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3.オリビア・フォン・マイヤー伯爵夫人

ドブリスの妻であるオリビア・フォン・マイヤー伯爵夫人は、ドブリスを深く愛していた。オリビアは仕事へ出かけるドブリスを毎朝見送っている。


「ねぇ、ドブリス、今日は何時ごろ帰ってくるのかしら?」


「あぁ、今日は少し遅くなる。先に寝ていてくれ。」


「……分かったわ。」



 オリビアはドブリスの帰りが遅くなる理由を知っていた。理由は塔にいる女だ。初めは愛妾を取ることを許していたオリビアだったが、ある日ドブリスが信じられないほどその女に愛を向けていることを知り、オリビアの心は不安と焦りに支配された。



「ドブリスはまだ帰らないの?」

「はい、先程旦那様から連絡があり今夜は帰らないと......」

「そう......」



 日を増すごとにドブリスの帰りは遅くなっていき、何日も帰らない日が出てきた。


 幸い、ドブリスとの間には息子であるフィル・フォン・マイヤーがいたため、まだ正気を保っていられた。


しかし、ドブリスがセシルの母親への想いを絶たず、自分へ想いを向けてくれないことへの嫉妬と憎しみがだんだんとオリビアの心へと広がっていき、セシルの母親がセシルを産んだことを知った時、ついに怒りと憎しみが心を完全に支配した。




それからオリビアは毎日のセシルの母親への食事に少しずつ毒を入れ始めた。毒は少しずつ、けれど確かに体を蝕み、病死に見せかけるようにして殺した。そしてセシルの母親が死んだことでオリビアの心は満たされた。はずだった。



しかしセシルの母親を殺した後もドブリスの塔への通いは終わらず、それどころか以前よりも訪れる頻度が高くなっていった。


オリビアはその事実を許すことができず、次第にセシルが生きていることにさえ憎しみを抱き始めていった。


赤子のセシルを殺すため、栄養失調で自然に死ぬことを狙うことにし、毎日食べる離乳食などは出来るだけ質素にするようにと料理長やメイドにも指示を与えた。



しかし今回はセシルの母親の時とのように上手くはいかず結果は誤算に終わった。それはドブリスが頻繁にセシルの元へと通い世話したことが原因だった。その後、セシルはオリビアの思いとは逆に死ぬことなく美しい少女へと育っていった。




セシルを葬ることに失敗したオリビアは一度はセシルの殺害を諦めた。だが、セシルのいる檻の中へ入ろうと扉を少し開いた時、少女のことを「セシル」と呼び、ベッドの上で少女を抱いているドブリスを見て、オリビアの心はまた暗い闇の中へと沈んでいった。




それから、一月に二、三回オリビアはセシルのいる塔へ行き、日に日に成長していくセシルの白く美しい豊満な体を妬ましく思いながら罵倒し、暴力や鞭をふるった。体を縮こませて震えるセシルをいたぶるのはとても楽しく、次第にその行為へと優越感を覚え傷やあざだらけになり倒れるセシルを見て、自分の方が美しく強いと思うことでどこか穴の空いたような心の内を満たしていった。


オリビアは自身の心を制御しきれず、ドブリスの気を引くために以前のオリビアであればしないようなこともするようになっていった。


屋敷の私兵を一週間に一人は部屋へと招き、関係を持つようになった。僅かなの失敗でもしたメイドには暴力を振り罵りいたぶる。その結果、メイドたちからは徐々に距離を置かれ、影では魔物が取り憑いたのだと言われて恐れられるようになった。



「奥様って以前からあんなに怖い方でしたか?」

「しっ!あんたもし奥様の耳に入ったらどうするのさ!」

「でも前まではもっと威厳があってお優し言われて方だった気がします」

「それは私も思うけど…やっぱり旦那様が原因だと思うわ」



ある日、二人のメイドはオリビアの最近の変化について話していた。オリビアの変化については屋敷中で密かにささやかれるようになっていたが、屋敷のことに無関心なドブリスはそのことを全く気にしておらず、それよりも美しく成長していくセシルのことしか考えていなかったため、オリビアの変化について気づくことはなかった。




ある日、オリビアはマイヤー伯爵家を守る私兵たちに塔の鍵を渡し、セシルを好きに扱っていいと言った。他にも仕えているメイドには家の中にあるいらない本などはすべて塔の中に入れておくよう指示を出し、とにかくセシルが苦しむことを望んだ。






ドブリスから愛を向けられなくなったオリビアは、真っ赤な唇を歪ませながら小さく笑った。















毎日1つは投稿出来るように頑張りますので、よろしくお願いします!

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