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5.ウィリアム・ルーギニア・デ・ライト・セレスト

やっと王太子殿下登場です!王太子がセシルと出会うまで四話くらいあります!

少し長くなりますが、この部分は二回まとめて更新します。楽しんで読んでいただけると嬉しいです。

誤字脱字があれば教えてください!読んでくださる皆さんのコメントお待ちしています。よろしくお願いします。






「おーいウィル!お前に仕事持ってきてやったぞー!」

「あぁ、ジョンか」



 名前を呼ばれた青年は振り返り、駆け寄ってくる青年を見るとその名前を親しげに呼び返す。

 青年の名はウィリアム・ルーギニア・デ・ライト・セレスト。セレスト王国の第一王子であり、王位継承権第一位でもある王太子である。長い名前のためか、部下や護衛からもウィリアム王子と呼ばれることが多く、親しいものにだけはウィルという愛称で呼ぶことを許していた。



 そして、王太子への態度とは到底思えないほど気軽に話しかけてきた青年はジョン・フォン・ローエン。

 セレスト王国ローエン侯爵家の長男であり、バッサリと切られたブラウンの髪とワインレッドの瞳をもつ美丈夫な青年だ。現在、セレスト王国第一近衛騎士団の副団長を務めていることもあり、周囲からは将来は団長となり、ウィルを支えていくだろうと出世を期待されている一人でもあった。



「まったくジョン、あなたという人は。ウィリアム王子に対して失礼ですよ。礼儀をわきまえなさい。」

「えーいいだろ別に、今は三人だけなんだから」

「そういう問題ではありません。」



 その時、王太子への態度に痺れを切らしたのか、青年がジョンに注意を促した。

 本来、王宮を護る第一騎士団副団長であるジョンは気軽に話をできる人物などではなく、そしてまた、王太子のいる場でこんなにも落ち着いて発言できるものは多くない。

 しかし、それもそのはず。彼もまた、同じように出世を期待されているうちの一人であり、この国を支えていく重要な役割を担っていた。

 レオナルド・フォン・バーミラン。セレスト王国バーミラン公爵家の長男で、深い緑の瞳をしており、光輝くほど鮮やかな金髪を後ろで一つに纏めている。その整った容姿からジョンと並んで貴族女性からとても人気があり、将来は宰相になるとまで言われ、頭のキれる優秀な男であると国王からも認められていた。



レオナルドことレオンは学問だけでなく、武術も嗜んでいるため文武両道の男であり、そのレオンもまた、ウィルを支えていくだろうと言われている一人であった。



三人は昔からの幼馴染であり、ウィルが唯一家族以外で信頼を置ける人物で、良き友人でもあった。



「まあ、今は俺たちだけだからいい。レオンもいつものように気軽に話してくれ。」

「お!それはありがたい!慣れない話し方すると疲れるんだよな」

「あなたがいつ慣れない話し方をしたんですか。今日のことローエン侯爵に伝えておきますからね」



口調は変わらないが、レオンはいつものように軽くジョンを脅した。ジョンはすぐに「げっ!オヤジにだけは言わないでくれよ!」と心底嫌がったが、レオンは意に介さず、淡々と仕事をこなしていた。



ジョンの父親であるローエン侯爵は今年で齢五十歳ほどになるが、まだまだ若々しく、秩序と風紀を重んじる厳格な人物とされている。その威厳あるローエン侯爵は現在近衛騎士団団長の地位に名を置いている、ジョンの父親であると同時に直属の上司でもあるのだ。



「ジョン、ローエン侯爵はお元気にされているか?」

「あー、まぁ、元気がありすぎて俺が困ってる。ウィル、オヤジに仕事たくさん回して、ずっと机に張り付かせておいてくれよ。親父が剣を持つと俺を含め騎士団ほぼ全員が使い物にならなくなるんだ。」

「ジョンがもっと強くなれば、疲れることもなくなるんじゃないか?頑張れよ。」

「無理だ!あれは悪魔!親父と剣を交えて長時間まともに戦っていられるのなんてウィルくらいだぞ!」



テンポの良いような悪いような会話がウィルとジョンの間で繰り広げられる中、レオナルドが話の間に入り、本題に入ろうと口を開いた。



「それで、ジョン、あなたは一体何をしにきたんですか。」

「あーそうそう、調べとけって言われた件だけどな、あれやっぱり間違いじゃなかったみたいだぞ〜」



ジョンはいつものように軽い調子で答えたが、反対にウィルとレオンの顔は険しくなった。



「やはりマイヤー伯爵が関係していたな」

「ええ、この金の減り方はどう考えてもおかしいですからね。」

「マイヤー伯は少しずつやればバレないとでも思ったんだろうな」

「低能はどこにでもいますからね。」


ふっと、ウィルが嘲笑うように鼻で笑った。




隣国クロディエル王国との交易でセレスト王国から送られる金の量が気付かない程度に少しずつ減っていたのだ。反対にクロディエル王国からマイヤー伯爵領には、大量の絹が密輸入されていることが最近発覚した。絹は贅沢品で、セレスト王国では王族や公爵などの高位貴族でも滅多に手に入らないものである。



しかし、それがマイヤー伯爵に流れていたとすると、


「何を対価に取引したかですね。」


ウィルが考えていたことの続きをレオンが言葉にする。


「ああ、それが分かれば伯爵の不正を暴き、税に苦しむマイヤー伯爵領の民も救えるだろう。」



ウィルはいつでも国民のことを一番に考えて行動する。そのために、今まで横領や人身売買、不正取引、密輸といったことをしてきた貴族が次々に不正をウィルに暴かれ、処罰されてきた。


その結果、不正を暴かれた貴族からは妬まれ、何かと不満の声も上がるが、国民からは絶大な支持を受けているため、将来ウィルが国王となってもこの国は大丈夫だろうとジョンとレオンは考えている。


あれこれとレオンとウィルが話を進めていくなか、ジョンは一人、マイヤー伯爵という言葉に反応をした。



「なぁ、マイヤー伯爵って言えばさ、なんか領民の間で妙な噂が広がってるらしいぞ。」

「なんですか?妙な噂って。またくだらないことじゃないですよね」

「お前…俺のことをなんだと思ってるんだ…」

「あなたが昔からくだらないことしか言わないからですよ」



ジョンは「ひでーな」と肩を落としながらも話を進める。


「まあそれで、マイヤー伯爵邸の端にある小さな塔には、少女が閉じ込められているっていう噂があるんだよ」

「あぁ、それなら私も聞いたことがあります。なんでも伯爵は家に着いても邸宅に帰らず、塔に入って出てこない日もあるとかないとか。でもまぁ、きっと不思議に思った御者が話の種にしようと、自分の想像で言いふらしているだけだと思いますが……」

「いや、俺もつい最近までそう思ってたんだよ」

「何か気になることがあるのか?」



そこで初めてウィルは口を挟み、ジョンの話を本気で聞こうと執務机から顔を上げた。それを見たレオンもジョンに同じように目を向けた。




「最近、助けて欲しい人がいるって俺に言ってきたやつがいたんだよ。で、そいつがフィル・フォン・マイヤーって奴だった」



















私はジョンが意外と好きなキャラなんですが、読者の皆さんはいかがでしょうか?

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