表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特殊砦で頑張りたい  作者: やなぎ いつみ
叶えたい思い
85/93

77.宣戦布告

「お話し中失礼します」


 外から聞こえた声に、ルイツがどうぞと入室を促した。

 扉を開けて入ってきた人物は、一瞬アルトに目をやったが、すぐにルイツに視線を戻して再び詫びる。


「すみません、お邪魔して」


「いえ、どうされましたか?」


「実は今し方、怪我も治りきっていない病み上がりの隊員が、砦内を全力疾走していたと小耳に挟みまして」


 アルトはぎくりと身を強張らせた。


 それはもしかしなくとも自分ではないか。

 話の続く先が自然と浮かび、不味いと顔を引き攣らせる。


 そんなアルトの様子を知ってか知らずか、彼――カイルは心底困ったという様な声で話を続けた。


「それで、うちの班長がそれはそれはお怒りなんですよね。早々にその馬鹿を連れてこいと言われたのですが……大事な話の途中でしたよね」


「ああ、それなら大丈夫ですよ。大まかな話は終わりましたので、遠慮なくどうぞ」



(っ、ルイツ副長……!)


 あっさりと引き渡しが決まってしまい、アルトは心の中で悲鳴を上げた。


 ノーティスの怒っている姿など見たくない。


 思わずこそりとディルの陰に隠れると、彼は苦笑しながらアルトを振り返った。


「行かない方が大変なことになるぞ」

「……うぅ」


 それは重々理解している。

 実践への復帰時期を検討して貰わなければならないので、そもそも行かないという選択肢はない。


 だがもたらされた情報がアルトの足を重くしていた。


「……一緒に――」


「行けと言いたいところですが、そろそろ仕事が」


 ディルが引っ張りだそうとした一案は、全容を見せる前に消え失せてしまった。

 手を無くした彼は、それ以上の発言を止めてそっと顔を逸らす。



 自身の一挙一動が、ディルを揺らしている。

 その事に気づいたアルトは、頭を振って気合を入れ直した。


 ディルの邪魔をするわけにはいかない。


「……よし、僕行きます。団長、副長、改めてありがとうございました」


 自身を庇う背から顔を出し、アルトはぺこりと頭を下げた。

 するとルイツが微笑みながら頷きを返す。


「終わったらまた来てください。結果次第で当面の予定を決めましょうね」


「はい。――じゃあ……カイルさん」


 アルトがぎこちなく声を掛けると、大人しく控えていたカイルはにっこりとした笑みを見せた。


(うぐ……)


 経験上安全性の薄いそれに、アルトは顔が引き攣りそうになるのを何とか抑え、彼の近くへと歩を進めた。

 その警戒しています、と主張するような歩みに、前方からはくすりと笑いが溢される。


「そんなに警戒しなくても。僕はこんなに甘やかす気なのに」


「……それはどうも、ありがとうございます……」


 相変わらず嘘っぽい表現に脱力しながら返せば、彼は本当だよ、と零して目を伏せる。

 

「見込みがないって分かっててもやっぱりさ、どうしようもないんだよね」


「? えと……?」


 何がと首を傾げたアルトに対し、成り行きを見守っていたディルは顔色をさっと変えた。


  激しく嫌な予感がする。


 その直感に従い、彼は続く言葉を遮ろうとしたのだが――一歩遅く、カイルが先に口を開いてしまった。



「――僕なら絶対に見失わない。どこで迷ってても必ず見つけてあげられる。好きなように走ればいいし、怪我をしたら絶対に治してあげる」



 それは、冗談かと思うほど、アルトに添った発言だった。


 だが裏があると思うには、彼の表情はあまりにも優しく穏やかだ。



 驚きに目を瞬くアルトの背後では、ルイツがおやおやと笑い、ヴィランは頑張れよと誰宛か分からない応援をしていた。


 そんな風に面白がる上司たちがいる一方で、約一名、全くもって余裕のなくなってしまった人間がいた。



 この状況で、カイルが告げたそれは確実に宣戦布告だ。



 冗談じゃないと唸ったディルを余所に、カイルはどこ吹く風で戸を開けた。

 そのままどうぞとアルトを促して、駆け寄ってきた彼女に満足そうな笑みを向けている。


「えと、じゃあディル様、ちょっと行ってきますから」


 また後で構ってくださいねと手を振るアルトに、ディルは焦って釘を刺す。


「――っ、好きなだけ構ってやるから、絶っ対、誰にも構われるなよ!?」









お読み頂き感謝です!

逆ハーは苦手だったはずなのですが、やっぱりこうなってしまいました。

すみません。ルイツは保護者枠なのでお許しを。


次で、終わりますm(__)m


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ