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チュンチュンと小鳥の囀る麗しき朝。
結果としてペィティリアがその小説を読み終えたのは、すでに日が昇ったあとのことであった。
そして一夜開けた今、おそらく皆が気になっているのは『小説の内容がどうだったのか』だろう。
結論から言いましょう……。
…………とっっっても良い作品でした。
勿論、これだけではきっと皆様に伝わらないのでさらに具体的に申しますと……二人の行く末に大号泣し、日が明けるまでの間に何度も何度も読み返して、結局徹夜してしまったほど……ペィティリア好みの素晴らしい作品であった。
つまり『読み終えた』というのを事実に合わせ正確に言い直すと、『(彼女の気が済むまで)読み(、)終えた』ということになる。
いや、そもそもシラ様が素直になれないペイティナを終始一途に想い続け、デロデロになるまで愛しているこの作品。【華園】の、もといウェイン様の熱心なヲタクであるペィティリアの性癖に突き刺さるのも、柳は緑花は紅といったもので……。
前世で別段夢女子だった訳ではないペィティリアだが、名前のよく似た……というよりも自分自身が主人公となっているこの本のおかげで、夢女子の方々の気持ちが一晩で理解出来てしまう程度には、彼女にお誂向きの小説であることは明白であった。
(二人の関係が殿下にばれてシラ様が不義密通の罪で両目を潰され、投獄からの流刑にされた時のペイティナの健気さときたら……本当に、何度思い出しても泣けるわ……。
自分も幽閉されていた上に、殿下からは乱暴されていたのに…あんな………。あ、駄目だわ泣いちゃう……)
この世界に転生してからは侯爵家の教育の一環として渡される難しい実用書ばかり読んでおり、こういった娯楽小説を読む機会も暇もなかった為の新鮮さか、はたまた単にこの小説がペィティリアに合っていた為なのか……。
前世今世とあわせてもこれほど気に入った小説はないという程、彼女はこの本を気に入っていた。
そして元々小説を読む時は登場人物達にかなり感情移入してしまう上に、多少影響されてしまう『没入型』の彼女。
結果として、『あぁ……、朝焼けが……美しいわね……((しみじみ』モードへと突入してしまい、徹夜明けということも相まって、王太子殿下からの伝言に抱いていた違和感のことを彼女は完全に忘れ去っていた。
その違和感こそが、俗に『虫の知らせ』と呼ばれるものだった事も知らずに……。
今回より、投稿の仕方を少々変えさせて頂きました。
結果として1回に投稿される小説の長さは短くなってしまいますが、応援して下さると嬉しいです。
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