五缶
「クルネ。俺は確かに神だ」
なに言ってんだろ、俺。
「だが、ちゃんとした名前があるから教える。俺は明日斗だ」
「で、では明日斗様と!」
うーん、様という敬称なんて一度もつけられたことがないから違和感バリバリだなぁ。しかし、悪くもないからだめ! なんても言えない。
それにここがもし異世界だったとしたら、俺を知っている奴はいない……はずだ。だからこのまま様づけでもいいよな? いや、いいだろ! ていうか美少女に様づけで呼んでもらえるなんて最高じゃないか!
「ああ、それでいいぞ」
「はい! 明日斗様!!」
あぁ、可愛い……やべぇ、なんだか撫でたくなるわぁ。
しかし今は真面目な話をするところ、我慢だ我慢。
「さて、互いの名前も知ったことだし。俺から質問、いいか?」
「はい。私に答えられることでしたら」
「……実は、俺にはこの世界の記憶が欠落しているみたいなんだ」
「え!? そ、そうなんですか!?」
「ああ」
本当は、欠落しているというより最初から全然知らないっていうのが真実なんだけど。彼女は、俺が神様と信じきっているみたいだから、心苦しいがこのまま情報収集をしよう。
「気づいたら、俺はこの地に倒れていた。どうしてここに居るのか。この世界がどういうところなのか。それがわからないんだ」
我ながらすごい演技力だと思っている。
そんな俺の演技力にクルネは間に受け、なるほどっと頷く。
「だから、クルネが知っているこの世界の情報を教えて欲しいんだ」
「わかりました。そんなに詳しいわけじゃないんですけど、頑張ります!」
よし、とりあえずこの世界のことを知ることができる。情報は何よりも大事だ。情報なくして、戦うなんて愚か者のすることだ。
「まずこの世界の名前はハルメシアといいます。そして、私達が居る国は東大陸にある三大国のひとつマージアス。自然が豊かな国で、エルフや亜人などが多いところです」
「エルフに亜人……クルネも亜人なのか?」
「はい。私は、亜人族の狐人族です。亜人の中でも、もっとも戦闘力が高い……種族、です」
なにやら表情が暗くなったな。
やっぱり彼女には何かがあるみたいだ。
「どうしたんだ?」
「あ、いえ……その」
あまり話したくないみたいだな。
「ごめん。話したくないならいいんだ。余計なことを聞いちゃったみたいだな」
「い、いえ! 明日斗様が謝られるようなことは……えっと、実は私はその狐人種の中で才能がない落ちこぼれ、なんです。通常狐人族は早い者で三歳の頃から才能を開花させ、戦闘訓練をします。でも、私は」
なるほど。なんだか事情が見えてきたぞ。クルネの弱りきった姿。ボロボロの格好……そして戦闘民族。つまり彼女は落ちこぼれゆえに追放されたってところか。
まったく、こんなにも可愛い子を追放するなんてどうかしてるぜ。
……お? なんだろう。クルネに意識を集中させたら、ボタンみたいなのが出てきた。まさかと思い、ボタンを押してみると、彼女のステータスが目の前に表示される。
―――クルネ・エヴァーナ 11歳 メス 狐人族 レベル5―――
物攻・25
魔攻・30
物防・20
魔防・20
回避・35
スキルスロット1・ファイアボール スキルスロット2
状態異常・鈍足の呪い
……うーん、ステータスを見れるようになったけど高いのか低いのわからない。俺がやっていた【ファンタジー・ファンタジー】と同じようには見えないけど。
だが、ひとつ気になるものがある。状態異常の欄にある鈍足の呪い。文字から考えるに動きが鈍くなる、のかな。
試しに、状態異常の欄をタップしてみる。
(……やっぱりそうか)
状態異常の欄をタップすることで、その説明文が表示された。それによると、この状態異常は俺が考えていた通りのものだったようだ。
この呪いは、その者の動きを制限させる。どんなに早く動こうとも半分以下の力しか出せない。
おそらくだが、クルネには才能があった。それにいち早く気づいた誰かが、この呪いかけたってところか。自分よりも才能がある者なんて必要ないとでも思っていたのか。
どうにかしてやりたいけど……そうだ! 回復缶があるんだったら。
「あった!」
「あ、あの先ほどから何をなされているんですか?」
「え? あー……俺にしか見えない紙にクルネから貰った情報を書き留めていたんだ」
「なるほど! さすがは神様!!」
あははは、信じちゃったよこの子。
純粋過ぎて、誰かに騙されないか心配になってきた。あっ、すでに俺が騙しちゃってるか。