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八缶

「……え?」


 何かの違和感に気づき、目を覚ますと俺が眠っていた洞窟……ではない景色が広がっていた。膝の上で寝ていたはずのクルネの姿もなく、周囲は何もなく真っ白な床がどこまでも続いている。

 その床を優雅に、ではなく全力疾走してくる一人の少女。


「ふお!?」

「はいどうもー!!」


 まるでブレーキでもついているんじゃないかと思うほどキキィッ! と音を響かせ止った。もう少しでキスをしてしまうんじゃないかと言うほど顔が近い。

 ものすごい美少女だ。白銀の長い髪の毛が良く似合う。

 ただし貧乳。

 神々しく俺よりちょっと小さいぐらいに見えるから百六十五センチぐらいか? まあそれぐらいはあるであろう少女。タイツのようなものを身に纏っており、へそや足の部分などに色々と穴が空いている。

 露出狂かな? 全身タイツは中々エロいけど、もうちょっと色気のある。


「へぶっ!?」


 突然蹴られた。なんで? あれ? てか痛い? 俺防御特化のステータスでスキルもあるのに。


「ふふん、不思議そうな顔しているね。まず、ボクに色気がないって思った無礼を詫びなよ!! ほれ! 土下座!!」


 な、なんで俺が頭で考えていたことを。


(そりゃあ、ボクは神様だからね。君が考えてることなんてお見通しさ)

(こいつ、直接脳内に……!?)

(君だってやってるじゃないか。飲み込みが早いねぇ。感心感心。でも、土下座しなよ!!)

(くっ! なんで俺が土下座なんか!)

(代わりに踏んであげるから土下座しなよ!!)

(いいだろう!!)


 彼女は確かに貧乳で色気が足りない。

 だが、美少女だということは真実。ならば、俺は自分の欲に忠実となろう。


「これが俺の全力土下座だぁ!!!」


 効果音があればびたーん! とでも鳴りそうなほどの見事な土下座をした。そして、謎の美少女から踏んづけられるのを今か今かと待っている。

 生まれて十八年。

 美少女に踏んづけられるなんて初めてだ。さあ! カモン!!


「よし、じゃあ話をしよう」

「え?」


 しかしながら、彼女は踏んづけてはくれず目の前に座った。ちょこんっと綺麗に正座をしていた。


「どうしたのかな?」

「踏んづけてくれるのでは?」

「あっ、それはできない。神であるボクがそう安々と人を踏んづけるとか堕ちるところまで堕ちちゃいそうだから」


 さっきは軽々しく蹴っていたんだが……って、神? 今この子自分のことを神って言ったか?


「ぷふ。自称神様? 本物の神様に出会ってどうかな?」

「なんでそのことを」

「だから言ってるじゃないか。神様だって。気づくの遅くない? 脳内会話で言ったじゃないか」


 そ、そういえばそんなことを言っていた気が……。


「ボクの名はエスカ。君を異世界へと導いた張本人さ」

「マジか」

「マジマジ」

「でも、なんで俺を? 俺ただのゲーム好きの大学生なんだけど。死んでもいないし」


 俺は土下座を止めて会話モードに入ってしまう。

 

「まあそうだね。君のような人は地球には数え切れないほど居る。そんな中で君が選ばれたのは……一番に見つけたからだよ。異世界への入り口を」

「異世界への入り口?」

「そっ。入ったでしょ? ほらー、君がよく使ってるものからー」


 え? まさか、あのゲームの? あれが異世界への入り口だったのか? 確かに、二つ目の選択肢で異世界ですとかなんとか書いてあったような。

 

「で、でもあれってゲームでの話で」

「だーかーらー、あのゲームね。地球に居る知り合いの神が作ったゲームなの。それを利用して、一人だけ異世界へ行けるようにしてもらったの」

「な、なんで一人だけ?」


 てかあのゲーム神様が作ったものだったのかよ。そこもかなりびっくりだけど、まずは先着一人の異世界行きについてだ。


「そりゃあ、あれだよ。君達の世界死に過ぎ、他の世界も大分同じように思ってるようだよ? なんで君達人間は命を大事にしないのかな?」


 そんなことを言われても困るな……でも、そうだよな。人が死んだってニュースって頻繁に見る。自殺したり、車に引かれたり、かっとなって殺したり。

 神様からじゃなくても、命を大事にしていないって思うよ。


「そういうわけだからさ、一度システムを見直すために」

「俺一人でもうハルメシアへの異世界入りは締め切りってことか?」

「そういうこと。だからさ、最後の一人である君には特別サービス。ボクという最高の加護を与えてあげてるの。普通だと能力とかを与えてぽーいなんだけどね。嬉しいよね? ね?」


 近い! 近い! この神様フレンドリーにもほどがあるだろ……!? 


「まあそんなわけで、君はボクの加護を受けている限り安全安心」

「あのー、それは嬉しいんですけどー、ちょっといいっすか?」

「なにかな?」


 神様直々に選んでくれて、加護を与えてくれて、俺は嬉しいけど。いくつか言いたいことがあったので遠慮なく言うことにした。

 これだけフレンドリーだったら不満を言うぐらい許してくれるだろ。


「なにゆえに、防御特化のステータスになったんですかね?」

「ボクの趣味さ!!」


 あっ、そうっすか……。

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