく。



「そーいえば、俺今度お見合いするんだよ」



いつものように他愛のない話をしながら仕事を進めていた三人だっただったが、ジョンのその言葉にウィルは持っていた書類をバサバサと机の下に落とし、レオンは飲んでいたブラックコーヒーを思い切り吹いた。


「あ、ゴホッ!相手ゴホッゴホッ!はだれ...なんですか?」


レオンはむせながらも、息を整え、ジョンにお見合い相手の名前を尋ねた。


「ビネガー侯爵家のリリー・フォン・ビネガーっていうお嬢様なんだけどさ、親父に見せられた絵姿を見て俺は絶対に断ると決めた!」

「確か、ビネガー侯爵のご令嬢は男性が苦手で、色んなところから来るお見合いを断りたいがために絵姿をあえて不細工に描かせているとかいう噂がありましたよ。実は結構な美人であるとか。」

「え?そうなの?」

「あなた、そういう噂は知らないんですか?」

「いやー!俺あんまりそっち系の噂って得意じゃないんだよー!なっ、ウィル!」


ジョンは硬派な見た目に反してかなりの女性と交遊関係にある。だが、一度も女性関係でもめたことはなく、むしろジョンから誘うよりも、女性たちの方から遊んでほしいと寄ってくることが大半である。

そこには、侯爵家とお近づきになりたいと寄ってくる者もいるが、普段からそういったことに免疫がなさそうなジョンのギャップに惹かれる者もいるのである。

しかしジョンが侯爵家の人間であり、敷居が高すぎるのを分かっているため、一夜の関係で終わることが多くなっている。そして、そうした乱れたジョンの女性関係に対して、レオンはあまり良く思っていない。



自分で始めた話からどんどん墓穴を掘るかもしれないと思ったジョンは、自分に向けられるレオンの訝しげな視線を交わそうとして、無理矢理ウィルに話題をふった。


「あ、ああ、まぁ......」


しかし、いきなりふられたウィルも、この手の話は苦手で上手く返事をすることができなかったのだが、ジョンは話をそらそうと頑張った。



「ウィルは女苦手だもんなー!そんなんでどうやって子ども作るんだよ!」

「ジョン!さすがに不敬ですよ!」



ジョンの発言を特に気にした様子もなく、ウィルはジョンの疑問に答えた。



「子どもは考えてある。公爵家のどこかから養子をもらうか、それがダメならサミュエルに王位を渡す。」



レオンとジョンは目を見開いて固まった。

それは一瞬だったが、とても長く感じられた。



「ちょっ!まっ、え?!??はっ?!」

「…ウィル、言いたくはないですが、もっと考えてください。」

「そうだぞ、ウィル!いくら女が苦手だからって、さすがに王国の一部の女しか見ずに決めるのは早すぎるんじゃないか?」

「いや、だがもうあんなことは二度とごめんだ。それならいっそ結婚などしないほうがいいだろう。」



ウィルは女嫌いになったきっかけの事件を思い出しながら言った。

その時、三人の間で深い沈黙の時間が五秒ほど続いた。




「.....あれはウィルが悪かったわけではないでしょう?むしろ本人のいないところで勝手に争っていたのはあちらの方です。それでどうなろうとウィルの知ったことではありませんよ。そんなことで気に病まないで下さい。」



レオンが最初に沈黙を破り、悪い空気を追い払うように優しくウィルに語りかける。



「あー、あの事件なぁー。確かにウィルの知ったことじゃないしなぁ、気にしても無駄だぞ!」

「本当に!それよりも、養子をとるとらないの話です!もう少し考えてください!」

「実は父上にも同じことを言われた。結婚しないことを伝えたら、次の日、机の上に大量の令嬢の姿絵が置かれていてうんざりしたんだ。」

「陛下...」

「ならウィルはどんな女だったらいいんだ?」


レオンが国王陛下の空回りな行動にあきれている中、ジョンからの質問に対してしばらく考えたウィルはぽつぽつと言葉を発し始めた。


「そうだな...。俺に媚びず、賢く誠実で、一生懸命な女性がいいな。」


そんな女性は貴族の中にはいないだろうとわかっていたが、それでもウィルはそんな女性を望んでいた。


「まぁ、じゃあ、そんな女がいたら探しといてやるよ。」

「そうですね。私も出来るだけそういった女性を見つけられるよう努力します。」

「ああ、まああまり無理はしないでくれ」


できれば自分の理想の女性探しなどやめて欲しいウィルだったが、どうせ見つからないだろうと思いながらも、友人二人の真剣な様子に、それ以上は何も言わず静かに頷いた。











え!ジョンお見合いしちゃうのか!?自分で書いててなんだか寂しくなりました。

次話もよろしくお願いします!

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