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七缶

「よく寝てるな……」


 不思議なことばかりが起こった一日は、そろそろ終わろうとしている。太陽はあっという間に沈んでしまい、現在はあの洞穴で夜を明かそうとしている。

 灯りは、クルネが持っているスキルのファイアボールで周りにあった木の棒を集めて燃やしている。


 夕食も当然だが缶詰で済ませた。ちゃんとバランスを考えて肉や野菜、白米などを出した。食料や飲み物の缶詰はどうやら個数の他にも温かいや冷たいを選択できるようで、温かなご飯を食べれてクルネはまた泣きそうになった。

 今までずっと追放されてからは、その辺に生えているきのこや野草などを食べて生きてきたようなのだ。里で狩りも教えられたそうだが、クルネはその頃に呪いがかかっていたから素早い動物達を捕まえるのができず、逃げられたり、反撃され大好物な肉をもう何週間も食べていなかったとか。

 白米もこの世界にはなかったのか、驚きつつもおいしそうに食べていたっけなぁ。


 今は、満腹になって俺の膝の上でぐっすり眠っている。俺はそんなクルネの頭を撫でながら、情報収集を続けている。

 まずわかっていることは、俺はゲーム内にあるダンジョンの入り口から放出された光に包まれ、気づいたら知らない場所にいた。最初は夢だと思っていたけど、冷静に考え、ここに異世界だという結論に至った。


 そして、異世界に来た俺は防御特化のステータスになり、変なスキルを獲得。

 ぶっちゃけ俺には攻撃力がない。

 スキルもさることながら、俺はゲームキャラでいう壁役だろう。


「でもなぁ、壁役にしたってもうちょっと攻撃力があってもよかったのに……」


 ちなみにこの世界にはレベルという概念があるということを彼らは知らないようだ。ただただ体を鍛えることで、力をつけ、技や魔法などを覚える。

 つまり体を鍛えることでレベルが上がり、技や魔法を覚えるってことだろう。その者によって覚えれる技や魔法の種類が違い、数も違う。

 俺が見たスキルスロット。これが覚えられる数で、レベルが上がる毎に増えていくのだろう。


 俺のスキル絶対守護領域。

 これは予想通り、ある一定のダメージを遮断するスキルだった。その数値は一万。正直、この世界の最高攻撃力がどれくらいなのかがわからないから、すごいのかどうか。

 そんで、二つ目のスキル聖なる肉壁だが……ゲームで言うタゲとり。つまりは自分に相手の攻撃を集中させるスキルだ。これも予想通り。ゲームの知識があるだけあって、この辺りの予想はお手の物ってところか。


「俺もクルネと同じでレベルがあるってことは、戦っていけば成長するってことだよな。でも、攻撃力とかならともかく防御系のステータスに関しては、どう見てもカンストしてるっぽいからなぁ」


 この辺りは、レベルが実際に上がらないとわからない。

 とりあえずは、朝日が昇ったら弱そうな敵でも探して戦ってみるか? あの狼のモンスター《ウルフェン》だったけ? あいつはさすがにやばそうだし、もっと動きが鈍くて初心者でも倒せそうなモンスターがいればいいんだけど。


「さて、この辺りにして俺も寝るか」


 ステータス画面を消し、俺は土の壁に背を預ける。徹夜は慣れているから、このまま朝日が昇るまで起きていてもいいけど、眠い。

 だって、あのダンジョンを見つけるのにどんだけ徹夜したことか。正直、もう限界。異世界に来た喜びとクルネの可愛さでなんとか堪えていたけど。


「ほっとしたら……ねむ、く……」


 このまま眠ってしまえば、あの《ウルフェン》とかいうのに襲われないか心配だったけど。俺の瞼は閉じてしまう。

 明日になったら……色々と、試さなくちゃ、な……。


「おやすみ……クルネ」


 クルネの愛くるしい寝顔を見て、ついに俺は眠りに落ちた。

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