十二缶
ステータスアップ。
それはエスカから与えられた俺だけの力のひとつ。【ファンタジー・ファンタジー】にもあったシステムで、ステータスを上げる【ステータス缶】を使う。
ゲームの時は、契約獣に使っていたが、こっちでは俺がパーティーメンバーに使えるようだ。
クルネのステータス画面を見ると、レベルの横にパーティーメンバーの証たるアイコンが表示されている。なぜアイコンがエスカのデフォルメ顔なのかは、まあこの際どうでもいい。
そして、クルネのステータス画面にはレベルが六へと上がったことで新たな表示が現れた。
3/3というものだ。
これがゲームと同じならば、最大三ポイント分ステータス配分ができるということだろう。
ちなみに今のクルネのステータスだが。
―――クルネ・エヴァーナ 11歳 メス 狐人族 レベル6―――
物攻・27
魔攻・32
物防・21
魔防・20
回避・38
スキルスロット1・ファイアボール スキルスロット2
とまあこんな感じだ。
レベルが一上がり、物攻に魔攻が二上がり、物防が一、回避は三も上がった。魔防が上がっていないのは、魔法を食らっていないからか? だが、そう考える物防も上がらないことになる。一回も攻撃を食らっていないからな。
この辺に関しては、その者のによって延び幅が違うのだろう。それか倒した敵によって上がるステータスが違うとか。
ま、その辺りはおいおい考えるとして。
今はステータス配分だ。【ステータス缶】は一個で、なんと五も上がるんだ。レベル一上がっただけでは一とか二とか高くても三だが、缶の力を使えば一気に五も上がる。
ただ3/3とあるように、一回で配分できる回数は限られている。なので、ここは慎重に考えて配分せねばなるまい。
(うーむ。クルネの場合、物理も魔法もいけるからオールラウンダーな感じで行きたい。普通ならば、物攻、魔攻、回避と配分するところだが、俺という壁役が居るから回避はいらないか? いやでももしもってこともあるからな……)
まずは、物攻に配分するのは決定だ。魔法も使えるが、回数制限がある。……いや、だがここは。
移動しながら考えた末、俺は決めた。
(よし! まずは物攻、魔攻、回避で様子見と行くか)
結局当初考えていた通りの配分にした。
壁役である俺にとっては、やはり攻撃力が居る。【聖なる肉壁】も万能ではない。
ゲームに置いての挑発は、永続なものではない。
効果時間というものがあり、それが切れればしばらくは使えないっていうよくあることだ。俺の【聖なる肉壁】も効果時間があった。
効果時間は三十秒。その間ならば、全ての敵が俺に容赦なく攻撃してくるんだそうだ。どんな敵だろうと。どんな攻撃だろうと、俺のほうに吸い込まれていく。まるでブラックホールかのように……。
なので、三十秒経てばクールタイムによってしばらく使えない。
ゲームによってクールタイムは違うが、俺の場合は一分だそうだ。とはいえ、普通のゲームとは違いこれは現実だ。
俺が知っている知識とは少し違うようで、実際は使ってから一分。つまり実質三十秒のクールタイムにあるようだ。そもそも、俺が死んでしまえばエスカも神様を辞めさせられるわけだから、挑発スキルを永続にするっていうことはしなかったんだな。
そんなことをすれば、ずーっと俺に攻撃が集中して【絶対守護結界】もすぐ壊れちゃうかもだし。そこんところは考えてるわけか。とはいえ、この世界の最大攻撃力がどれくらいかにもよるけど。もしかしたら、何十人もの攻撃を受けても全然びくともしないってことも……ありえるかも。
「クルネ。喉渇いてないか?」
そう言って俺は缶ジュースを渡す。
「あ、ありがとうございます!」
クルネに渡したのは【ステータス缶】を組み合わせたものだ。つまり俺が配分しようとしていた物攻と魔攻、回避のステータスが上がる缶。
それをミックスしたのだ。この機能は【ファンタジー・ファンタジー】にもあったので大助かり。正直、三缶も飲むのは大変だろうからな。
「どうだ? おいしいか」
「はい! でも……」
「でも?」
「なんだか、胃に溜まる感覚がないと言いますか。こう、体全体に浸透していくような不思議な感覚です」
なるほど。【ステータス缶】は飲み物だが、胃に溜まるようなものではない。あくまでステータスを上げるものだから体に浸透するようになっているのか。
これも大助かりだな。
ステータス配分をする度に飲んでたら胃がたっぷたぷになるだろうからな。さてさて、ステータスはっと。
―――クルネ・エヴァーナ 11歳 メス 狐人族 レベル6―――
物攻・32
魔攻・31
物防・21
魔防・20
回避・43
スキルスロット1・ファイアボール スキルスロット2
お? 上がって上がってる。うーん、いいねぇ。こうやって育っていくステータスを見るのは。
それに【ステータス缶】を飲んでいるクルネの姿がいつ見ても可愛い。
あぁ……癒されるぅ……。
こう両手で缶を持ってちびちび飲み、感情を尻尾で表すところなんかずっと見てられる。あぁ、でも抱きしめたい! 撫で回したい……。
「明日斗様!!」
「へ?」
刹那。
何を察したクルネが左手に【ステータス缶】を、右手でナイフを持って俺に向かってとんできた何かを切り払った。
切り払われたのは……矢だった。




