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副作用なし、対ウイルス新薬が完成した。

作者: さきら天悟
掲載日:2020/05/07

「早く、患者にアビガンを投与するべきじゃないですか」

司会者は食ってかかった。


「アビガンに効果があるというデータはありません」

G医師は冷静に言った。


「タレントのAさんは、ブログでアビガンで良くなったっていってるじゃないですか」

司会者は詰め寄ろうとするが、足をとどめる。


「私もブログを読みました。

確かにアビガンの治験に参加されています」

G医師は淡々と言う。


「だから治験でアビガンを飲んだんですよね」

司会者は首をひねる。


「いえ、飲んでいない可能性があります」

G医師はまっすぐ司会者の目を見た。


「飲んでいない?」

司会者の声のトーンが上がった。


「ある一定数の患者に薬の効果を客観的評価するため、

まったく効果がない偽薬を患者にその事実を知らせず与えます。

偽薬でもプラセボ効果で症状が改善することがありますから」


「プラセボって、ビタミン剤でも立派な医者が患者に与えると、

患者が薬と信じて治っちゃうやつ?」

司会者は声のトーンを落とした。


「そうです。

人間の体には不思議な力があります。

だから、真に薬の効果を確認するため、一定数の人に偽薬を投与するのです」

G医師は微笑んだ。


「まだアビガンに効果があるというのは、早いんですね」

司会者は納得したようだった。




日本のワイドショーでこんなやり取りが行われている中、

ある科学者は対ウイルス新薬が完成したと発表した。

しかも、副作用はないという。


でも、はじめから怪しかった。

彼は科学者と言ってもIT関係で、

医療に関係した経歴はまったくなかった。


でも、患者はすがってしまう。

怪しいモノでも藁にもすがるように。

手の届かない金額でもないのだ。

当然保険適用さないが、3万円程度だった。



患者が押し寄せた。

完治率は35%と低い数字だったが、

まったく副作用なく、

3万円。

だったら、皆、訪れたくなるわけだ。


始めはカウンセリング、

それから新薬の投与のようだ。

というのは詳細の治療内容は明かにされなかった。

しかし、ぞくぞくと患者は詰めかけた。



ある記者は初めから変だと感じていた。

そして、潜入した。

処方された薬を飲まず、

持ち帰り研究所に解析依頼した。

すると驚くべきことが分かった。

薬はたんなるビタミン剤だった。

記者はその事実を公表した。

プラセボ効果によって

症状が改善していると。



批判にさらされた科学者は会見を開いた。


「確かに新薬と称したモノは、単なるビタミン剤です。

しかし、効果があったのは事実です。

35%の人が改善したのは紛れもない事実です」

科学者は深く頭を下げた。

「即座に治療を中止します」

と言い残し会見場を去っていった。




何が悪いんだ。

通常プラセボ効果は10%程度だという、

それを35%に引き上げたんだ。

まあ、俺の得意分野、

VR・ヴァーチャルリアリティを使った催眠術で。

ようは治ると信じ込ませればいいだけ。

そうすれば人間の免疫力は勝手に上がる。

それを応用しただけ。

35%、2000人以上を副作用なしで救たんだ。

何が悪い。


彼は悪びれもせず思った。


まあ、薬が日本製と言ったのが、一番効果があったかな。

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