六缶
(ん? というか他人のステータスを見れるってことは、自分のも見れるんじゃないか?)
普通に考えてゲームにおいて自分のステータスは最も重要だ。もし、この世界がゲームと似たような要素があるってことはもう明白だ。
ならば、ずっと気になっていた自分のステータスを確認しよう。
えーっと、念じる念じる……。
「おお!!」
「ひゃう!? ど、どうしたんですか? 明日斗様」
「あ、いやごめんごめん。もうちょっと待っててくれる?」
「は、はい」
つい声を上げてしまった。……冷静になって見ると、なんだこのステータス。
――――上坂明日斗 18歳 男 人間族 レベル5――――
物攻・5
魔攻・5
物防・9999
魔防・9999
回避・5
スキルスロット1・絶対守護結界 スキルスロット2・聖なる肉壁
「なんだこのステータスはっ!!」
自分のあまりのステータスに地面に両拳を叩きつけてしまう。
「ひうっ!? こここ今度はどうしたんですか!? 明日斗様!?」
すると、またクルネを驚かせ、心配させてしまったようだ。
「ご、ごめん! 本当に、なんでもないから」
そう言いながら自分のステータス表記を消す。
はあ……だけど、これでなんとなくだが理解できた。谷から落ちても、滝から落ちても、狼から噛まれてもなんともなかったのは防御全振りのステータスだったからか。
しかも、あの二つのスキル。ひとつはおそらく俺の体を覆っている謎の力。名前から察するにある程度の攻撃から身を護れるんだろう。このスキルはマジですごい。だけど、問題は次のスキルだ。
なんだよ……聖なる肉壁って。
あれか? 俺のほうに攻撃が全部向かってくるってことか?
(ともかく、後でスキルの説明文をちゃんと読まないとな。それよりも今は)
俺は缶保存庫からとある缶を取り出し、クルネに渡す。
「これは?」
「……クルネ。君には呪いがかかっている。それを解くための缶だ」
「呪い?」
この様子だとやはり呪いに関してはわかっていないようだな。
「ああ。クルネ、悪いんだけどそれを飲む前にちょっと動いてくれないか? いつも特訓をやってるみたいに」
「は、はい」
回りに敵がいないことを確認し、クルネに動いてもらった。
「えい! やっ!」
その辺にあった木の棒を振り回したり、その辺を走ったり、色々とクルネの動きを見たところ……うん、確かになんだか動きが鈍いというか、ぎこちないというか。
「クルネ。昔からそんな感じだったのか?」
「は、はい。なんだか頑張っても、動きがあんまりよくならなくて……それで……」
やべ、嫌なことを思い出せてしまったみたいだ。くっ! ロリを悲しませるなんて不覚……!
だが! これで一気に笑顔にさせてみせる!
「だ、大丈夫だ! それもこれも呪いのせい! こいつを飲めば君は元に戻れる!!」
俺が彼女に与えたのは【異常回復缶・呪い】だ。
傷などを回復する缶があるのならば、状態異常を治す缶があるはずだと。そうしたら、呪いの他にも毒や麻痺、眠りなどの状態異常を治すものまで大量にあったんだ。
「これで?」
「さあ、開けて飲んでみて。あっ、ちなみに味はリーゴの実だ」
「……んぐっ」
意を決し、クルネは【異常回復缶・呪い】を飲む。
刹那。
彼女の体が光だし、黒い靄が浄化されるかのように消えていく。俺は急いでクルネのステータスを確認した。
「……やったぞ! クルネ!! 君にかかった呪いがなくなってる! さあ! もう一度動いてみるんだ!!」
「は、はい! ……えい!!」
缶をその場に置き、クルネは跳ぶ。
さっきはほんの数十センチしか跳べなかったけど。
「あ、あれ?」
「おお!!」
まるで見違えた。数メートルもある高さまで軽々と跳び、木の枝に着地した。俺も驚いたが、一番驚いているのはクルネ自身だ。
今までは、あの呪いのせいでろくに動けなかった。いくら頑張っても成長せず、ついには追放。
けど、今はどうだ? 彼女本来の力が発揮され、軽々と地上から木の枝に飛び乗ることに成功したではないか! 地上に下りてきたクルネはしばらく自分に起こったことを受け入れずに放心状態。
けど、十秒ほどが経ち喜びのあまり。
「うっ……うぅ……!」
泣き出した。
「私……私……」
「さっきのが君の本来の力だ。よかったな、呪いから解放されたんだ」
大粒の涙を流すクルネを元気付けるため、俺はそっと頭を撫でる。
「ありが、とうございます……明日斗様……! ありがとうございます……!!」
喜んでもらえたけど、泣かせてしまった。
でも、これ彼女は大丈夫だ。
呪いが解けた今、特訓をすればどんどん成長していくだろう。