五章 解明―4―
「大庭さん。安心してください。この畜生もしっかり罪に問われますから」
紗綾の言葉に大庭が顔をあげた。泣きはらした目は真っ赤で、顔も紅く染まっていた。紗綾はそれを見ると、優しく微笑んで、頷いて見せた。
「赤羽さん。そんな無理に懐中電灯にこだわったのが仇になりましたね。懐中電灯が壊れた。それも凛さんが買ってきた懐中電灯が壊れたとなると、当然凛さんも手に取って確かめるでしょうね。でも、その懐中電灯はトリックに必要だった。だから、一見壊れたように見えてもすぐに使えるよう戻せる細工が必要だった。そこであなたは電池の端子にテープを貼った。そしてトリックを実行した後は、やっぱり懐中電灯が点かないようにしないといけない。だからもう一度テープを貼った。確認される前にこんな重要なアイテム、さっさと壊してしまえばよかったのに……」
紗綾はそう言いながらポケットから一枚の黒い紙を取り出した。
「電池の端子についていたテープ。そこに指紋が付いて……」
その瞬間、紗綾は自分の頭上を何かが掠めるのを感じた。
「チクショウ!」
実にそれは危ない、瀬戸際だった。あとすこし紗綾の屈むのが遅れたら、この男の投げた石が紗綾の頭に命中する所であった。紗綾はゆっくりと姿勢を戻すと、警官に組み敷かれた男を睨んだ。
「これがあなたの指紋ならば、少なくともあなたがこのトリックを実行しようとしたことが証明できますね。それと、凛さん」
間宮凛に目を向けると、彼女もこの男の醜怪な面を見たのか、ただただ打ち震えることしかできずにいた。
「凛さん。まだこんな男を庇う必要があると思いますか? あなたは恋人として、この男の行動に注目していたから、光を振っていたのがこの男だと、泰さんの殺害にこの男が加担していると気付いたんじゃないですか? そして、この男と翠さんの関係にも薄々感づいていたんじゃないですか!」




