十四缶
「へえ。ココは、矢を出せるスキルを持ってるのか」
「はい。一回で二十本ほど出せます。回数制限は五回です。普通なら、スキルについては話すのはよくないのですが、あなたは悪い人ではないみたいなので」
「じゃあなんで、睨むのかな?」
「悪い人ではないでしょうが、邪な気配があるのは確か。警戒するに越したことはありません」
森で出会ったロリエルフことココの案内で、俺達はこの【深緑の森】というところから抜け出そうとしていた。彼女も、この森から出るということで同行しているわけだ。
エルフは、長寿の種族。
なので、ココも見た目はロリだけど俺たち以上に生きている可能性がある。
だから、こんなにも慎重なのだろうか。
移動している最中、俺はココのステータスを確認する。
――――ココ・ココロット 85歳 女 エルフ族 レベル10――――
物攻・66
魔攻・45
物防・40
魔防・42
回避・63
スキルスロット1・攻矢の創造 スキルスロット2・妖精の加護 スキルスロット3
は、八十五歳? 予想していたが、やっぱり見た目と違うなぁ。
それに、このステータスを見る限り物理攻撃メインか。
この【攻矢の創造】っていうのが、ココが言っていた矢を生成するスキルか。そんで、二つ目の【妖精の加護】っていうのが、缶ジュースにやっていた光の正体。
どうやら妖精の力によって、毒物や邪悪な力を感知するスキルらしい。これで、俺の邪な気配とやらを感知したわけか……。
「どうしたのですか?」
「いや、なんでも。ところで、後どれくらいで森を抜けられそうなんだ?」
ココに同行してからもう一時間半は経っただろうか。敵も襲ってくることなく、スムーズに進んでいるからもうちょっとかな? とココに聞いてみたところ。
「まだまだ先です。正式なルートを通っても、一日半はかかります」
「え!? そ、そんなに……」
思っていたらより【深緑の森】は恐ろしいところだった。
このまま二人のままだったら、何日……いや最悪何十日もかかっていたかもしれない。
「―――それで、ココは森を出たらどうするつもりなんだ?」
小休憩を兼ねて、俺達は缶ジュースを飲みながら世間話をしている。
「とりあえずは、気長に旅をしようと思います。特にどこへ行こうとは決めていません。お二人は、どうするおつもりですか?」
「俺もなにをしようっては決めてないかな。とりあえずは、この世界を気ままに旅をしようって思ってる」
「わ、私は明日斗様についていきます! それに、元々狐人族は修行のために世界を旅することになってますから!」
てことは、三人とも特にどこへ行って何をしようっていう具体的な目的はないようだな。クルネとココは修行のために、俺は世界を知るために。
だったらココもパーティーに入れて三人で旅をしてみたいけど。
まあ……無理かなぁ。
「どうしたんですか? 明日斗様」
「このままココも一緒に旅してくれないかなぁって」
「それはいいですね! ココちゃん! 是非私達と一緒に行きましょう!」
「……」
しかし、返事がない。
その静寂は拒否を意味しているのか。それとも悩んでいるのか。俺的には、後者ってところかな。まだ出会って間もないわけだし。
ココには森を出るまでの一時的な同行。
それが終われば、彼女は一人で旅立つ予定だっただろうし。
「ごめんな。いきなりこんなこと言って」
「いえ。誰かと一緒に旅をするのは、悪いことではないとは思っています。ただ私自身一人旅をしようと思っていましたので」
やっぱりそうか。一人旅よりは皆でしたほうが楽しいってよく言うけど、一人のほうが良いって言う人も居るだろうからな。
ここは、彼女の判断に任せるしかない。
「まあ、頭の隅にでも入れておいてくれ。じゃあ、休憩終わり。そろそろ移動再開しようぜ」
「はい!」
「わかりました。では、行きましょう」
まずは【深緑の森】を出ることを最優先で考えよう。それからでも遅くはない。




