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レラシオン~時の使者~  作者: 時々
勇者と魔王編
11/19

デミットマターの変異

「ねぇねぇ、―――は冒険者って知ってる?」


「いや、知らないよ。何をする人なの?」


「えー! 知らないの? 冒険者だよ、ぼ・う・け・ん・しゃ!」


「もったいぶらないで教えてよ。僕は世間に疎いんだ」


「もう、仕方ないなぁ。よし、分かった! この瀬奈お姉さんが教えてあげよう!」


小ぶりな胸を精一杯張って、お姉さんっぽく振舞おうとする瀬奈。まぁ実際彼女のほうがお姉さんだったが。


「冒険者はねぇ、ずばり世界を見て回る人のことだよ!」


「それって何か意味あるの?」


「世界はすっごく広いんだから! 私も君も知らないことがたーくさんあるの。美味しいもの、美しい景色、未発見の遺跡……そのほかにもまだまだ世界には秘密がいっぱい広がっているんだよ。それらを探求していくのが冒険者。私の夢は冒険者になることだったの。でも君と旅してるからある意味冒険者になったようなものか。やだっ、私ったら今驚愕の事実に気づいちゃった。もう夢叶ってるね!」


そう言いながら僕の隣で少し頬を赤く染めながら照れ隠し気味に僕に微笑む瀬奈。

そして――――



♦♦♦



「マスター、朝だよ! 起きて!」


 アイの元気な声で僕の意識が完全に覚醒する。今日は、とても良い夢を見た気がする。思い出してみようとしたが無理だった。まぁ夢ってものは思い出せないものだから仕方ないと思いつつ身だしなみを整えてからみんなのもとへ向かう。


「「「「ごちそうさま(です)!」」」」」


 料理は基本、ユヅキが作る。家事全般はコハク。実はこの双子、火事スキルが半端ではない。コハクが家事を得意にしているのはわかる。僕たちの中で一番しっかりとしているのが彼女だし、雰囲気からして想像できる。

 だが、ユヅキが料理得意なのは意外である。ちなみに家事が完璧なコハクだが料理だけはできない。


 僕も料理は一応できるがユヅキには遠く及ばない。どうせならおいしいものを毎日食べたいという気持ちから、我がギルドの食卓はユヅキ任せになっているのだ。


「よし、今日は合同依頼のために冒険者ギルドへ行く。支度はできているか?」


「マスター、私たちは大丈夫です。いつでも出発できるように昨日準備を済ませてあります。」


 コハクが代表になって答えるとアイ、ノア、ユヅキも首を縦に振る。僕も昨日済ませたから、これで全員の準備が整ったことを確認したことになる。


 扉に手をかけそのまま開く。きれいに澄んだ風が耳をくすぐる。

 5年ぶりの冒険者活動。

 感覚は鈍っていない。

 体調は万全。


「転移」


“静謐の森”から一瞬で王都周辺まで移動する約束まで30分ほど、まぁ間に合うだろう。




♦♦♦




 冒険者ギルドの扉を開いた瞬間に突き刺さる視線。どこからか僕たちの合同依頼のことを聞いたのか野次馬も沸いているようだ。


 その中で周囲と醸し出している雰囲気が異なる冒険者が6人。その横に立っているのは見知った顔だったので、静かに近寄っていく。


「よう、ノワール。お相手さんたちはこの通りもう来ているぜ」


「ガラクか。朝早くからご苦労さん」


 こちらに気づいたガラクとあいさつをしているとほかの六人もこっちに気づいたようで観察するように見てくる。そして一応顔見知りのセルリアが代表として自己紹介を始める。


 要するにこの六人は六代魔法家の次期当主らしい。男3人、女3人。パーティーリーダーはセルリア・トパーズ。


 火の一族、カガミ・フレア。水の一族、セルリア・トパーズ。風の一族、ネネリー・フーカ。この3人は女性。


 土の一族、トム・ノーム。雷の一族、レイ・ミカド。天の一族、ソラ・クーマ。

 この3人は男性だ。


 全員同期で学院に通っているらしい。


「へー、君がノワール君か。失礼なこと言うようだけど、こんな依頼受けるなんて危険だと思わなかったの?」


 ネネリーと名乗った女性がが少し怒った風に僕に問いかけてくる。


「それに後ろの女の子たち君より小さいよね? 危険にさらそうとしてよくこんな平気な顔してられるわね。今回は私たちがいたからよかったものの―」


「ネネリー、それくらいにしておきなさい。依頼についてくるのだからそのあとで身の程を知るといいですわ」


「セルリアの言う通りだ。説教は依頼が終わった後でだ」


 セルリア、ネネリー、トムには完全に嫌われたらしい。そのほかの3人も僕にはとても友好的な目はしていない。アイたちの存在も無関係ではないだろう。おおかた僕が勝手に連れまわしているように見えているのかもしれない。

 僕としてはそんなこと一切どうでもいいが。実際勘違いする輩は多い。強面でもなければ自身のランクの公開もしていない。ただ確認したいことは一つだけあった。

 僕たちがほかの冒険者と一緒に行動するときに必ず確認することが一つある。


「“六魔の覇者”のメンバーのみなさん初めまして。孤立ギルド“幻想”のマスターであるノワールだ。ガラクから聞いているだろうからアイたちの自己紹介は省略させてもらう。君たちがどう思おうが勝手だが、僕からは一言だけ確認させてもらう」


 一泊おいてから再び口を開く。


「僕たちが何をしても“何も聞かないでくれ”。君たちの質問には一言も応える気はない」


「その条件でかまいませんわ。どうせ私たちが戦うのです。ではさっそく行きましょう。移動手段は確保してありますので」


 有無を言わさぬ声音で冒険者ギルドの外へ向かおうとするセルリアのパーティー。外に置いてあった大きな馬車2台で目的地まで行くつもりらしい。


 んー、こっちのことはいないも同然の扱いをするってわけね。向こうが勝手にやるなら僕も勝手にやっていいよね、的な視線をガラクに送ると、やれやれと首を左右に振っている姿が目に入る。周囲の反応もおおむね予想通りといった感じだ。5年前までは僕たちが頻繁に使っていたから知っている人がほとんどだろうが。


 時魔法、転移。


 僕は脳裏に目的地の森を思い浮かべる。魔力を練り上げ静かにつぶやく。


「転移」


 移り変わる景色。もちろん僕たちだけではない。彼女たちも巻き込む集団転移だ。


 目の前に広がるのは見慣れた街並みではなく目的地の森。僕たちの前で固まっている6人の冒険者は今だに状況が理解できないのだろう。どこか呆然としている。


「馬車なんて必要ないですよ。こっちのほうが早いですから」


 ノワールの言葉でようやく我に返ったのかセルリアが問いかけてくる。


「あなたはなにを……したのですか?」


 それが全員の言葉を代弁したものだというのにはにづいているが、説明する気はない。


「最初に確認したはずです。僕は質問には一切答えない。それにもう森につきました。ぼさっとしてないで先行きますよ」


 そういって僕が進むと慌てて追いかけてくる。そんな彼女たちの様子を見て溜飲を少し下げているアイたちに胸をそっと撫でおろす。


♦♦♦


 順調だった。さすがはSランクギルドのメンバー。多彩な魔法を操り次々と現れる魔物を難なく撃破していく。僕たちの出番は全くない。転移については触れない、というより見なかったことにしたらしい。


 しばらく進むとノアたちの目が細くなる。どうやらデミットマターの気配をとらえたらしい。もちろん僕も補足している。

 周囲の気配に溶け込めていない異分子の存在を見逃すことは無い。


「あれは、見つけましたわ」


 セルリアが声を上げると全員が今回の盗伐対象を認識する。デミットマターが2体。複数体いたのでノワールが前に出ようとすると、ネネリーとセルリアがノワールの前に立つ。


「足手まといはいりませんわ」


「後ろにいて!」


「……わかった」


 その言葉に素直にうなずく。


「マスター、よろしいのですか? 彼女たちではアレには絶対に勝てませんよ?」


 コハクがそう言ってくる。実際その通りだ。僕たちは当然気づいている。アレはデミットマターなどではない。正確にいうと亜種みたいなもので突然変異だ。外見的変化がないから普通は気づかない。そしてデミットマター変異種の討伐ランクは測定不能。とてもじゃないが個人ランクがSに届かないものが挑むような相手ではない。


「にぃに、あのこたちが、どこまでやれるか……みるつもり?」


「正解。気になるからね。六代魔法家の次期当主の実力が」



 セルリアのはなった水の魔弾を合図に、戦いは幕を開けた


読んでいただきありがとうございます

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