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レラシオン~時の使者~  作者: 時々
勇者と魔王編
9/19

指名依頼

一日遅れですが、明けましておめでろうございます。

今年も一年、よろしくお願い致します。

 5年前から何一つ変わっていない冒険者カード。その内容の意味不明さに思わずレイナはため息をつきたい気分になった。

 初めて彼らのギルドカードを見た時は叫びそうになったが、そのあと色々あって(脅迫じみたことをされ)この内容はこの冒険者ギルドではマスターとレイナしか知らない。 

 そもそも神からの恩恵である冒険者カードに記載されない内容があること自体がイレギュラー。年齢すら不詳とは。ただでさえおかしいことだらけのカードの内容の中、ひときわ目立つ“ランクX”の文字。今レイナの前に立っている人物が目撃者皆無の存在するかどうかさえ分からない3人目のランクXであり、しかもほかの2人のランクXよりもはるかに強い存在であることを知ったらここにいる人たちはどんな顔をするだろうか。そんなことを想いながら、レイナは孤立ギルド“幻想”のメンバーの冒険者活動再開の手続きを済ませた。このまま何もなければいいなぁと思うがここは冒険者ギルド。彼らに近づいてくる男たちを見て、あぁ、無知って恐ろしい……そう思いながらレイナは巻き込まれないようにそっと目を背けるのだった。



「これで手続きは終了です。では頑張ってくださいね。ではこれで私は失礼します」


 そう言いながらそそくさと奥に引っ込んでいくレイナの後ろ姿を見ながらノワールは今後の計画を立てるために近くのテーブルの方へ歩いて行く。すると後ろから誰かが近づいてくる気配。レイナの顔が引きつっていたのはこれが原因か、と思いながらも話だけは聞こうと後ろを振り向いた。


「おいおい。ここは子供の遊びできていいところじゃねぇんだよ。わかったら―……ぶぼぁあぁっ!!」


ドカンッバキ!!  ヒュー―――ドゴッ!

 

ドォーーーーン   ガクッ


ドン!!!


!!!!????     ガタガタ!


シーーーーーーーン


ふるふるふるふる!


 ノワールが面倒そうに振り向くとそこにはカオス染みた光景が広がっている。一瞬の出来事だった。


 まず振り向いたら大柄ないかにも頭が悪そうなスキンヘッドのおっさんがいた。なんか面倒そうなのに目つけられたなぁと思っていたら、猛ダッシュで近寄ってきたこれまた筋肉隆々の男がスキンヘッドの言葉が終わらないうちに持っていたハンマーらしき鈍器でむき出しの頭を強打! 続けて膝蹴りで吹っ飛ばす。

 壁に向かって吹っ飛んでいくスキンヘッド。そのまま当然のごとく壁に激突。体は丈夫なのかダメージは対して負っていない様子。

 そこまでいくと“何も知らない連中”が興味を持って野次馬根性丸出しのままはやし立てようとした。


 瞬間、ノワール以外の人にはあまり関わろうとしないため大人しかったノアたちの怒りが殺気となって部屋中に解き放たれる。これでスキンヘッドは気絶。桁外れの威圧感により野次馬ども、全員強制着席。そして“経験者”どもは巻き込まれないように全力で危害を加える意志がないことをノアたちにアピール。


 訪れる沈黙。誰も何もしゃべらない。


「とりあえず、お前ら殺気を解け。……せっかく外に出てきたのに台無しだよ」


 ノワールは基本、面白い出来事が好きだ。なのでむしろ絡まれたかった側だったのだが。

 彼が力のこもっていない声でつぶやくと、充満していた圧力がなくなる。やっと動けるようになった男がノワールたちの前までやってきた。


「よ、よう。久しぶりだな。相変わらずよく絡まれやがる」


「ガラクも苦労性は相変わらずだな。まさか冒険者ギルドマスターがすっ飛んでくるとは。……っち、余計なことしやがって」


「おい聞こえてんだよ。お前がよくても後ろの嬢ちゃんたちが許さんだろうが。またこの建物を崩壊させるわけにはいかねぇんだよ」


 ガラクはため息をつきたい気分で少女たちにじと目を向けるが、ノアたちは気づいてもいない。そこでふと見覚えのない二人に初めて気づく。


 その視線には気づいたのか、はたまた先の視線は無視したのか知らないがとりあえずガラクの視線の意をくみ取り初対面のユヅキとコハクが名乗る。


「はじめましてなの。名はユヅキ。よろしくなの」


「はじめまして。コハクといいます。ユヅキとは双子の関係になります。私が妹です。姉同様、よろしくお願いします」


 ノワールと接しているときとは別人のような冷たい表情でそっけなく自己紹介をする双子。基本人見知りなのだ。

 ガラクはアイとノアの前例があるため全く気にせずに再びノワールたちを近くのテーブルに誘い唯一気軽に話せるノワールと話し始める。



 一方周囲の冒険者たちは“事情を知っている者”は巻き込まれないようにするため“事情を知らない者”のために普段はケンカをするような仲だろうがお構いなく事情説明を全力で行う。


「いいか。お前ら死にたくなかったらあの子たちには絶対に手を出すなよ」


「貴族の息子や娘なのか?」


「ちげーよ! それだったらどんなに良かったか。いいか……ただ単純に“実力”が規格外なんだよ! 舐めてかかったら明日の朝日は拝めないぜ」


「はぁ? まだ全然子供じゃねえか!」


「はぁ。無知って怖いなぁ。いや俺も前科あるから他人のこと言えたもんじゃないがな? とにかくだ。この王都を拠点にしている冒険者は全員あいつらの実力とケンカを売ったやつの末路とその結果、被ることになる被害のでかさを知ってる。騒動起こすならよそでやれ。俺たちを巻き込むなよ。ちなみにあの中ではリーダーである少年、つまり孤立ギルドマスターであるノワールが一番強い。これも参考までに言っておくと奴らとまともに話すなら彼だけにしとけよ」


 そう言って自分たちの仲間の元に帰っていく“知っている者”の背中を呆然と見送る“知らない者”の姿があちこちに目撃されていた。


 事態が終息していく現状にほっとしていた王都が拠点の冒険者は気づいていなかった。再び開く冒険者ギルド本部の扉。入れ替わるギルド内の空気とともにまたしても厄介ごとが舞い込んできたことに。



「ノワール、お前たちに依頼したいことがあるんだが」


「別にいいよ。僕たちも久しぶりの依頼だ。軽いのにしてくれよ?」


「なにいってんだか。大体ギルドハウスが“静謐の森”にある時点で体がなまるも何もないだろう。人が住める環境じゃないんだぞ、あそこは。ってそんなことはどうでもいい。数日前とあるAランクパーティーがたった一人を残して全滅したことがあってな。実力的には問題なかったはずなんだが、原因がわからん」


「盗伐対象はどんな魔物だったんだ?」


「デミットマター。討伐難易度A。どうだ?」


「肩慣らしにはちょうどいいかも。しかも確かにAランクパーティーが壊滅しているときてる。ま、僕たちが調査もかねて狩ってくるよ」


「狩るとか。そんな動物みたいな言い方するな。とにかく任せた。これは氏名依頼にしておくから「ちょっと待ちなさい!」 ???」


 突然割り込んだ声がきこえてそちらの方を見ると見知らぬ女性?女の子?まぁとにかく知らない子が立っていた。

 突然の乱入者はガラクの前に立って毅然と話し始めた。


「私はギルド“六魔(りくま)覇者(はしゃ)”のマスター、セルリア・トパーズですわ」


 そのギルド名と名乗った人物の名前に周囲が沸き立つ……が大半は今から起こる展開が読めたのであきらめの境地だった。冒険者ギルドから出ていく者すらいた。


 六大魔法家。それぞれ、火、水、雷、地、天、風に特化した魔法を使い、その実力と生まれながらに備わった一族の才能は他の者を軽く凌駕する。そして六代魔法家のみで構成されているギルドが“六魔の覇者”だったりする。ギルドランクはS。ほぼ最高峰。さらにギルドマスターは冒険者ランクXであることは世界の常識だ。


「それで、水の一族でもあるトパーズ家の跡継ぎでもあるお嬢さんがどういったご用件で?」


「話は聞いていたわ。Aランクパーティーが壊滅したほどのクエスト。それの調査にこんな子供を向かわせる? あなた正気なの?」


 ひどい言われようだ。だが見た目だけなら僕と似たようなものだろ、とノワールは思ったがガラクの反応と周囲の反応が面白かったので、ノアたちの殺気だけ抑え込みながら黙って話を聞いておく。


「正気もなにも、俺が指名依頼としてこいつらに頭を下げて頼み込んでいるんだ。冒険者マスターとしな。いくら銘家のお嬢様だからって規則は守るものだぜ」


 堂々と言い切るガラク。その態度を見るなりセルリアは話の矛先を変えた。最悪な方向にだが。


「大体、この子たちからは全く魔力が感じられません。それに、それは孤立ギルドの刻印……話になりませんわ!」

 

 ノワールたちを明らかに馬鹿にしたような発言。途端に慌てだすガラクとその周囲。その慌てようを図星とみたセルリアは畳みかけようとしたが、それよりも前にガラクがまくしたてるように速攻で考えた提案を言い放つ。


「分かった。じゃあこうしよう。合同でクエストを受ければいい。もしノワールたちが危なくなってもお嬢さんたちなら守れるんだろう?」


「足手まといはいらないんですけれど。仕方ありませんわね。そこのあなた。当日はせいぜい邪魔だけはしないようにしてくださいね。」


 最後にノワールのほうに向かってそう言い放ち彼女たちは帰っていった。セルリアの帰り際にその背に向かって「一週間後ここで待ってるよ」とノワールが言って会話は終了。

 そしてこの場の雰囲気も終了していた。



 そのあと簡単なやり取りをガラクとして僕たちは冒険者ギルドを出ていった。

合同クエスト。なかなか面白いことになったがこの後、殺気が今にも爆発しそうな後ろの4人を見てノワールの口から少しため息が出たのだった。


読んでいただきありがとうございます。

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