63.目覚めたのは違う場所
ゆるゆると意識が上昇し、覚醒に向かっていく。
微睡の中で、アルトは無意識に寝返りを打とうとし――激痛に襲われ目を見開いた。
「っう――!!」
顔を顰めながら呻き声をあげ、妙な姿勢で止まった身体を慎重に動かした。ずきずきと痛むのを我慢し、何とか姿勢を落ち着けて詰めていた息を吐き出す。
何故こんな状況にと考え、すぐに魔物と戦って負傷したことを思い出す。
それだけならまだしも毒を受けてしまい、ディルに身体を預けてからの記憶が全くなかった。
手足の先を動かしてみる。怠いが感覚はあり、動きに左右差はない。
後遺症があるようには思えず、問題なく解毒できたことを察する。
このまま傷が癒えて力が戻れば元通りに活動できるだろう。
(……ディル様に感謝だなぁ)
同じく怪我をしていたのに、アルトの事を何とかしようと必死で動いてくれたに違いない。
申し訳なさと感謝、そして彼の具合。
それを思ってアルトはいつもの如く彼の匂いを探そうとし――はたと気づいた。
知らない場所だ。
薬の匂いが満ちていて、治療所らしいということは分かったが、砦の医務室でないのはどういうことだ。
動揺したアルトは咄嗟に身を起こそうとし、再び呻いた。
安全な動きを探ってみたもののどう動いても痛みは起き、諦めて横になったまま首だけを動かした。
改めて周りを見回すと、そこはアルトの部屋より少し狭い位の個室だった。
石造りの壁は砦と同じだが、綺麗に塗装されているようだと分かる。
広くとられた窓から入る光は随分傾いていて、室内を茜色に染めていた。
(夕方……かな)
ぼんやりと時間帯を把握し、アルトは再び視線を巡らせた。
近くの台には診察器具や包帯、軟膏を入れているらしき瓶がいくつか置かれていて、頭元の低い台の方には水差しと変わった形の器がある。
不意に強い渇きを覚えたアルトは、それを見つめたまま固まった。
手を伸ばしたいが、思うように身体が動かせない。どうすべきか逡巡していると、外で行き交う足音がアルトがいる部屋の前で止まった。
扉を叩く音に、アルトは緊張で身を固くする。
掠れた声で入室を促せば、優しそうな女性が灯りを下げて姿を現した。
(……獣族……?)
ただの人間とは違う匂いだ。
声も出さずただ見つめ続けるアルトに、その女性は戸惑ったように口を開いた。
「……あの、大丈夫ですか? お手伝いさせて頂きますよ?」
お久しぶりです。
復活したものの短くてすみません(/_;)




